会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

(2022/9/30)財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備及び内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ(オウケイウェイヴ)

(2022/9/30)財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備及び内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ

オウケイウェイヴ(名証ネクスト)のプレスリリース。

2022年6月期の内部統制報告書において、開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効ではない旨の記載を行ったとのことです。

不備の内容は、これまでも報じられているポンジスキームに引っかかってしまった問題に関連する事項が主ですが、OK FUND L.P.という連結子会社において、会社にとって不利な契約が結ばれていたり、その連結子会社が投資していた会社(アップライツ)の株式が自己株式取得されてしまったことについて、「子会社管理の体制を含む全体的な内部統制の不備」だとしています。

「また上記に加え、当社の連結子会社であるOK FUND L.P.におけるリミテッドパートナー契約について、当社に不利とも言える条件での契約がゼネラルパートナーであるEMZ ASIA Holdings Co., Limitedとの間で締結されております。さらに、連結子会社であるOK FUND L.P.と株式会社アップライツの間で、当社の承認なくアップライツ株式の全部について自己株式取得を行うことを決議し実行した旨の通知を受理しております。

これらにつきましても上記記載と同様に、子会社管理の体制を含む全体的な内部統制の不備があったと認識しております。 」

同社の有価証券報告書(9月30日提出)(なぜか、会社のウェブサイトには第3四半期の四半期報告書までしか掲載されていないので、EDINETを参照しました)で、この取引に関連していそうな注記を見てみました。

「※3  長期預け金及び貸倒引当金

長期預け金は、OK FUND L.P.から株式会社アップライツへ第三者割当増資の引き受け対価として2021年12月16日に999,999千円が払い込まれたのち、同年12月21日に株式会社アップライツから香港のARCH PROJECT (HONG KONG) LIMITEDへ345,000千円、シンガポールのWCC SOLUTION PTE LIMITEDへ470,000千円、海外での事業投資等を目的としたデポジットとして送金されたものであります。そのうち、48,000千円(各24,000千円)については10年間分のサービス料とされており、40,851千円については2022年5月から6月にかけて一部返金を受けているため、連結貸借対照表残高はARCH PROJECT (HONG KONG) LIMITEDへ295,134千円、WCC SOLUTION PTE LIMITEDへ431,013千円の計726,148千円となってります。

当該長期預け金については、コロナ禍等の経済環境等の影響から当初企図された支出が延期されているという説明を株式会社アップライツから受けているものの、同社からの当該資金の保全状況に係る十分な説明がなされていない点等を考慮し、363,074千円の貸倒引当金を計上しております。」

日本の株式会社に出資したはずが、香港とかシンガポールとかのよくわからない会社にほぼまるまる資金が流出していたということのようです。

アップライツののれん減損437百万円も計上しています。

アップライツ取得に関する注記。

「(企業結合等関係)
(取得による企業結合)

 当社は、2021年12月15日開催の取締役会において、当社子会社の投資ファンドである OK FUND L.P.(以 下「投資ファンド」といいます。)を通じて、株式会社アップライツ(以下「アップライツ」といいます。)の第三者割当増資を引受けることにより同社を子会社化することを決議し、2021年12月16日付で同社株式を取得し、同社及びその子会社2社を連結子会社化いたしました。

1  取引の概要

(1)   被取得企業の名称及びその事業の内容

被取得企業の名称:株式会社アップライツ

事業の内容   :音楽制作、映像制作、コンサート制作、スタジオ運営、著作権管理

(2) 企業結合を行った主な理由

(省略)

(3) 企業結合日

2021年12月16日(株式取得日)

2021年12月31日(みなし取得日)

(4) 企業結合の法的形式

現金を対価とする株式取得

(5) 結合後企業の名称

企業結合後の名称変更はありません。

(6) 取得した議決権比率

52.6%

(7) 取得企業を決定するに至った主な根拠

当社が現金を対価として株式を取得したことによるものです。

2 連結財務諸表に含まれている被取得企業の業績の期間

 被取得企業のみなし取得日を2021年12月31日としており、連結損益計算書に被取得企業の2022年1月1日から2022年6月30日までの業績が含まれております。

3 被取得企業の取得原価及び対価の種類ごとの内訳

取得の対価

現金

999,999千円

取得原価

999,999千円

4 主要な取得関連費用の内容及び金額

アドバイザリーに対する報酬等   4,500千円

5 発生したのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間

(1) 発生したのれんの金額

460,654千円

第2四半期連結会計期間において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度において確定しております。なお、のれんの金額に修正は生じておりません。

