会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項」(JICPA)

「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項」の公表について

日本公認会計士協会は、「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項」(という責任者不明でどういうデュープロセスで作成されたのかもあきらかにされていない謎の文書)を、2022年3月1日に公表しました。

意見不表明について

「監査人は、入手した監査証拠の範囲では意見の表明ができないとの判断を下すこともあり得ますが、...意見不表明は他の意見の種類と異なり、「極めて例外的な状況」にのみ許容されるものであることに留意が必要です」

(監査基準は、十分な監査証拠なしに意見を表明することは許容されないという趣旨のことを定めていますが、意見不表明が「極めて例外的な状況」にのみ許容されるものであるとは、書いていません。むしろ、意見不表明が監査人の初期値であり、意見不表明の状態からスタートして、監査手続を行い証拠を集めていった結果としてはじめて意見を表明できるようになるはずです。会計士協会も、監査品質をいうのであれば、安易に適正意見を出すなと呼びかけるべきであり、意見不表明は滅多に許容されないなどと強調すべきではないでしょう。それでなくても、監査人には、適正意見を期日どおりに出せというプレッシャーが常にかかっている(おそらくそれが多くの監査ミスの背景にある)のに、なぜ会計士協会がそのプレッシャーを増やすようなことをいうのか、全く理解できません。もちろん、監査契約は、無限定適正意見を出せるだけの見込みがあるかどうかを検討した上で、締結するわけですが、だからといって証拠なしに意見表明できないという大原則は変わりません。)(上記文書で参照している意見書(平成14年)前文では、意見不表明について「そのような判断は慎重になされるべき」とはいっています。しかし、基準本文(平成14年)では「自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得られないときは、意見を表明してはならない」としています。)

訂正報告書の提出時期について

事実関係調査のための体制構築等の対応を行った場合における一般的なケースでは、進行年度の有価証券報告書等の提出期限までに全ての調査が完了し、訂正すべき内容が確定しているため、当該提出期限までに過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を提出した上で、進行年度の有価証券報告書等を提出することとなります(あるべきスケジュール)」

(「事実関係調査のための体制構築等の対応を行った」としても、実際に必要な事実関係調査が行われるまでは「全ての調査が完了」とはいえないのでは)

「延長後の有価証券報告書等の提出期限までに事実関係の調査が完了しない場合、当該提出期限の時点では訂正すべき内容が確定していない状況であると考えられるため、事実関係の調査が完了し、訂正すべき内容が確定した時点で、企業は、過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を提出することになると考えられます」

(訂正報告書を提出するのは企業であり、それを受理するのは財務局なのに、会計士協会が訂正報告書の提出時期がどうのこうのという権限があるのでしょうか。財務局が見解を示せばよいのでは。)
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