金融庁は、(株)オプトロム(セントレックスに上場していたが2015年に上場廃止)が、重要な事項につき虚偽の記載がある四半期報告書を提出し、また、重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させたとして、同社に対する課徴金納付命令を決定しました(2017年2月3日付)。
決定された課徴金の金額は、9,962万円です。
違反事実は2つあります。貸倒引当金計上もれと反社勢力に関する開示不備です。
まず、「平成26年6月第1四半期から同年12月第3四半期において、衛星放送送信事業の譲受のための預託金の支払を装うなどして、新株予約権の割当先である合同会社会社コンシェルジュ(以下「コンシェルジュ」という。)のグループ会社ないしその実質的経営者等に資金を流出させていたが、同流出資金について適切な貸倒引当金繰入額の計上等をしなかったほか、インターネット広告事業に係る提携先に対する長期貸付金について適切な貸倒引当金繰入額の計上等をしなかった」とされています。
(これは貸倒引当金の問題というよりは、支出したこと自体が不適切だったようです。)
また、「第一部【証券情報】第3【第三者割当の場合の特記事項】1【割当予定先の状況】「(6)割当予定先の実態」の欄において、割当予定先であるコンシェルジュについて、信用調査会社から、コンシェルジュの親会社に反社会的勢力等や違法行為との関わりに懸念がある人物との関係が指摘され、コンシェルジュが増資引受先として適格な相手方と言うことはできない旨の調査結果を得ていたにもかかわらず、その事実を記載することなく、当該欄に調査結果として「当該割当予定先の…主要株主が反社会的勢力等や違法行為に関わりを示す情報に該当はありませんでした。」と記載し、あたかもコンシェルジュの上記親会社が反社会的勢力等や違法行為と何らの関係も有していないことが確認されたかのように記載するとともに、第一部【証券情報】第1【募集要項】2【新規発行による手取金の使途】「(1)【新規発行による手取金の額】」の欄の「発行諸費用の概算額」に掲記された「(注)3.」において、割当予定先の新株予約権の行使に際して払い込まれた金額の5.5%相当額(消費税別)のファイナンシャル・アドバイザリー費用のうち、同払込金額の5%相当額(消費税別)は、ファーストメイク・リミテッド(株)(以下「ファーストメイク」という。)を通じて、上記反社会的勢力等や違法行為との関わりに懸念がある人物が預金口座や会社印を管理、利用することができる立場にあった(株)ヴォロンテ(以下「ヴォロンテ」という。)に支払うことを企図していたが、その事実を記載することなく、「本新株予約権の行使に比例し、割当予定先の当該行使額の5.5%(消費税別)が株式会社ファーストメイク・リミテッドに対するアドバイザリー費用となっております。」と記載した有価証券届出書(新株予約権証券)を提出し」たなどとされています。
会社は違反を認めず、審判手続までいったようですが、審判手続で課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたため、今回の決定となったものです。
裁判まで行くのでしょうか。
反社会勢力との関わり隠した上場企業に課徴金(NHK)
「金融庁によりますと、この会社は、おととし3月までに合わせて20億円余りの株式などを発行しましたが、その際に、引き受け先の企業に反社会的勢力との関わりが疑われることを隠していたり、虚偽の四半期報告書に基づいて株式を発行したりしていたということです。」
反社が絡んでいた疑惑があるということで、厳しい処分になったのでしょう。
上場廃止前の記事。
↓
あの「ハコ企業」、反社勢力と関係&隠蔽疑惑で上場廃止の危機 困難化する反社排除(Business Journal)
「では、実際のところ、コンシェルジュやその実質的経営者とみられる人物は反社会的勢力なのか、そうではないのか。
オプトロム側のリリースに具体的記述はないものの、実質的経営者は過去にドリームグループという都内の経営コンサルティング会社を経営していた40代後半の男性だとみられる。5年前、債務逃れのため無資格で会社分割を行っていたことが弁護士法違反に問われ、男性はその後に有罪判決を受けた。男性はドリームグループやその関係会社においても役員に名を連ねず、背後でそれらを操る実質的経営者の立場だった。というのも、さらにその3年前にも、男性は代表を務めていた別の経営コンサルティング会社をめぐり法人税法違反に問われていた過去があったのだ。表に名前を出せないと考えたのだろう。
客観的事実は以上のとおりだが、違法行為に関わっていた点は揺るがないとして、この人物を反社勢力と見るかどうかは判断が分かれるところだ。むしろ万人が認めるような断定などできないことを当然と考えたほうがいい。それは反社勢力がグレーな概念であることに起因する。警察庁などにより、反社勢力の定義はある意味で明確化されてはいる。簡単にいえば、暴力団を中核に、準構成員など周辺者も含めた一群を指す。ただ、そうした属性要件だけでなく、活動実態など行為要件にも着目する必要があるとされる。」
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