特別調査委員会の調査報告書受領のお知らせ(PDFファイル)
ウイルプラスホールディングス(東証スタンダード)のプレスリリース(2024年9月17日)。(同社は6月決算会社です。)
分配可能額を超えた自己株式取得を2024年5月に行ってしまったことをすでに開示済みですが(→当サイトの関連記事、その2)、その件を調べていた外部弁護士による特別調査委員会の報告書を受領したとのことです。
プレスリリースでは「調査結果の概要」が示されています。(報告書本文も添付)
外部調査委員会は3名の弁護士(うち1名は兼公認会計士)で構成されています。
概要より。取締役には責任はないという結論のようです。
「事後検討等
取締役において、分配可能額が存在しないことを知りながらあえて本件自己株式取得を行ったという事実を認めることはできない。従って当社の取締役は刑事責任を負うものではないと思料する。
本件自己株式取得において、本件自己株式取得の直近の四半期会計期間末(2024 年 3 月 31 日)における連結ベースでの剰余金等は 9,652 百万円と潤沢に存在しており、本件自己株式取得よりも前に子会社から持株会社への配当を行い、臨時決算を行うことで分配可能額の範囲内で会社法の規定に反することなく2024 年8月14 日に決議した剰余金の配当を実施することが可能であることなどを考慮すれば、実質的にみて本件自己株式取得及び本件配当を実施するための原資は十分に存在しており、当社の会社債権者に対する影響は大きなものではないとも評価し得る。また、代表取締役及び本件自己株式取得の担当取締役について取締役報酬の減額処分を実施する予定であり、さらに再発防止策に積極的に取り組む姿勢を見せており、業務プロセスの整備等については、既にこれに着手している。かかる事情を総合的に考慮すれば、当社取締役に対して責任等を追及すべき必要性までは認められないと考える。」
分配可能額は単体ベースで計算されるので、連結の剰余金がたくさんあるからといって、違法な自己株式取得である点は変わらないはずですが、債権者に迷惑をかけるような規模ではないから許されるということなのでしょうか。
報告書本文では「 EY 新日本監査法人とのやりとり」についてもふれています(報告書9ページ~)。
「分配可能額規制に関する相談及び照会等は行われなかったものの、2024 年 8 月19 日に EY 新日本監査法人から本件自己株式取得及び本件配当が分配可能額を超過していることについての指摘を受けた。
なお、EY 新日本監査法人は、期末監査における純資産の部の監査手続において、法令の違反がないかという視点で監査チームが分配可能額の検証を行っていた。」
会社側からの事前相談などはなく、また自己株式取得取引のタイミング(第4四半期に入ってから実施)からしても、監査人の責任はなさそうです。期末監査で指摘したようですから、役割は果たしたといえるのでしょう。
監査報告書受領のお知らせ(PDFファイル)
会計監査人と監査等委員会から監査報告書を受領したとのことです。
会計監査人の監査報告書は「無限定適正意見を付した会計監査報告書」です。ということは、会計監査人も、問題の自己株式取得は、違法だけれども、自己株式取得として会計処理することを認めたということになるのでしょう。