会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

岸田文雄首相が“新しい資本主義のグランドデザイン”を初公開(文春オンラインより)

「賃上げはコストではない」岸田文雄首相が“新しい資本主義のグランドデザイン”を初公開《中国とどう対峙する?》

岸田首相が「文藝春秋」に寄稿した「私が目指す新しい資本主義のグランドデザイン」から一部引用した記事。

所信表明演説の内容と(当然ですが)あまり違いはないようです。

会計に関係しそうなところをピックアップすると...

「岸田首相が強調するのが「賃上げ」の重要性である。」

「「...労働力をコストと捉え、人件費の抑制によってわずかな収益を確保するという経営は、新しい資本主義における企業の理想像ではありません。優れた人材が生み出すイノベーションによって社会の課題を解決して、人への投資に見合った利益を実現することが、新しい資本主義が目指す成長と分配の好循環を実現する鍵です。

人的投資は単年度で見るとコストかもしれません。しかし、長期投資の視点で見ると、きちんと人材に投資していること、きちんと賃金を支払うことは、企業の持続的な価値創造を行うことになるので、これは明らかに投資であり、成長戦略なのです。

私の提唱する新しい資本主義について分配ばかりとの指摘が散見されますが、分配政策による人への投資こそが成長戦略でもあることを指摘しておきたいと思います。新しい資本主義の時代は、費用としての人件費から、資産としての人的投資に変わる時代です」」

文藝春秋の方を読むと、人的資本に関連して非財務情報開示のことを述べているほか、四半期開示見直しにもちらっとふれています。金融審議会にお願いしているといっていますが、実際にはあまり動いていないのでは...。IPOに関して、公開価格が初値に比べて低く、スタートアップ企業に資金が回っていないというようなこともいっています。また、SPAC導入にもふれていました。

脱炭素に関してはやや消極的なようです。

「「...EV一辺倒で進んで物事が変わる、それで良かったですねという単純な話ではありません。今、自動車産業で生活している多くの方々、雇用されている方々がどう生きていくか、考えなければなりません。...

また、削減目標の実現にあたっては、再生可能エネルギーの一本足打法というのは現実的でありません。再生可能エネルギーのみならず、原子力、水素などあらゆる選択肢を追求することで、将来にわたって安定的で安価なエネルギー供給を確保し、さらなる経済成長につなげていきます」」

人的資本に関する開示とちがって、気候変動開示についてはまったくふれていないようです。首相と金融庁(金融審議会)の関心の方向性が異なっているのかもしれません。


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「新しい資本主義実現会議」の11月の会合で、人的資本について議論されたようです。

新しい資本主義実現会議(第3回)(内閣官房)

柳川委員冨山委員のプレゼン資料の中で、人的資本関連の非財務情報の開示に言及しています。

「企業の人材投資はコストではなく、将来への投資
非財務情報としてでも、その部分を見える化し
投資家の納得感、従業員の安心感を形成する」(柳川委員資料より)

真っ当な「新しい資本主義」のすすめ/神野直彦氏(東京大学名誉教授・社会事業大学学長)(Yahoo)

「岸田政権の新しい資本主義の中身を具体的に見てみると、科学立国の推進やスタートアップ企業の支援、デジタル化による地方の活性化、外国半導体工場の誘致など、キャッチフレーズこそよく練られているものの、結局のところ成長戦略としては何ら目新しいものは見当たらない。かと思えば、分配戦略としては「賃上げ機運の醸成」「男女間賃金格差の解消」など、新鮮さもなければ具体性もないメニューが並ぶばかりで、これのどこが「新しい資本主義」なのか、皆目見当が付かない内容だ。」

「経済学者として一貫して分かち合いの経済政策の必要性を訴え、その方向への経済政策の転換を提唱してきた東京大学名誉教授の神野直彦氏は、岸田政権の「新しい資本主義」には何ら新しい要素は見いだせないとしたうえで、現在の資本主義が置かれている状態に以下のような認識を示す。

それは、20世紀末に資本主義vs社会主義の戦いにおいてソビエト型社会主義が崩壊することで資本主義が一時的に勝利を収めたところまでを第1幕とすると、第2幕では社会主義に勝った西側資本主義を支えた戦後の福祉国家モデルも程なく終焉し、そして第3幕で小さな政府を主張する新自由主義的なアングロ・アメリカン(英米型)モデルの資本主義と、EUの社会統合モデルが登場したたが、その両者がリーマンショック後に共倒れとなり、現在世界は第4幕が開かないまま混沌とした状態にあるというものだ。

世界が新しい資本主義の形を模索する中で、大上段から「新しい資本主義」を掲げる以上、岸田政権はそうした世界的な潮流の中で日本がどのような資本主義を提案しようとしているのかが問われると神野氏は語る。」
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