会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

積水ハウスから63億円をだまし取った「地面師」の恐るべき手口(現代ビジネスより)

積水ハウスから63億円をだまし取った「地面師」の恐るべき手口

8月2日に積水ハウスが公表した詐欺事件の詳しい記事。「典型的な地面師事件」とのことです。

「ここでは、添付コピーのように所有権者の知らない間に、本人確認用の印鑑登録証明証、パスポートなどが偽造され、それを利用した「成りすまし犯」が手付金を受け取っていた。」

問題の土地は非常に条件のよいものだったようです。

「JR五反田駅を下り、目黒川の方向に少し歩くと、鬱蒼とした樹木に囲まれた一帯がある。五反田大橋を超えて近づくと、それが旅館であることがわかる。外周は古びた薄茶色のモルタルで一部は崩壊。玄関には、「日本観光旅館連盟 冷暖房バス付旅館 海喜館」という看板が出されているが、もう何年も営業しておらず、その朽ちた印象から「怪奇館」と呼ばれることもある。

山手線徒歩3分という絶好地に、約600坪が「一団の土地」としてまとまっており、不動産業界ではかねて注目の案件だった。所有権者はSさんである。...」

取引の経緯は...

「謄本が移動するのは、今年4月24日のこと。売買予約で千代田区永田町のIKUTAホールディングスに移り、同日、大阪市北区に本社を持つ積水ハウスに売買予約はさらに移っている。IKUTA社は窓口で、購入するのは積水ハウスということになる。坪単価は1000万円以上、「一団の土地」であることと、東京五輪を見越した都心一等地の値上がりで100億円にも達する物件の売買が成立目前だった。

ところが、売買は成立しなかった。2ヵ月後の6月24日、「相続」を原因に都内大田区の2人の男性が所有権を移転。Sさんが亡くなったということだろう。7月4日に登記している。2人の男性はSさんの実弟だとされるが、売買予約がついた土地の所有権が、なぜ移転できたのか。

「要は、トラブル案件であることを登記所が認めたということ。2人の男性の訴えを認めて相続登記したということは、売買予約で所有権移転の仮登記を打った2社の申請が、正規のものかどうかを確認するということでしょう。今後、訴訟になるのは避けられません」(不動産業界事情通)

となると、「売買予約」は無効。カネを支払った積水ハウスは、Sさんの成りすまし女とそのグループに騙されたことになる。」

カネの行方は...

「では、情報が事実だとして、63億円はどのように分配されたのか。

「情報は錯綜していますが、K、D、M、Fなどを中心とする名うての地面師グループが関わっているようです。既に換金しただけに、連中のなかには、億ションを買った、高級外車に乗り換えた、女を囲った、と派手に散財している者もいるそうです。逮捕されれば5年、10年と懲役を覚悟しなければならず、刹那的に遊ぼう、ということなのでしょう」(前出の事情通)」

海外ではエスクローというしくみがあって、不動産取引などでは使われているそうです。不動産は、1回限りの取引で大きな資金が動くのですから、日本でも、取引の安全を確保する何かのしくみがあってもよさそうなものですが...

会社のプレスリリース。

分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして(PDFファイル)

カネをだまし取られたのは4月(契約日)あるいは6月(決済日)でしょうから、第1四半期に損失として処理すべきでしょう。もちろん詐欺犯人に対して返金を要求する権利はあるわけですが、犯人の正体もわからない、したがって回収可能性はまったく不明という状況では、損失処理しかありません。

積水ハウスまで騙された「地面師」暗躍の実態
3Dプリンタで実印すら完全偽造される時代に
(東洋経済)

「事件を受け、筆者の下に各メディアから「プロでもだまされてしまうものなのでしょうか?」という問い合わせが相次いだ。答えは「YES」だ。不動産取引のプロでも見抜けないほど、最近の地面師の手口は巧妙化している。

印刷技術の発達もあり、パスポートなどの偽造は以前に比べてますます容易になっている。陰影がわかれば、3Dプリンタを用いることで実印すら偽造することも可能だ。仮に偽造が見抜けるとしても、過去にはこうした書類を受け取り登記申請を行う司法書士が、地面師グループとして関与し逮捕された事件もあった。」

(補足)

63億円「地面師事件」警察が追う「成りすまし女」の新写真を入手!(現代ビジネス)
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