日本の金融機関が保有している「証券化商品の売買市場は」、「幅広い証券化商品の取引が成立しにくい」状態にあり、「そもそも取引が成立しない」ので、「理論的な値付け」ができなくなっているという日経ビジネスの記事。
記事では、日本公認会計士協会が最近公表した「証券化商品の評価等に対する監査に当たって」に従うと、「市場で売却して換金できるかまで考慮する必要がある」のはおかしいという趣旨のことをいっています。しかし、時価は「取引を実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者」が取り引きした場合の価格ですので、当然、流動性のあるものは高い金額で、流動性がなくなかなか換金できないようなものは低い金額で取り引きされるはずです。したがって、協会の通知は当たり前のことをいっているように思われます。
会計士協会にやつあたりする前に、値段も付かず換金もできないような金融商品を買ってしまった(あるいはそうなるまで処分できなかった)ことを反省し、また、そうした金融商品を売りつけた証券会社を責めるべきでしょう。金融機関が自分のもっている商品の値段もわからないというのでは、大根の売値・仕入れ値がわからないといっている八百屋のようなものです。
記事では、協会の通知は強制力がないといっていますが、そこで述べている時価の考え方は金融商品会計実務指針の規定と同じですので、会計士は遵守する必要があります。記事を鵜呑みにすべきではありません。
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金融庁が主要国の金融監督者を集めて2月に開催した会議では、サブプライム問題に関連して「現実的な資産価格の算定が、資産市場の流動性や市場ベースの信用仲介を回復するために決定的に重要」という結論を出しています。つまり、資産価格の適正化は国際公約になっています(金融庁が本気で公約を守らせる気があるのかはわかりませんが)。会計士協会はそれに協力しているのでしょう。かりに、取引が行われず換金が難しいというのが現実だとすれば、その現実を反映した金額が時価になるはずであり、会計士協会はその当然のことを注意喚起しただけといえます。今ごろ騒いでいるのは遅すぎます。「新たな火種」などではありません。
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