浅川マキⅡ MAKI Ⅱ
やっぱりね、
どうしようかしらね。
流れ者なんて かっこいいわね
でも どっちかと言うと 流される方だしね。
せいぜい ふんばっちゃうわけよ
すると 陥ち込むのね。 陥ち込むと 滞〜る
ところはなさそうだし。
東京に暮らして 十年は過ぎた
いま こうして ビルとビルの狭間に 眩しい
ネオンを 眺めれば わたしが育った あの
日本海の黒々とさえした 冬の海を思い
一瞬 ビルが覆いかぶさり 呑み込まれて
しまいそう
何が意気かよ 気が付く時は
みんな 手おくれ 吹きざらし
うたが 出てくりゃ しめたもんよ。
わたし 酔っぱらちゃったかな。
足もとを吹き抜ける風すら 心地よいわ。
すっと 行っちゃおうかな。
浅川 マキ
「朝日の当たる家」 詩:浅川マキ
あたしが着いたのはニューオリンズの
朝日楼と言う名の女郎屋だった
愛した男が帰らなかった
あんとき あたしは 故郷を出たのさ
汽車に乗って 又 汽車に乗って
まずしいあたしに変わりはないが
ときおり思うのはふるさとの
あのプラットホームの薄明り
誰か言ってくれ 妹に
こんなになったらおしまいだってね
あたしが着いたのはニューオリンズの
朝日楼という女郎屋だった