会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

税金費用の計上区分の検討(企業会計基準委員会)

税金費用の計上区分の検討(PDFファイル)(「第412回企業会計基準委員会の概要」より)

企業会計基準委員会の会計基準開発プロジェクトのひとつとして、税効果会計に関する指針があります。

単なる税効果会計の範囲を超えているようにも思われますが、7月17日の会議では、その他の包括利益に対して、法人税等が課される場合に、それをどこに表示するのかという論点が提示されたようです。

「会計上、その他の包括利益(又はその他の包括利益累計額)として計上されているものについて、連結納税加入時にその他有価証券が税務上時価評価された場合などにおいて、課税所得計算上、益金又は損金に算入されることにより、所得等に対する法人税、住民税及び事業税等が課される場合がある。日本公認会計士協会が公表していた税効果会計に関する実務指針の移管時において提案された課題及び企業会計基準第 28 号「税効果会計に係る会計基準の一部改正」の公開草案に寄せられたコメントの中で、当該法人税、住民税及び事業税等について、その他の包括利益から控除して表示することが適切ではないかとの問題意識が聞かれた。 」(3項)

日本基準ではどうなっているか...

「(1) 我が国における会計基準

当期税金費用については、資本取引に関連して生じる特定の当期税金費用を除き、当期純利益に含めて計上される。なお、基礎となる考え方については明示されていない。

これに対して、繰延税金費用については、各々の会計基準では、税効果会計が適用される取引や事象(以下「取引等」という。)が計上される区分(当期純利益、その他の包括利益又は株主資本)と同一の区分に計上される。繰延税金資産及び繰延税金負債の事後的な変動は、当初に税金費用を計上した区分と同一の区分で計上される。なお、当期税金費用と同様に、基礎となる考え方については明示されていない。 」(5項)

これに関連して2つの論点を挙げています。

「(1) 税金費用をどの区分に計上すべきか。

(2) 仮に、税金が生じる取引等が計上される区分と同一の区分に計上する場合で、その他の包括利益に対して課される所得等に対する法人税、住民税及び事業税等をその他の包括利益に計上したときに、リサイクリングを行うか否か、行う場合、どの時点で行うか。」

そもそもどの区分に計上すべきかという(1)の論点が重要だと思いますが、2つの考え方を示しています。海外基準と同じ(案1)の課税標準となる所得が計上されている区分に対応させる方法を推奨しているようです。(案2)は、現行基準と同じで、法人税等全額を損益に計上するという方法です。

「...税金費用(当期税金費用及び繰延税金費用)の計上区分に関しては、次の 2 つの考え方があり得ると考えられる。

(案 1) 税金費用は、税金の発生源泉となる取引等に起因して生じるものであるため、その処理についても当該取引等の処理と整合させ、所得を課税標準として課される税金については、損益(税引前当期純利益から控除)、その他の包括利益及び資本の各区分に計上すべきとの考え方

(案 2) 税金の支払は、課税当局(国又は地方公共団体)への納付(分配)であるため、企業が税金を納付する義務を負う時点で、税金の発生源泉となる取引等の処理にかかわらず、所得を課税標準として課される税金の総額を損益(税引前当期純利益から控除)に計上すべきとの考え方」(8項)

(案1)が理屈に合っていると思いますが、(案1)だと、当期の法人税等が損益計算書と包括利益計算書のその他の包括利益などに、分かれて計上されることになり、実際にその期の分として納められる税金の額が把握できなくなるおそれもありそうです(それを防ぐためにはその他包括利益に計上される税金も当期分と税効果分に分けて表示し、かつ、当期分の合計額を注記か何かで示す必要がある)。

その他の包括利益に課税される税金というのは、例外的なものでしょうから、どちらの方法でも金額的な違いはあまり大きくないかもしれませんが、考え方としては、(案1)をとると従来からの重大な変更だと思われます。

この会議資料では、(案1)を採用した場合の「法人税等会計基準」改正文案も示されています。
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