最近、PEファンドという言葉がたまに経済誌に登場するようになった。
Private Equityすなわち市場取引されていないプライベートな資産持分に対して出資してリターンを得ることを主な目的とするこのファンド事業は、着実に規模を拡大し続けており、日本を含め世界中の経済に影響を与え続けている。
特徴的なことは、彼らが投資先に対して経営メンバーを紹介したり、M&Aやデジタル化といった特定のテーマの支援を行うことで業績から高めていき、その結果としての株価の高まりをリターンの源泉としている考え方だ。そのため、メンバーには投資のプロに加えて、戦略コンサル出身者を揃えているようなことが多い。
カーライル・グループ、KKR、ベインキャピタル、ブラックストーン、アドバンテッジパートナーズ、インテグラル、ユニゾン・キャピタル…といった大手ファンドの名前を一度はニュースで目にしたことのある人は多いであろう。
そして日本銀行の2020/12のレポート((論文)わが国におけるプライベート・エクイティ・ファンドの可能性―アイデアとコミットメントのあるファイナンスへの期待― : 日本銀行 Bank of Japan)からすると、少なくとも日本における彼らの活動は大きく規模を増していく確率が高いと思われる。
彼らについてネットで調べて、概要の次には年収の高さや仕事のやりがいと言った情報がすぐに出てくる。インタビューも面白い。
しかし彼らの事業が持ちうる社会的なリスクを正面から語る記事が少ないと感じるのは私だけではないだろう。
PEファンドの仕組みは1970年代のアメリカには存在していたのだが、彼らの事業の問題点が現れた1990年前後に、世界の名だたる投資家がそのリスクを批判したのだ。
ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーによるその批判とは、彼らが投資先に対して最大限の借入を行わせていた危うさである。経営権を得て、会社自体を借入主体として元の株主たちから株式を買い集めさせたのだ。その比率はなんと概ね借入:資本=9:1であったらしい。
上手くいけばPEファンドは(ちょうど信用取引で何倍もレバレッジをかけたように)大きな利益を得るが、経営破綻すると失うのはその会社に投資したお金のみだ。そして1990年前後に、過度な借入で破綻した米国企業がいくつも出ていたらしい。(グリーンブラット投資法)
結論から言うと、めぼしい案件をみていて、今の日本のPEファンド活動はそのようなレバレッジをかけていなかった。もちろん借入は行わせているのだが、9:1のような危険な構成にはなっていない。
仮にこのリスクが今後も適正管理され、悪質な考えによる投資(つぶれてもファンドは出資分しかいたまないからレバレッジをかけて投資先にリスクをとらせる、というような投資)が出てこなければ、PEファンドは素晴らしい。
・働き先として、やりがいと高い報酬がある
・出資先企業の人間として、自力では考えられないような事業の飛躍的拡大を支えてくれる
・投資家として、リターンを得られる
今後もPEファンドの動向を見ていきたいと思う。
レポートバンク「日本のPEファンド分析2022」
: 彼らの取組みを、具体的な案件について時系列で調べるなどしているレポート。さらに情報を集めたい場合にどうぞ。