カタスミ

『N』道尾秀介著

どの順番で読んでも自由。読みたい話から読んで
自分だけの物語体験をして下さい。
みたいな感じで紹介されていたので読んでみました。
以下ネタバレあり。



















冒頭に6つのお話の1P目が掲載されており、
興味のある話のページ数へ飛んでお話を読む。
また、お話ごとに上下逆さまになっており、
くるくるとひっくり返して読む事になる。
正直、個人的にはこのシステム合わなかった…
いちいち面倒くせぇなぁ…と。
どの話から読んでも良いし、ページ数あっちこっち飛ぶし、
上下くるくる回して読んでいるうちに、
どれだけ読んだかよく分からなくなり、
あれ、次で終わりか…?って気付くのがなんか嫌だった。
やっぱり本ってだんだんページ数が減っていって
もう少しで終わるなぁ…!と感じながら読むのが良いと思うの。
達成感っていうのですか?私だけ?
普段あんまりそんな事考えて読んでなかったけど
今回こういう読み方する事で感じた次第。

お話自体は全部で6話あり、
読む順番によって話の印象は変わってきますが
全部読んでしまったら大した差は無いように思う。
結局結論は全部一緒なのだから…
これが1を読んで2を読むのと
2を読んで1を読むので
全く結論が変わってしまうならすごい!ってなったかもだけど…
ただの短編集を適当な順番で読むだけの話だったように思った。

まぁ、私の場合、最初の物語が紹介されている順に読んだので
全く面白みもないのですが。
だいたい6話のうち、こっちでちらっと出てきた人が
別の話で主役だったり、こっちの謎が別の話で解決されたりと言う感じで
関連性はあるのでそれなりに楽しめはしました。
伊坂幸太郎の作風とちょっと似てるのか…?
私の読んだ順番は以下の通り。

●名のない毒液と花
中学の理科の女教師と
ペット探偵をはじめた新婚の夫とその相棒の男。
最初の依頼で見つけた犬、
女教師の教え子で最近素行が悪くなった男子生徒。
この辺が絡んでお話が進む。
最後誰かが死ぬのだが、
この段階で誰が死んだかは分からず話は終わる。
でもこの話だけ読んだ時は、犬が死んだのかな?と思っていた。

●落ちない魔球と鳥
名のない毒液と花でちらっと出てきた野球少年が主人公。
尊敬していた兄が自殺し、その犯人をあぶり出す為
来る日も来る日もフォークボールの練習をする少年。
ある日たまたまヨウムという鳥と出会う事で
自殺願望のある少女と知り合う事に。
漁師のニシキモさんに連れられて海へ向かい、
最後は空から降り注ぐ光の柱が花のように見えて…
というシーンで終わる。

●笑わない少女の死
名のない~に出てきた英語教師の話。
退職して海外旅行中に出会った幼い少女を
自分が追い詰めて殺してしまっていた
という結構絶望的なお話。
死んだ母の生まれ変わりである蝶を捕まえていた箱を
英語教師が興味本位で開けてしまい、
気付かぬうちに蝶を逃してしまっていて
それに気付いた少女が慌てて走り出した所を
運悪く車に轢かれて死んでしまう。
箱の中身は『ホリブル(恐ろしい)』だと少女は言っていた。
でも中身は蝶々だった。
よく分からないまま話は終わった。

●飛べない雄蜂の嘘
落ちない魔球に出てきたニシキモさんが出てくる話。
今より何年も前の話。
恋人からDVを受けていた女性がその恋人を殺してしまう。
たまたまそこに居合わせた錦茂(漢字も判明)さんは
自分もその男を殺しに来たと言い、
遺体を捨てる事を手伝う。
男ともみ合ったときに怪我をした錦茂さんは
しばらく女性の家に匿われるが
実は彼は泥棒で、たまたま泥棒に入った家で
DVが行われていた為仲裁に入ったのだった。
結局錦茂さんは警察に捕まるのだが、
話は現在に戻り、女性は恋人を殺した事はばれず
自分のやりたかった仕事も出来て、年老う。
昔の事を思いだしていると、最後に光の花を見つける。
どうもこの光の花があちこちのお話の核になってる模様。
Nの説明もこの話の中でされていたので
この話が中心軸なのかなぁ…と思う。

●消えない硝子の星
笑わない少女~のお話の少し前の話。
まだ少女の母親が生きている時の話。
在宅終末医療を担当する日本人のカズマ。
こちらのカズマ、名のない~にも登場。
少女が母親の命を救う為、海岸でウラン硝子のシーグラスを見つける話。
奇跡的に見つかり、カズマは神様を信じ、この話だけでは良い話なのだが、
笑わない少女を先に読んでしまった私はなんとも薄っぺらい話に見える。
結局少女は救われなかったし、神も仏も無いわなぁ…
カズマもケア後も連絡取れば良いのに…
結局知らない方が幸せなのかもしれんが…
この話で『ホリブル(恐ろしい)』は『ホーリーブルー』という蝶々の話だと分かる。
あの英語教師のリスニング能力がもう少し長けていたら
こんな間違いはしなかったのかもしれない。
でもあんな箱に入れてたら、いずれは逃げるか死ぬかしてたとは思う。
タイミングが悪かったのかなぁ…
あっちを読んでたら全て失ったステラのその後の精神状態まで心配になるわ。
でもこっち読んであっち読んだ方が絶望感は倍増したかも。

●眠らない刑事と犬
街で起こった夫婦の殺人事件を追う女刑事と
うさんくさいペット探偵が事件に関係する犬を探す話。
もちろんペット探偵は名のない~に出てきた相棒の方。
今回の話で名のない~で死んだのは犬では無くて理科教師の夫だと判明する。
う~ん、なんかやりきれねぇわ…
女刑事は自分の息子を犯人だと疑っていたのだが
犯人は殺された夫婦の息子だった。
女刑事とその息子は永遠に埋まらない溝が出来た訳だが
そこに光の花が降り注ぐのだった。救われねぇな…

読む順番によって、印象がガラッと変わったり、
受けるダメージが倍増しそうなお話はありましたが
結局読み終わったら話の解釈としては同じなので
結論が変わる事は無いように思うのだがどうだろう?
読む順番が変わる事で
結論の解釈が変わるのならすごいなぁと思ったかもしれないし
それを期待して読んでいた部分はある。
結局はだたの短編集だと思うので
凝った作りにしなくても、普通の本で良かったかなぁ…
上下逆にするのは本当に読むの面倒だった。
お話自体はそこまで悪くなかったが、
あんまり読後感良くないのが多いので、
もうちょっとハッピーエンドっぽいのもあってもよかったかなぁ。

星は3つ。
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