2017年世界陸上競技選手権大会の分析からわかったこと①

2018年07月29日 | run

…という記事がSweat ScienceのWebサイトに掲載されていましたので、日本語化しました。引用元はこちらです。

今日から3日間に分割して掲載します。

【はじめに】
 2017年世界陸上競技選手権大会がロンドンで開催された際、Leeds Beckett大学の研究チームはハイスピードカメラをマラソンコース上の4箇所に設置して映像を撮影し、生体力学の研究に供した。

 マラソンコースは10.2km/周の周回コースを4周するものだったので、周回毎≒疲労が増すほどに歩幅/着地位置/関節の角度等がどう変化するを調査の主眼とした。

 以下に、興味深いトピックを紹介する。

【①:踵着地の復権】

 ベアフット(裸足)/ミニマリストといったランニング方法を支持する人達は、「踵着地は悪い」と主張する。確かに、ケニア等で裸足で(≒靴を履かずに)成長した人間は、裸足で走る際に前足部若しくは中足部で着地する傾向を示すという調査結果も示されている。しかし、東アフリカ出身のトップランナー達はどうだろうか?。彼らはシューズを履いても前足部/中足部で着地しているのだろうか?。

 男子マラソンの4周目について見ると、70名のランナー中、
・踵着地  …47名(67%)
・中足部着地…21名(30%)
・前足部着地…2名(3%)
であった。この割合は女子でもほぼ同様であった。着地位置の分布は、登録国や最終順位での偏りは見られなかった。更に言えば、男子の上位4名は全ての周回で踵着地していた。

 昨今は、「エリートクラスのランナーは踵着地しない」という見方が当たり前になっていた。例えば、Nike社が「フルマラソンで2時間切り(”Breaking 2”)プロジェクト」に取り組んだ際、一度は軽量化目的で踵部分を殆ど剥ぎ取った試作品を作った程である。ただその試作品については、試用した全てのエリートランナーが拒否反応を示した為、製品化に当たっては踵部分を有するVaporfly 4%になったということである。そのような経緯を鑑みると、今回の調査結果は特に興味深い。

 もちろん、今回の結果についてもいわゆる「卵が先か、鶏が先か?」といった問題は残されている。つまり、ランナーは
・(本能的に?)踵着地を好むから、踵部分にクッション素材を配したシューズが好まれるのか?
・踵部分にクッション素材を配したシューズを履くからこそ、踵着地するのか?
といった問題である。この点について、今回の調査結果からは何らかの見解は導き出せない。従って今回の調査結果だけでは、踵着地が優れているとも結論付けられない。ただ、ベアフット(裸足)/ミニマリストといったランニング方法を支持する人達が主張する、「世界のトップランナー達は前足部着地しているから、市民ランナーも自らの能力を最大限発揮したいのであれば前足部着地を習得するべきである」という考えは再考を要する。
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