会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

赤坂有限責任監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(金融庁)

赤坂有限責任監査法人に対する検査結果に基づく勧告について(PDFファイル)(注:リンク誤り修正しました。)

金融庁の公認会計士・監査審査会は、赤坂有限責任監査法人を検査した結果、同監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、同監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました(2023年3月17日付)。

以下、指摘事項から引用。運営が著しく不当という結論(処分を行うためにはその結論が必要)に向かって、抽象的な問題点を次から次へと、あまり脈略もなく繰り出していくといういつもどおりのスタイルです。(検査先に対しては、もっと具体的な指摘事項を示しているとは思いますが)

業務管理態勢。

「法人代表兼品質管理担当責任者を含む各社員は、内部規程等の整備・運用を含め、適正な監査品質の確保に向けた実効的かつ組織的な業務管理態勢を構築できていない。」

「法人代表兼品質管理担当責任者を含む各社員は、監査調書の査閲、監査業務に係る審査、定期的な検証、品質管理レビューでの指摘事項に対する改善施策等の実施に際し、法人全体の監査品質の改善・向上に向けた社員としての職責・役割を十分に果たしていない。」

「法人代表兼品質管理担当責任者を含む各社員は、主体的に監査業務に関与する姿勢が不足しているほか、自らを含む監査実施者において、監査の基準や現行の監査の基準が求める手続の水準に対する理解が不足していることを認識できていない。」

「関係会社等との取引、品質管理レビューでの指摘事項の改善状況、監査業務に係る審査など、品質管理態勢において、重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められている。」

「今回の審査会検査で検証対象とした全ての個別監査業務において、業務執行社員及び監査補助者に監査の基準に対する理解が不足している状況及び職業的懐疑心が不足している状況が確認され、それらに起因する重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められている。」

(最近の「勧告」をみると、「業務管理態勢」の最初のパラグラフで、その監査法人が掲げている経営理念、経営方針、スローガンなどを示したうえで、次のパラグラフに「しかしながら」でつないで、批判していくというパターンのようです。しかし、これでは、立派な経営理念などを示さない方がまだましだといっているように感じられます。)

品質管理態勢。

「当監査法人は、関係会社等からの業務委託に係る取引価額が、委託された業務量や、従前受領してきた委託業務報酬の額等に照らして適切な金額であるかについて検討していないほか、関係会社等との重要な取引の実施について社員会で決議していないなど、適切な業務管理態勢を構築していない。」

「当監査法人は、アドバイザリー業務を行う関係会社からの業務委託に係る対価について、収益として計上することなく、人件費から控除する会計処理を行っており、費用の項目と収益の項目との直接の相殺を禁じ、総額表示を原則とする、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に則した会計処理を行っていない。」

(契約形態はともかく、グループ会社への応援の対価として受け取る出向負担金のようなものと考えれば、人件費からの控除でも、一概に間違っているとはいえないのでは。収益に計上すると、むしろ、監査法人の規模に関して誤解を生じさせるおそれがあります。また、報酬依存度の計算において、実態よりも低い数字になってしまいます。)

「当監査法人においては、当該指摘事項(日本公認会計士協会が実施した令和3年度品質管理レビューにおけるもの)についての再発防止に向けた改善措置が実効性のあるものとして講じられていない。そのため、今回の審査会検査においても、当該指摘事項と同様の不備が複数検出されている。」

審査担当社員は、監査チームが行った、不正による重要な虚偽表示リスクや特別な検討を必要とするリスクに関する重要な判断、独立性に関する評価等について、業務執行社員等との討議や関連する監査調書の検討を十分に実施することなく、監査チームによる重要な判断とその結論には問題がないものとして、審査を完了させている。」

「内部規程の整備及び運用、法令等遵守態勢、情報管理態勢、職業倫理及び独立性、監査契約の新規の締結及び更新、監査実施者の教育・訓練、社員及び職員の評価・報酬、監査調書の査閲及び整理、品質管理のシステムの監視に不備が認められる。」

「当監査法人の品質管理態勢については、関係会社等との取引、品質管理レビューでの指摘事項の改善状況、監査業務に係る審査において重要な不備が認められるほか、広範かつ多数の不備が認められており、著しく不適切かつ不十分である。」

個別監査業務。

「業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準の要求事項に対して形式的にでも検討していれば、監査の基準等が要求する監査品質を満たすことができるものと考えており、監査の基準や現行の監査の基準が求める手続の水準に関する各人の理解が不足していることを自覚できていない。」

「業務執行社員及び監査補助者は、被監査会社の特性に応じたリスク評価を適切に実施していないほか、被監査会社の主張を批判的に検討していないなど、監査の実施に当たり、職業的専門家としての懐疑心を十分に発揮していない。」

業務執行社員は、監査業務を担当できる社員の数が少数にとどまっている状況の下、非監査業務にも多くの時間を割く中で、担当する監査業務に十分な時間を確保し得ないため、担当する監査業務の実施に当たり、監査補助者からの説明と自らの理解とが合致しているかを確認するにとどまるなど、担当する監査業務への主体的な関与が不足している。」

「不正リスクの識別、収益認識に関する不正リスク対応、出資金及び債権の評価、固定資産の減損及び関連当事者との取引に係る監査手続が不十分、未訂正事項の検討が不適切といった重要な不備が認められる。」

「上記のほか...広範かつ多数の不備が認められる。

「検証した個別監査業務において、重要な不備を含む広範かつ多数の不備が認められており、当監査法人の個別監査業務の実施は著しく不適切かつ不十分なものとなっている。」

監査審査会が処分勧告 赤坂監査法人巡り(日経)

「社員間で法人運営に関する重要事項を十分に検討しておらず、業務運営に問題があった。法人全体で監査品質を改善・向上する意識も不足していると指摘した。」

公認会計士・監査審査会による処分勧告について(赤坂有限責任監査法人)

「今後は、当法人の品質管理体制を抜本的に見直し、人員体制の強化も含め、検査の途上から立案し推進している自主改善計画を確実に履行するとともに、監督官庁である金融庁に対し、改善状況の説明を適切に行ってまいります。

当法人としましては、今回の勧告の内容を厳粛に受け止め、今後も監査法人としての社会的使命を適切に果たしていくため、監査品質の向上に向けて法人一丸となって邁進する所存です。」

従業員を出向させた場合の給与に関する税務上の留意点(新日本監査法人)

「なお、出向元法人における給与負担金の受入れに係る会計処理としては、負担金収入などとして受け入れる方法が考えられますが、決算書の表示上は給与勘定からマイナスするのが一般的です。」

これを総額主義に反するという人は少数派でしょう。

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