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(再掲)調査能力が不足 監視委・検察の黒星(東洋経済より)

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調査能力が不足、証取監視委・検察の痛恨黒星
「市場の番人」の監視委員会の看板が泣く
(東洋経済)

「監視委はその名のとおり証券市場の監視を行うための組織で金融庁に属している。だが、歴代の委員長は検察の要職経験者で、実態はさながら「検察庁の出張所」のようだ。

監視委の誕生は1992年にさかのぼる。金融犯罪や不公正取引の増加に対して、専門の調査機関が必要との世論が背景にあった。

しかし当時の大蔵省には刑事事件の捜査を行うノウハウはなく、検察庁の検事や国税庁の査察経験者などを出向で多数受け入れた。これは現在も続いており、検察から多くの人員を受け入れている。」

ナイスの事件は6ページからです。


週刊東洋経済の最新号は、「弁護士・裁判官・検察官」という特集です。

その中の「調査能力が不足 監視委・検察の黒星」という記事(9月19日から2日間のみ無料登録で読めるそうです)で、すてきナイスグループの虚偽記載事件を取り上げています。(そのほかに、モルフォのインサイダー取引事件(課徴金納付命令取り消しが確定)とSMBC日興證券の相場操縦事件(被告5人が容疑を否認)も扱っています。)

この事件は、刑事裁判の1審と2審で判断が分かれたそうです。

「「取引に実態はなく、架空売り上げを計上する方法により虚偽の有価証券報告書を提出した」。横浜地裁の奥山裁判長が下した結論は検察の主張に沿ったものだ。 裁判長は21年3月、平田氏(当時の会長)に 懲役1年6カ月・執行猶予4年の判決を下した。」

「それから1年9カ月後の22年12月。東京高裁の大善文男裁判長は、奥山裁判長と真逆の判断を示した。「本件各取引には実体が認められ、架空の取引とはいえず、原判決は不合理な認定をしており、明らかな事実誤認がある」。 取引に実態がある以上、会計基準に従って、虚偽記載かどうかを検討しなければならない。そこで原審を破棄し、横浜地裁に差し戻した。」

記事によれば、会計処理上の論点は...

「不動産を売却した先はザナックである。ザナック株をナイスは1 株も持っていなかった。大半は平田氏が持っていた。こうした場合、ザナックを子会社と見なして売上高を連結消去すべきかどうか。 これは専門家による高度な判断が必要だ。少なくとも家宅捜索をして 逮捕・起訴をし刑事罰を負わせるような、悪質な事件ではない。」

この記事でいっているとおり、持株比率で判断できる場合は別として、役員の兼任や財務上の支援の有無とかで、支配しているかどうかを判断する場合(支配していれば子会社)は、判断が難しくなります。例えば、役員の兼任だけで判断してしまうと、ソフトバンクグループの孫社長の個人会社もソフトバンクグループの子会社となってしまいますが、そんなことはないでしょう。

もちろん、子会社ではないとしても、役員の会社との取引となると、当然、関連当事者取引としての注記の要否も検討しないといけないでしょうし、あやしい取引であるリスクも高いでしょう。しかし、それだけで架空取引と決めつけるわけにはいかないでしょう。

記事によれば、この事件はKというナイスの元幹部(当時背任・横領疑惑があり社内で調べられていたそうです)による通報がきっかけだったそうです。

なお、今の証券取引等監視委員会委員長、中原亮 一氏は、この事件の捜査時の横浜地検の検事正だったそうです。

当サイトの関連記事(有罪判決破棄、差し戻しについて)

(再掲)ナイス(株)における有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定について(金融庁)

 

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