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「モノラルレコード」を「ステレオカートリッジ」で再生して問題ないか?

 友人たちと楽しい「お茶会」(オーディオ談義)での

 先ずは
 LPレコードのモノラルLP(以下、LPは省略)レコードとステレオレコードの溝の形状
 カートリッジについて Vol.9 モノラル編Ⅰ

 ざっくり言うと、 
 モノラルレコードの溝はモノラル音の信号を横振動として記録した単純な構造
 ステレオレコードの溝は左右チャンネルの音信号を横振動と縦振動として記録した複雑な構造。
 カートリッジの役割は、レコード溝に記録された機械的信号を電気信号に変換することです。 
 モノラルレコードとステレオレコードの溝の形状「V」は同じ。その角度、広さが違う。つまり、針先チップの形状は溝の形状に合っていなければならない。

○カートリッジの基本構造
 次の3つのパートに分かれている。
①針先チップ
 レコード溝に直接接する部分。レコード溝の形状にあっていなければならない。丸針、楕円針、柴田針、SAS針
 摩擦に強い材料でなくてはならない。人工ダイヤモンドが一般的
②発電機構 
 磁界(コイルと磁石)の変化(物理力)を電気信号に変換する部分。カートリッジボディ内にあるので見えない。MM型(ムービング・マグネット、 MC型(ムービング・コイル)に大別される。
③カンチレバー
 ボディーから斜め前方に突き出た細い円筒状のもの。その先端には針先チップがついている。針先チップの変動を発電機構に正確に伝える部品。車に例えれば、タイヤとボディーを繋ぐサスペンションにみたいなもの。
 軽くて丈夫な材料が適している。アルミ、ボロン、黒柿、ルビー

○モノラルレコード用カンチレバーとステレオレコード用カンチレバーの相違
 モノラルレコード用(以下。「レコード用」は省略)カートリッジのカンチレバーは横振動を拾うことに特化している。溝に密着させるため、針圧は大きい方が有利です。重針圧。カンチレバーは丈夫で太くなる。
 針先チップの先端形状は「丸針」(ステレオ丸針より大きい)です。

*モノラルカートリッジの原型はSPレコード針と同じ。カートリッジ本体から真下に伸びるものもありました。(SPレコードは横振動記録のものと縦振動記録のものがあった。え??)

 ステレオカートリッジのカンチレバーは横振動に加え、縦振動を拾わねばならず、可動域が広い。軽針圧が適している。カンチレバーは長く細い。
 針先チップの先端形状は「丸針」、「楕円針」、「柴田針」、「SAS針」と多様。

 「モノラル録音レコード」と表示しながら、実は「ステレオ溝」の「擬似モノラルレコード」があります。70年代、大量に販売された安価なモノラルレコードは「擬似モノラルレコード」です。
*擬似モノラルレコード:レコード溝の両側に同じ音が刻まれた「ステレオレコード」

 65年以降に発売されたLPレコードはステレオ盤です。カートリッジは、「モノラル用」と銘したカートリッジを除き、ステレオレコード用です。
 「擬似モノラルレコード」は「ステレオレコード用カートリッジ」による再生を前提として作られた左右両に同じ音が記録された「ステレオレコード」です。

 残念ながら、「本物のモノラルレコード」と「擬似モノラルレコード」の音質は隔世の違いがあります。これは別の話になります。

 「本題」の回答です。
 「(本物の)モノラルレコード」は「モノラルレコード専用カートリッジ」、「ステレオ(擬似モノラルレコードを含む)レコード」は「ステレオレコード用カートリッジ」を使うのが本道です。
 しかし、モノラルレコード専用カートリッジを持っているのは、余程の音楽愛好家、オーディオマニアの少数派でしょう。
 現実はモノラルレコードの再生時にもステレオカートリッジを利用している例がほとんどと思います。
 じゃ、だめ?なの
 逆アプローチで考えれば分かり易いでしょう。モノラル専用カートリッジでステレオレコードの溝をトレースした場合の問題点はあるのか。
 モノラル専用カートリッジの針先はステレオ用カートリッジに比して大きく、指圧が重く、針先の可動域は狭い。この状態でステレオレコードの狭い溝を無理やり押し広げることになる。
 LPレコードの材質は可塑性の高い塩化ビニール製。溝が一時的に歪んでも時間が経てば戻る。重針圧で繰り返して使うと、変形した溝が完全に元に戻らないで永久歪みにばる可能性がある。
従って、
モノラルレコード専用カートリッジ」はステレオレコードの再生に使ってはならない。

 ステレオカートリッジをモノラルレコード再生に使用した場合はどうなるか。
 「楕円針(柴田針、SAS針も含む」は針先が尖っている。モノラルレコードの溝はステレオレコード溝より広い。針先が溝の底に着く可能性がある。針横とレコード溝の壁に隙間が生まれる。針は左右にフラつく。まともな再生は期待できません。
 対し、「丸針」の先端が尖っていない。モノラルレコードの底を擦る前に、溝の両側に接触する。左右にふらつかない。
 つまり、
「丸針のステレオレコード用カートリッジ」はモノラルレコード再生に使える。
 ステレオカートリッジの丸針の径は違いがあります。古いタイプの針先は径が大きい傾向があるようです。モノラルレコード再生に向いていると考えます。
 具体例:シュアーのM44G(オーディオ用)とM447(DJ用)は兄弟機種です。
 M447が丈夫に出来ているようです。自分はモノラルレコード再生用として購入しました。

 擬似モノラルレコード(1965以降に出た再発売品)はステレオレコード溝なのでステレオカートリッジ(針先形状は問わない)を使わねばなりません。

○丸針のステレオカートリッジでモノラルレコード再生に使う場合の工夫
 モノラルレコードには縦振動はない。ステレオカートリッジは縦振動も拾う。つまり、雑音を拾う可能性がある。
 なら、縦振動を抑制すれば良いが理屈です。
 針圧を上げる。車のサスペンションに例えれば、敢えて底打ち状態にする。横振動は拾うけれど、縦振動は拾いにくくなる。
 重針圧にするとカートリッジ本体の底がレコード面に当たって擦れる可能性がある。
肝心の横振動を拾いにくくなる。つまり、重針圧にするにしても限度があると言うことです。
 丸針のステレオカートリッジをモノラル、ステレオの両用で使う場合、問題があります。
 ステレオカートリッジはコイルとマグネットの位置が適正範囲に収まるように適正針圧が決められています。 
 常時、適正範囲を超えて重針圧を続けると、カンチレバー、それを支えるゴム素材が永久歪みを起こす危険があります。モノラルレコード再生からステレオレコード再生に切り替える時に適正針圧に戻してもコイルとマグネットが正常位置に戻らないことになる。
 「モノラルレコード再生用」と「ステレオレコード用」は分けた方が無難でしょう。

 モノラルレコード再生用トーンアームは軽針圧向けのアームよりはシンプルなしっかりした構造のものが向いているように思います。
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