○歌姫(Songstress)
彼女を知ったきっかけは、たまたまつけていたFMラジオの番組でしゃべっていた事でした。
デビュー曲は美しく物悲しいメロディと、まだ初々しく少しぶっきらぼうで飾り気のない少年のような声が合わさった歌でした。
彼女は次々とアルバムを出し、テレビに出始めました。
私はその歌と歌声のとりこになりました。
はじめてライブに行き、彼女が主演した映画も見に行きました。
彼女が、どんな生い立ちをしてきたかなど、どうでも良くて、ただ、その歌声と歌が好きでした。
やがて彼女は、彼女自身が選んだのか、プロデュースする側がさせたのかはともかく、歌の傾向が変わり、歌い方も変わっていきました。
時は進み続け人も変わっていきます。
いつまでも同じものなどありません。
私は変化について行けずに彼女の歌から離れていきました。
時は流れ、たまたま知った彼女の情報で、結婚して娘ができたが離婚した事や、目標を持って前向きに生きていると知り「元気でやっているな」と思いました。
やがて、更に時は流れて突然知ったのは、彼女が、大切にしていた小学生の娘を残して乳がんで命を落とした事でした。
「逝ってしまったのか…」と愕然とした事を覚えています。
彼女は亡くなってしまったけれど、その歌声は残っています。
今でも好きだった頃の彼女の歌を聞くと当時の事を思い出したり、新しい発見ができたり、勇気をもらえたりします。
だからいなくなってはいないのだと思います。
彼女は「ロックシンガーに男も女も無い」と言っていましたが、それでも私にとっては大切な“歌姫”です。
力強く素晴らしい歌声で多くの人を魅了する“歌姫”と呼ばれるシンガー達がいます。
まあ、男女同権の時代なので“歌姫”でも“歌王子”でもいいのですが、星の数ほどいる中で「この人の歌は特別!」と言えるシンガーが皆さんにもいらっしゃるかもしれません。
人それぞれに心に残る“歌姫”“歌王子”がいるように、人の心に何かを残せる仕事ができたらいいなと思っています。