三菱重工の請求額は7743億円、争いは仲裁へ
三菱重工業が、日立製作所に約7743億円超の支払いを求めて、日本商事仲裁協会(JCAA)に仲裁を申し立てたという記事。
南アフリカでの石炭火力発電プロジェクトをめぐる動きです。
「争いの種となっているのは、日立が2007年~2008年に受注した石炭火力発電用ボイラー12基、総受注額5700億円のプロジェクトだ。」
「2014年2月に三菱重工と日立は火力発電事業を、合弁会社(三菱重工65%、日立35%)の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)に統合した。 事業統合に当たり、仕掛かりだった南アのプロジェクトは、統合前は日立が、統合後はMHPSが責任を持つことを前提に、三菱重工に譲渡された。
しかし、最終譲渡金額の調整がつかず、三菱重工は2016年3月末に日立に約3790億円を請求。2017年1月末には請求額を約7634億円に引き上げた。」
両社で協議を続けてもらちがあかないので、仲裁で決着しようということのようです。
両社の業績への影響は...
「今後、JCAAの判断は両社にどういう影響を及ぼすのか。
三菱重工は6月末時点で請求額のうち3182億円を資産計上しているため、仮に1銭も取れなければ、少なくとも3000億円超の損失を計上することになる。「とりっぱぐれると損失だが、念頭に置いていない」(三菱重工の小口正範CFO)
逆に、満額が認められれば、三菱重工には4000億円程度の利益が出ると思われる。」
これは日立との合弁会社(三菱の子会社)で計上しているのでしょうから、仲裁の結果、損失になるにせよ、利益になるにせよ、日立の持分相当額は、日立の方で負担するのでしょう。
「日立はこの案件で一定の引当金を計上している。金額を開示していないが、3000億円には達していないと思われる。このため、3790億円の支払いなら1000億円単位の損失、7600億円超の支払いなら5000億円超の損失計上となる可能性が高い。」
日立が負けても、合弁会社(三菱の子会社)の方で利益が出るのでしょうから、合弁会社への持分比率に対応する額だけは、影響は緩和されるのでしょう。
それにしても、受注額5700億円のプロジェクトで、7千億円超もの損失が出てくるというのは恐ろしい話です。
また、大赤字工事をかかえる会社を統合したという点では、東芝のケースと似ています。
両社のプレスリリース(+第1四半期決算資料)。
(開示事項の経過)南アフリカプロジェクトに関する日立製作所への請求に係る仲裁申立てについて(三菱重工業)
平成29年度 第1四半期決算概要(三菱重工業)
「なお、当第1四半期連結会計期間末においては、上述の日立向け請求権のうち 3,182 億円を「南アフリカプロジェクトに係る資産」に計上しております。この金額は、当第1四半期連結会計期間末において南ア PJ で既に費消済みの純支出の額にほぼ対応するものであり、上述の前回請求及び今回請求の一部です。」(三菱重工業決算短信より)
未実現の利益を計上しているように思われます。新監査人であるあずさはこの資産計上を認めているのでしょうか。
当社に対する仲裁申立の発表について(日立製作所)
2018年3月期 第1四半期 連結決算の概要(日立製作所)
日立の方は、前期の連結財務諸表の注記で以下のように記載しています。(第1四半期決算短信では特にふれていない模様)
「南ア事業に係る譲渡価格調整については、当社と三菱重工との間で引続き協議中であり、合意に達していない。2016年3月31日、当社は三菱重工より、当該譲渡価格調整金等の一部として48,200百万南アフリカランド(1ランド=7.87円換算で約3,790億円)をMHPSアフリカに支払うように請求を受けた。これに対して当社は、同4月6日、当該請求書簡の記載内容は契約に基づく法的根拠に欠けるため請求に応じられない旨の回答を、三菱重工に提示した。
その後、2017年1月31日、当社は三菱重工より、上記譲渡価格調整金等の請求金額を89,700百万南アフリカランド(1ランド=8.51円換算で約7,634億円)に拡張した請求を受けた。当社としては、当該請求書簡の記載内容についても、上記と同様、契約に基づく法的根拠に欠けるため請求に応じられないが、南ア事業譲渡に係る当社と三菱重工との契約合意並びに両社間協議経緯に基づき、今後も同社との協議を継続する意向である。
なお、当社は、上記の南ア事業に係る契約に関連して、合理的な見積に基づく引当金を計上している。また、この内容に基づく支払額は引当計上した金額と異なる可能性がある。」
その他報道。
三菱重が仲裁申し立て、日立に南ア火力発電事業での損失負担請求(ロイター)
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