。「ネットワーク方式スピーカーの問題点 書き掛け中」を改題しました
マルチアンプスピーカーシステムへの「憧憬」と「挫折」
JBLの3ウエイマルチアンプで挫折し、現在のALTEC620Bを使っている。
ALTEC 620B(604-8H搭載)礼讃
スピーカーユニットALTEC 604-8Hは、低域〜中域を担当する38cm口径の515B相当(以降、515B)のスピーカーユニットの中央に繰り抜き、そこに高域を担当するホーンドライバー802−8D相当品(以降、802-8D)+小型マンタレイホーンは組み込んだ複合型2ウエイ同軸スピーカーユニットです。
515BはALTEC A5システムにも使われる強力ユニットです。ホーンドライバー802-8Dは高域のドライバーにALTEC A7システムにも使われています。
604-8Hは前型モデル604-8Gと515B、802-8Dを使っていることは共通です。ホーンドライバー部分は全く違います。
外観はマルチセルラホーンから小型のマンタレイホーンに大きく変わりました。外から見えない内部構造も大きく変更されています。802-8Dドライバーの振動板のエッジがタンジェリン型に、そこから出た音がマンタレイホーンに導かれる音道が新開発のフェーズプラグになりました。
これらの相乗効果により、高域が伸び、指向性も広がり改善されました。1980当時の最新鋭の技術が盛り込まれ他のです。
高域特性の改善は繊細さに繋がります。
ALTECの同軸スピーカーは少し小型の銀箱と言うスタジオモニターとして使われていました。スタジオモニターはどんなジャンルにも対応せねばならない。高域特性の改善はその意図に沿ったものかもしれません。
その一方、高域特性、指向特性の改善は、中域の押し出しが薄まる傾向にも繋がります。JAZ好き多いALTECファンにとっては歓迎されざることであった可能性があります。
一寸、寄り道
同軸スピーカーシステムにとって、ホーンの形状は重要です。大きければ、低域〜中域を担当するユニットから出る音の障害物になり波形を乱す。小さければ、再生周波数帯域が上がり、クロスオーバー周波数を上げざるを得ず、結果として、2つにスピーカーユニット同士の繋がりに無理が生じる。
大口径ウーファーにショートホーンの組み合わせ。クロスオーバー周波数1500hz は、ウーファー側からもツイター側から見てもかなり無理をしている印象があります。
TANNOYの同軸スピーカーはこの辺の矛盾を上手く逃れているように見える。ホーンの金属部は短い。ホーンの延長にウーファーのコーン紙のカーブを利用しているようです。これはこれで無理があるように感じます。コーン紙は常に揺れているのですから、ホーンが振動してのと同じです。クロスオーバー周波数は高くせざるを得ません。
604-8Gのホーンの板厚のマルチセルラホーンは堅牢に見えます。対して、604-8Hのホーンは薄くて小さい。ややひ弱な印象を受けます。見栄えは604-8Gが勝る印象です。
往年のジャズファンから見れば、軟弱と映ったかもしれません。評判は決して良くなかった印象があります。JBLに代表されるようなマルチスピーカーユニットを組み合わせたスピーカーシステムの影に埋没し、やや時代遅れに感じると言う時代背景もあったでしょう。
寄り道、終了
604-8G、604-8Hの両システムを聴き比べ、自分は繊細さの勝る604-8Hを選びました。繊細な音色を出すチェンバロ曲は好きでしたし、今も聴いています。
604-8Hのクロスオーバー周波数1500hzは苦心の上での決定かもしれません。
604-8Gも604-8Hも2ウエイの同軸システムです。ネットワークは2ウエイですから、高域部の出力はボリューム(可変抵抗)で調整します。ところが、604-8Hにはこれまでと同じ方式で調整する1ボリューム方式とは別に2ボリューム方式があり、切り替えができます。どのような仕組みで2ボリューム方式が可能なのか不明ですが、中域の薄さをカバーするような補正回路が入っているのかもしれません。
設計者の意図は2ボリューム形式のネットワークにあると考えます。往年の愛好者の意向も踏まえて1ボリュームも残したのではないかと想像します。
ネットワークはコンデンサー、コイル、抵抗で構成されます。スピーカーユニットの公称インピーダンスは発表されています。数字的にクロスオーバー周波数は計算できますが、スピーカーのインピーダンスは周波数によってうねっています。公称インピーダンスは参考値程度に考えた方が良いでしょう。メーカーはこれを考慮して、コイル、コンデンサー、抵抗が決める。その後、試聴を重ねて、ネットワークの例数は決めるのでしょう。
ネットワークはメーカーのノウハウの結晶と思われます。尊重したいと考えます。
当時、スピーカーの磁気回路がアルニコからフェライトに移行する時期でもありました。アルニコ磁石の素材となる希土類のコバルト価格が高騰したからです。武器の素材としてコバルトは欠かせない素材のようです。
後継の604-8Kはフェライト磁石仕様となってしまいました。
604-8Hを選んだ理由の一つはALTEC最後のアルニコ磁気回路の同軸モデルであったからです。
なお、振動板の形状をタンジェリング型にしたドライバー802?を持つA7もあります。友人の愛用品で良い音で鳴っています。
大型のホーンを組み合わせたALTEC A5、同A7のクロスオーバー周波数500hz、800hzは無理がない。理論的にと言うか自分の印象です。
ALTEC A5、A7の魅力はフロントロードホーンにあるのではと思います
周波数の再生限界はALTEC 620B(604-8H搭載)が広いでしょう。
その一方、人の声域の高域限界(1000hz)を考えると、これを604-8Hはウーファー部が受け持つので無理がないように感じます。
その一方、楽器の帯域からすると、特に金管楽器などでは迫力不足に感じる一因にもなっていそうです。
狭い部屋では音源の纏まりに難点がある大型のホーンシステムを聴くのは無理がある。
その点、大口径同軸スピーカーは音源が纏まっていて、かつ高能率スピーカーの持つビビッドな反応を楽しめる。
と言う訳で今も「8畳のオーディオ」の主役に鎮座している。
本質は変えようがない。
小手先かもしれないけれど、何かないか。
ネットワークはメーカーのノウハウの塊。下手に弄っても碌なことにならない。自分勝手流になってしまう。
今、気になっているのはネットワークの調整用ボリュームのガリ。固定抵抗に置き換えれば良いのだろうけれど、室内環境に合わせて調整出来るようした方が便利です。
なら、プリアンプの音量調整には可変ボリュームよりは抵抗切り替え式のアッテネーターが優れていることは実感している。切り替え式アッテネーターを構想中です。