会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

IFRS財団トラスティ会議、新サステナビリティ基準審議会設置に関する戦略を公表(IFRS財団)

IFRS Foundation Trustees announce strategic direction and further steps based on feedback to sustainability reporting consultation

IFRS財団のプレスリリースです(2021年3月8日)。

IFRS財団は、2021年3月の会合で、「サステナビリティ報告に関する協議ペーパー(Consultation Paper on Sustainability Reporting)」に対して寄せられた意見(フィードバック)に対する分析と検討を行いました。

The Trustees of the IFRS Foundation met 2-4 March 2021 to continue their analysis and discussions of the feedback received to their Consultation Paper on Sustainability Reporting (2020 Consultation).

協議ペーパーへのフィードバックは、グローバルなサステナビリティ報告基準の必要性とその基準開発におけるIFRS財団の役割を承認するものでした。そこで、トラスティ会議は、2月の声明文で述べたように、現行のIFRS財団の統治構造の中に、国際的なサステナビリティ報告基準審議会を設立する作業を継続することとします。

Feedback to the 2020 Consultation confirmed an urgent need for global sustainability reporting standards and support for the Foundation to play a role in their development. The Trustees are therefore continuing their work on the establishment of an international sustainability reporting standards board within the existing governance structure of the IFRS Foundation, as set out in the Trustees’ February announcement.

先日のIOSCOの声明(国際的なサステナビリティ開示基準の緊急性に係るプレス・リリース)にもふれています。

協議ペーパーへのフィードバックに基づき、また、IOSCOの声明に勇気づけられ、トラスティ会議は、新しい審議会の戦略的方向性に関して合意に至りました。

Based on the feedback to the 2020 Consultation, and encouraged by the IOSCO Board statement, the Trustees have reached the following views about the strategic direction of a new board:

以下のような点です。

Investor focus for enterprise value 投資家や債権者の意思決定にとって重要な情報にフォーカスする。

Sustainability scope, prioritising climate 当初は、気候変動に関連する情報を優先する。他方で、他のESG項目についても、投資家の情報ニーズの充足に向けて作業する。

Build on existing frameworks TCFDなどの現行のフレームワークの利用

Building blocks approach 主要な国の基準設定主体と協力することによって、グローバルに首尾一貫し比較可能なサステナビリティ報告のベースラインを提供する一方で、より幅広いサステナビリティ上の影響を把握するような報告規則に関して、調整のための柔軟性を与える。

IFRS財団の提案は、IOSCOも賛成しているようですから、うまくいくかどうかはわからないにせよ、その方向で進めていくのでしょう。グローバルな基準設定はそれでいいとして、日本はどうなるのでしょう。金融庁の縄張りである財務会計基準機構(FASF)(傘下にASBJがある)でやるのか、金融庁の中に新しい審議会・研究会を設けてやるのか、今の枠組みのまま金融庁、経産省、環境省などの役所がそれぞれ対応するのか、どの官庁からも独立した新たな組織を設けるのかなどいろいろと考えられます。たぶん、偉い人たちがいろいろ検討しているのでしょう。

もっとも、法定開示に取り入れる予定がないのなら、急いで対応する必要はないでしょう。その場合は、企業はグローバルな基準や、その他の公表物を参考にして、法定開示の内外で任意に開示していけばよいでしょう。

[FT]ESG開示基準の混乱、解決の兆し 欧州が先導(日経)(記事冒頭のみ)

「英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のニューズレター「モラル・マネー」3月10日号ではサステナビリティー(持続可能性)を巡る開示規則の混乱に解決の兆しがみえてきた状況について論じた。」

IFRS財団の動きにもふれています。

デロイトIAS Plusによる記事(日本語版)。

IFRS財団の評議員会は、サステナビリティについてのイニシアチブの戦略的な方向性及び次のステップを発表(デロイトトーマツ)

「2021年3月2日から4日の会議で、IFRS財団の評議員会は、サステナビリティ報告についての協議ペーパーに対して受け取ったフィードバックの分析及び議論を継続し、将来の戦略的な方向性を結論づけた。」

「設立される新しいサステナビリティ基準審議会(SSB)は、

・投資者、融資者及び他の債権者の意思決定に重要性がある情報に焦点を当てる。

・他のESG事項についての投資家の情報ニーズに対しても作業するが、当初、気候関連報告についての取組みに焦点を当てる。

・金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の確立された作業とともに、企業価値に焦点を当てたサステナビリティ報告についての主要な基準設定主体の提携による作業に基づいて進める。

・広範なサステナビリティを捕捉する報告の要求事項について調整のために柔軟性も提供するものの、グローバルに整合的で比較可能なサステナビリティ報告のベースラインを提供する基準を公表するために、主要な法域の基準設定主体と作業を行う。」

(補足)

週刊経営財務の3月15日号で、IFRS財団の動きなどについて座談会記事を掲載しています。

サステナビリティ情報開示 最新動向と有識者の視点(経営財務)

「IFRS財団はトラスティ会議を開催し、「サステナビリティ基準審議会(SSB)」の設立について議論した。会議を受け、3月8日にSSBの方向性を公表。「気候変動問題の優先」、「既存の枠組みの活用」などを示した。」
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