画家 田中恵子のブログ

画家 田中恵子の鎌倉七里ガ浜のアトリエから

「テンペラとは?」西欧絵画古典技法と私の技法について

2017年02月19日 | テンペラと油彩「絵画古典技法」

「洋梨の肖像」15×15cm

「テンペラとは?」

西欧絵画古典技法と私の技法について

この1ページを読むだけで、絵画技法の根本が全てわかる!

 

全ての絵の具の原料は、顔料と呼ばれる色の粉です。

その顔料を油で溶いたものが、油絵具、卵で溶いたものが、テンペラ絵の具です。

 

ルネサンス時代に油絵具が発明されましたが、それまでは、テンペラ絵の具が主流でした。

ボッティチェリの「春」や「ヴィーナスの誕生」はテンペラ絵の具による作品です。

ルネサンス時代の作品で油彩となっているものも、実はテンペラを併用している場合もある様です。

 

テンペラは不透明で速乾性、油絵具は透明で乾きが遅い特徴があり、

併用することによって、 より自由な表現が可能になります。

当然、当時の多くの画家が併用したと思われます。

当時の油絵具は自作、またはお弟子さんが師匠独自の調合で作ったわけですから、

今の油絵具と違って、乾きの比較的早い、緻密な描写も可能な調合であったと思われます。

レオナルド・ダ・ヴィンチは油彩を好んだようですね。

 

19世紀の産業革命により、油絵具は工業生産されるようになりました。

テンペラ絵の具は今でも画家が毎回自分で作ります。

私は白のみテンペラ絵の具を使用し、着色は市販の油絵の具を使用しています。

油絵具の油や、テンペラ絵の具の卵は、画面への接着の役割をしていて、転色剤と呼ばれます。

水彩絵の具の転色剤はアラビアゴム、アクリル絵の具の転色剤はアクリル樹脂です。

 

日本画では岩絵の具と言って日本独自の色の粉を使っています。

希少で高価なものも多く、転色剤は膠(にかわ)です。

 

西洋の顔料で特に高価だったのはラピスラズリー(青)で、

当時、金より高価でした。(現在もですよね? )

 

フレスコ画は壁画に使われるため、転色剤を使わずに描きます。

それは漆喰の壁が漆喰の機能を失わないため、また剥離を防ぐためです。

漆喰は湿度が高いと湿度を吸い、湿度が低いと湿度を放出します。

漆喰を部分的に塗り、水で溶いた顔料で、漆喰部分が乾かないうちに描き、

乾くと漆喰と顔料が一体になります。

部分的に計画的に描いていきます。

最終的にテンペラで加筆することもあったようです。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチはフレスコ画の表現力に満足できず(たぶん)、

湿気の多い場所の壁面に、油絵具で描いてしまったため、

「最期の晩餐」は完成して10年以内に剥離が始まったとか・・・。

修復を重ねて現在に至っています。

 

私が、なぜテンペラと油彩を使用し、

下地から古典技法に近い方法を用いているかというと、

その伝統的な技法こそが、私が描きたいものを描きたいように描ける唯一の技法であり、

実際に500年の時を超える堅牢さを持っているからです。

 

鎌倉伊織 URL http://www.kamakura-iori.net

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