言語によって話し手(送り手)の思考は影響を受けているとする考え方があります。言語人類学者のエドワード・サピア(Edward Sapir)と、サピアのお弟子さんであったベンジャミン・リー・ウォーフ(Benjamin Lee Whorf)による考え方です。「サピア=ウォーフの仮説」と呼ばれています。
例えば、日本語で「飛行機」と「鳥」は全く異なるものとして認識されています。ところが、ネイティブアメリカンのホピ族の言語では、そのいずれもが「飛ぶもの」というひとつの言葉で語られます。このノートの最初に述べたように、「コミュニケーション」という言葉が日本語になさそうなため、そのままカタカナ語として使用させてもらい、定義を決めてから使用していますので、この主張は実感として理解できます。ただし、言語が認識・思考にどの程度強い影響を及ぼすのかは不明ですし、思考は言語から独立しているとする反対意見もあります。
真偽の追及は、研究者の方にお任せします。
この仮説を知ったことで、「表現を鵜呑みにするのではなく、言葉の背後にある認識を上手に聞き取って、理解できるようになるには?」と考えることができます。言葉の背後にある認識、言い換えると、話し手独自のボキャブラリーとその意味を掴むことが、話し手(そのひと)を理解し、相互理解の共有ゾーンを広げていくには必要だとわかります。
参考図書
E. サピア , B.L. ウォーフ (著), 池上 嘉彦 (翻訳)『文化人類学と言語学 』,弘文堂,1970年。
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