経産省は、電気事業会計規則等の一部を改正する省令の案を、8月23日に公表しました。
原発事故を引き起こした東京電力を救済するための原子力損害賠償支援機構法の施行に伴う改正案です。
改正の主な内容は以下のとおりです(資料より)。
(1)電気事業会計規則の別表第一(勘定科目)に以下の科目等を新設する。
1)原子力損害賠償支援機構負担金
営業費用に支援機構法第38条第1項に規定する負担金を整理するため「原子力損害賠償支援機構負担金」の項目を設ける。なお、「原子力損害賠償支援機構負担金」は一般負担金及び特別負担金に区分して整理する。
2)原子力損害賠償支援機構資金交付金
特別利益に支援機構法の規定に基づく原子力損害賠償支援機構からの資金交付金を整理するため「原子力損害賠償支援機構資金交付金」の科目を設ける。
3)未収原子力損害賠償支援機構資金交付金
固定資産に原子力損害賠償支援機構資金交付金の未収金を整理するため「未収原子力損害賠償支援機構資金交付金」の科目を設ける。
(2)一般電気事業供給約款料金算定規則、一般電気事業託送供給約款料金算定規則及び卸供給料金算定規則において、原子力損害賠償支援機構負担金(特別負担金を除く。)を料金原価(営業費)に追加する改正を行う。
今回改正される規則は、電力会社の財務諸表の表示に関するものと思われますが、関連する会計処理もよく考えなければなりません。
具体的には、大事故の責任を負うべき東京電力が支援機構から受け取る「原子力損害賠償支援機構資金交付金」や、その見返りとして負担する「特別負担金」を、いつどのような金額で、利益や損失・費用として計上すべきかという問題です。
以前当サイトでも議論したように、支援機構法第50条では、特別負担金について、認定事業者(東電が該当します)に対して、「電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、・・・できるだけ高額の負担を求める」とされています。したがって、東京電力は「電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障」が生じるほどにならない限り、「原子力損害賠償支援機構資金交付金」を「特別負担金」という形式で将来的に返済しなければなりません。
将来返済しなければならないカネを利益に計上することはできません。交付を受けたカネを負債に計上するか、あるいは、いったん利益に計上するのであれば、その見返りとして負担すると見込まれる特別負担金の金額を、未払金または引当金として負債計上しなければなりません。
将来的に、「電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障」が生じそうになって、東電に交付された金額の一部を負担しなくてもよいことになった時点で、その免除額分だけ利益に計上することになります。業績不振会社が債権者から債務免除を受けるとき、免除益を計上できるのは、実際に免除を受けた時点であり、債務超過になりそうだ、そのため債権者は債務免除してくれそうだといって、それ以前に免除益を計上することができないのと同じことです。
当サイトの関連記事
福島第1原発:ベント失敗なら線量数シーベルトの試算(毎日)
条件付監査意見論 永見 尊 by G-Tools |