これは、本当に最近のお話です。他のマネジャーは展示会外出やお休みで私一人。
肌着売場に大量払い戻しが来ていますぅぅ。と、事務所に電話が入りました。
1.中国系のかたこと日本語の男が高額の肌着(1枚4,000円~5,000円を10枚くらい)の払い戻しに来ている。
2.レシートは当然なく、当社の包装紙、袋、シールなど買上げの証拠になるものは何も持っていない
3.知人からもらったものだと言っている。知人がここで購入したことは間違いないと言っている。
4.どう見てもあやしい。盗難品か不正クレジット使用による払い戻しくさい。
と、こんな状況でした。まあ、割と良くあることなのでそれほど驚くことでもなく、当社のセオリーどおり
「お買上げが確認できるまでひとまずお預かりをして、お買上げが確認できた時点でお取替え券での払い戻しをする」と、伝えてください。
と、指示をしました。もし、それでも納得しないようならもう一度電話してくださいと、伝えました。
しばらくして、売場からTEL。「ぜんぜん引き下がらないんですが・・・どうしましょ・・・」
私は、「は~~っ」と長~いため息をついて肌着売場に向かいました。
すると、50歳くらいの三国人(差別用語か?)が割りと大きめな声でなんか言っている。
しばらくは遠巻きに見ていたのですが、そのうち応対していたOさんがHELPのサインを送ってきました。
そして私がいつものように「私が責任者ですが・・・」と、カウンター越しに会話に入っていきました。
その男の表情は「じゃまなやつがきたな」という感じでした。
「○○(当社の名前)嘘つきね、トモダチここで買ったといっている」
「私、下着いらない。あさってからアメリカ行く。早くして」「3万円くらい、いいだろ?」
「三越もあるよ。この下着ここもあるよ。どこで返しても同じ・・・」
この方は、シャツがいくらでブリーフがいくらで総額をすでに把握しているようでした。そして多分三越に
行って断られたんだと思います。ますます、怪しい。
責任者だといって話しているのにこちらをあまり見ようとしない。Oさんの方ばかり見て話をします。
まあ、ここはセオリーどおりの言葉を繰り返します。「お買上げが確認できるまでひとまずお預かりをして、お買上げが確認できた時点でお取替え券での払い戻しをいたします」と。
でも、ぜんぜん納得しません。
「○○(当社の名前)嘘つきね、トモダチここで買ったといっている」
「私、下着いらない。あさってからアメリカ行く。早くして」
話がループして一向に前に進みません。そんな押し問答を15分位続けました。
もう、最初の電話からは軽く30分以上は経っています。
しょうがないので私、いきなりお役所のようになって
「これは規則ですので、できないものはできません。規則なんですよ」(松田優作風・・・わかるかなぁ?)
その男、最初からあまり私には目を合わせないのですが、怒りと苛立ちがピークになっているのが分かりました。
Oさんがさらに「ここでのお買上げの証拠がないじゃないですか・・・・」と、言ったら
衝撃的な一言が・・・・Oさんに向かって発せられました。
「おまえ、殺すぞ・・・・」
・・・・一瞬耳を疑いましたが、その男の今までの比較的柔和な目が、相当鋭くなっているのが感じられました。「これ以上、挑発するのはやばいぞ」と本能的に思いました。
「なに!?いま、なんて言いました?」私も少々挑戦的な態度で聞き返しました。これ以上何か言ったら「脅迫するつもりか?保安を呼ぶぞ」と、言うつもりでした。
その男も、これ以上言ったら金が取れないと思ったのか、私の態度が強かったからか、元の比較的柔らかな調子に戻りました。
これ以上長引かせても埒があかないので、強引に「はい、ここにお名前、お電話番号を書いてください。
お買上げが確認できたら電話いたします。はい、いいから、ここに書いて・・・」と、一気に持っていきまいた。
住所はプライバシーだから書きたくないとかほざくので、「電話だけで結構です。近日中に連絡いたします。
商品は置いて行ってくださいよ。調べられませんから。」
そこには 山田 090-●●●●―●●●● とだけ書いてありました。商品は置いていかずにそのまま、わけのわからない捨て台詞を残して帰っていきました。
問題点はいくつかあります。まず前提として当店で扱っている商品で、進物だった場合の払い戻しに対して
怪しいと思っただけで払い戻しを拒否はできません。
客の買上げの証拠もないかわりに、こちらもその男の知人に「売っていない」という証拠もないからです。
ましてや、盗んだ商品という証拠もないわけです。
包装紙、シールなどが全くない場合は拒否できるということも明文化されていません。
最近、オーダーワイシャツの払い戻しが各百貨店で多発していて問題になっています。多重債務者に
クレジットでぎりぎりまでお仕立て券付生地を買わせて、金券屋が引き取り、大量払い戻しが発生する
という組織だった行為が横行しています。
当社は警察にも相談をしていますが法的にもグレーゾーンで抜本的な対策は取れない状況らしいです。
今回の肌着の件も組織立ってないだけのことなのかもしれません。
売場の人にとっては怪しい商品を払い戻して売上が減ってしまうのは悔しいことでしょう。
でも最終的にはこのケースは払い戻しに応じなくてはいけないかもしれません。
ただ、見るからに怪しいものに対しては牽制の意味でワンクッション置くことは大事だと思います。
今回の場合も商品を置いていかなかったということは、あきらめたということかもしれません。
もうひとつの問題は、今回は明らかに怪しいケースでしたが、「善意の払い戻し」に対しても販売員が
払い戻し=悪 だと、思ってしまうことです。百貨店はお客様の利便を考えて過剰なほどのサービス合戦に
なっています。あるメーカーのオーダースーツは出来上がって着用してみて気に入らなかったら(もちろん不良品ではなくとも、なんとなく着心地が悪いというだけで)返金に応じるということです。
善意の払い戻しに対しては「ご納得できる商品をお勧め出来なくて申し訳ない」という謙虚な気持ちを
持つことが大事です。進物の払い戻しなら金券戻しですから「ぜひ、この金券でご納得できるいい商品を
お求め下さい」と、お客様の立場に立った気持ちをもつことが大切なことです。
それにしてもOさん(女子)は三国人の恫喝にも全く動じない強~~い人でした。挑戦的な目つきが余計に相手を怒らせたのかもしれませんが、一歩も引かない彼女は正義感強くて勇気がありますよ。
その後、三国人に対してどうなったかって・・・?
それはここでは述べられません。直接の担当マネジャーに引き継ぎました。というところまででこの話は
終了とさせていただきます。
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