(2)発生原因

 今後の事業展開によって期待される将来の超過収益力によるものであります。

(3)償却方法及び償却期間

 10年間にわたる均等償却

6 企業結合日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額並びにその主な内訳

流動資産

312,025千円

固定資産

905,174千円

資産合計

1,217,199千円

流動負債

131,898千円

固定負債

45,500千円

負債合計

177,398千円

(以下省略)」

昨年12月に取得したばかりなのに、もうのれんを全額減損処理したということになります。

関連当事者取引(連結財務諸表提出会社の連結子会社と関連当事者との取引)にもあやしい支出があります。「ファンド運営にかかる報酬」として、202百万円を計上しています。アドバイザリー料も、当期計上額は大きくないものの、総額1億円の5年間解約不能というのは、異常な契約です。

注にあるように「当該リミテッド・パートナー契約は旧経営陣体制下で締結された契約でありますが、報酬の請求額については旧経営陣体制下の当社においても認識より多額に上るものであり、報酬の内容について十分な説明を受けていなかったと認識している取引であります。」とのことです。

アップライツについて、「重要な後発事象」の注記でふれています。

「(連結子会社の異動(連結除外)及び業務提携の解消)

当社は、当連結会計年度末日以後、連結子会社である株式会社アップライツ並びにその子会社である株式会社アップドリーム及び株式会社OMTY(以下、「アップライツグループ」といいます。)に対して財務又は事業の方針を決定する意思決定機関を支配できない状況を認めております。従いまして、2023年6月期第1四半期以後、連結範囲から除外されることなります(企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準企業会計基準委員会」第6項)。この影響で連結売上高の減少等が見込まれます。

これにより、当社は、2022年9月21日開催の取締役会において、アップライツグループを2023年6月期第1四半期以降、当社グループの連結範囲から除外することを決議いたしました。また、併せて、株式会社アップライツとの業務提携を解消することを決議いたしました。

1  連結子会社を連結範囲から除外する理由

当社は、2021年12月より、OK FUND L.P.(以下、「OK FUND」といいます。)を通じて株式会社アップライツの株式を51.9%保有しており、2022年6月期までは、当社がアップライツグループの意思決定機関を支配し、アップライツグループを連結子会社として連結対象に含め、グループの一員として経営を実施してきておりました。

一方、2022年8月29日に株式会社アップライツより、同社が同月28日に開催した臨時株主総会において、当社の子会社であるOK FUNDが保有するアップライツ株式の全部について、自己株式取得を行うことを決議し、同日実行した旨の通知を受理いたしました。これに対し、当社は同月30日付で、「連結子会社の取締役会決議及び臨時株主総会決議に関する通知の受領並びに反対意見表明に関するお知らせ」を開示しております。

監査・保証実務委員会実務指針第88号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の留意点についてのQ&A」(平成24年3月22日改正)のQ1によれば、連結財務諸表における子会社等の範囲の決定については、「(前略)他の会社等の意思決定機関を支配しているかどうかについては、(中略) 支配力基準に関する子会社となる要件を形式的に満たしていても、実質的に支配していないことが明らかである場合には、子会社に該当しない(後略)」とされています。

この点、2023年6月期第1四半期において、アップライツグループを実質的に支配できていないことが明らかであり、形式的基準のみで子会社として連結してしまうことは、当社の現状や現経営体制の下での経営実態を適切に反映できないこととなり、投資家の判断を誤らしめる可能性が高いことから、当該期間の当社連結業績にアップライツグループの業績を含めないことが、当社グループの経営実態を適正に報告することに資すると判断し当社取締役会において、アップライツグループを2023年6月期第1四半期以降、当社連結範囲に含めないことを決議いたしました。

2  異動する連結子会社の概要

名  称:株式会社アップライツ、株式会社アップドリーム、株式会社OMTY

事業内容:音楽制作、映像制作、コンサート制作、スタジオ運営、著作権管理」

「2022年6月期までは、当社がアップライツグループの意思決定機関を支配」とありますが、本当にそうだったのでしょうか。6月末まで支配できていたのに、8月になって急に支配できなくなったというのはおかしな話です。もともと、契約上、意思決定を支配できないようになっていたのでは(その場合は最初から子会社ではない)。自己株式取得の結果、オウケイウェイヴ(またはその子会社)にどれだけの資金が戻ってきたのかについて、注記でふれていないのも、記載が不十分です。

いずれにしても、つっこみどころがたくさんありそうな投資スキームとその会計処理です。会社は,調査委員会を設けて調査を継続しているようです。

監査意見は、無限定ですが、調査継続中なのに大丈夫なのでしょうか。

監査報酬をみてみると、前期は67,576千円、当期は82,470千円の報酬を支払っています。売上高が前期は20億円強、当期は8億円強の会社にしては,多額な報酬です。そのほか、特別損失で、「特別調査費用引当金繰入額」 99,337千円が計上されています。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「ガバナンス・内部統制」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事