(やや古くなりましたが)主要鉄道会社21社の2021年3月期の最終損益は、合計赤字額が1兆5千億円になったという記事。
「JR6社と私鉄大手の21社合計売上高(各社の1億円未満を切り捨て)は34%減り、10兆円を下回る9兆8875億円だった。最終損益は1兆5683億円の赤字となり、1兆1033億円の黒字だった前の期から約2.6兆円悪化した。21社中13社が過去最大の最終赤字を計上した。」
JRの売上・利益減が特にひどかったようです。
「人の移動が停滞し、鉄道や地下鉄の利用に加えてホテル需要などの減少も影響した。売上高の減少幅が最も大きかったのは55%減のJR東海だった。年度を通して出張や旅行控えが続き、柱となる東海道新幹線の利用は同67%減り、運輸収入全体も同65%減の4761億円だった。
売上高における鉄道など交通事業が占める割合は中長距離路線を抱えるJRのほうが私鉄よりも比較的大きく、JR東日本、西日本も売上高は4割減った。JR東も鉄道収入は47%減の9543億円とほぼ半減。訪日外国人(インバウンド)需要が蒸発したこともあり、JR西では山陽新幹線の利用が65%減、在来線特急は68%減となった。」
今期は黒字転換見込みの会社が多いそうですが、緊急事態も延長になり、見通しどおりにいくのでしょうか(悲観的見積りを避けた?)。
「今期は最終損益では黒字転換を見込む企業が多い。鉄道収入の回復とともにコストや設備投資の削減、資産の売却益の計上などで改善を目指す考えだ。ただ、足元では緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大も進み、「足元で非常に厳しい状態が続いている」(JR東の深沢祐二社長)。東急は5月は連休の曜日ならびの影響もあったが19年度比で40%減となっているという。
鉄道収入はコロナ影響が本格化する前の20年3月期比で2割減程度を見込む社が多い。先払いでまとまった収入が見込まれる安定的な収入源だった定期券も、昨今は在宅勤務の推奨で定期ではなく実費精算に切り替える会社も出ている。」
その他大赤字会社の決算について。
JAL、2866億円の赤字決算。2023年にコロナ禍以前の利益水準目指す(トラベル Watch)
「事業別に見ると、国内線は12月にGo To キャンペーンが中止、1月に緊急事態宣言の発出があり、国内旅客数は前年比66.5%減、国内旅客収入は同67.2%減の1740億円。国際線は「国境をまたぐ移動需要はほぼ消失」と表現するとおり、国際旅客数は同96.0%減、国際旅客収入は同94.3%減の279億円となっている。
一方、貨物郵便収入については、乗客を乗せない貨物専用便を計1万5299便運航するなど積極活用することで、前年比40.6%増の1288億円と伸長している。」
ANA 過去最大 4046億円の赤字 昨年度のグループ全体の決算で(NHK)
「ANAホールディングスが30日に発表した3月までの1年間の決算は
▽売り上げが7286億円と前の年度より1兆2400億円余り、率にして63%減少しました。
▽最終的な損益は過去最大の4046億円の赤字となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大で、傘下の「全日空」の利用者が前の年度と比べて国際線で95%、国内線で70%減ったことが主な要因です。
今年度の利用者については
▽国際線は2019年度の実績の3割程度にとどまる一方
▽国内線はワクチンの接種が進み8割程度まで回復する見込みだとしています。
これを踏まえて来年3月までの1年間の業績予想では
▽売り上げは1兆3800億円
▽最終損益は35億円の黒字に転換する見通しだとしています。」
オリエンタルランド 1996年の上場以来初の最終赤字決算(NHK)
「オリエンタルランドの先月までの1年間のグループ全体の決算は、
▼売り上げが前の年より63.3%減って1705億円、
▼最終的な損益は541億円の赤字でした。
新型コロナウイルスの感染拡大で運営する2つのテーマパークで休業や入園者数の制限が続いたことが響き、1996年の上場以来、1年間の決算で初めて最終赤字となりました。」
過去最大赤字のJTB、ボーナスゼロに 黒字化は不透明(朝日)
「昨年来の旅行需要の大幅な落ち込みで、売上高は前年比71・1%減の3721億円に激減。最終的なもうけを示す純損益は、前年の16億円の黒字から一転、過去最大となる1051億円の赤字を記録した。立て直しのため、グループ従業員数の4分の1にあたる7200人の削減や、国内115店の閉店などのコスト削減を進める。従業員の年収を3割減らすため、この日はボーナスを22年夏までゼロとする方針も明かした。
経営の安定度を示す自己資本比率は、3月末時点で前年比17・4ポイント減の6・9%まで低下。財務基盤を立て直すため、政府系の日本政策投資銀行から資本支援を受ける調整を進めているが、この日の会見で山北社長は「資本増強について検討を進める」と述べたものの具体的な金融機関や手法についての言及は避けた。」
雇用調整助成金もある程度効果はあったのでしょう。
雇用調整助成金の計上額、上場企業の上位10社のうち9社が航空・観光関連、ANAがトップに(Yahoo)
「東京商工リサーチは、上場企業の「雇用調整助成金」の活用について調査を実施し、その結果をまとめた。それによると、2021年4月末までに決算資料で雇調金を計上または申請が判明した上場企業は716社で上場企業の18.6%にのぼり、計上額の上位10社のうち9社が航空・観光関連の企業となった。
2020年度分の支給額は3兆1555億円で、リーマン・ショック直後の支給額(約6500億円)の約5倍に達した。」
気休めにもなりませんが、中国の鉄道会社や航空会社も大赤字のようです。
中国の国有「鉄道会社」過去最悪の赤字額の深刻
新型コロナ流行と旅客量の大幅減少が大打撃(東洋経済)
「中国の国有鉄道会社の中国国家鉄路集団(国鉄集団)は4月30日夜、2020年の通期決算を発表した。それによれば、総売上高は前年比8.1%減の1兆600億元(約17兆8610億円)で、純損益は2019年の25億7400万元(約434億円)の黒字から、2020年は555億600万元(約9353億円)の赤字に転落した。この赤字額は2013年の同社設立以降で最悪だ。
巨額の赤字となった主な原因は、新型コロナウイルスの大流行とそれに伴う旅客量の大幅減少だ。国鉄集団の旅客輸送人員は新型コロナの感染が拡大した2020年2月から急速に減少し、同月はのべ3674万人に落ち込んだ。同年3月以降、旅客輸送人員は前月比で増え始めるも、2020年通期では、のべ21億6600万人にとどまり、前年比39.4%減となった。」
中国の「海航集団」傘下13社で1兆円損失の衝撃
航空会社の海南航空控股はA株赤字記録を更新(東洋経済)
「破産再編手続中の中国の複合企業、海航集団(HNAグループ)傘下の上場企業全13社の2020年決算が4月30日までに出そろった。財新記者の調べによると、この13社の売上高は合計4427億900万元(約7兆4419億円)、当期純損失は合計947億7300万元(約1兆5931億円)に達した。
そのうち、航空会社の海南航空控股の純損失は640億300万元(約1兆760億円)となり、A株(上海・深圳の証券取引所で取引される人民元建て株式)の赤字記録を更新した。」
これは、親会社の海航集団の破産の影響が大きいようです。
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