▼僕がMINIのことが気になり出したのはもうずいぶん前です。そう、小学生のころだったと思います。40年以上も前ですね。
NHKの夕方に「少年ドラマシリーズ」という月~金での連続ドラマをやっていました。SF、ミステリー、冒険、青春、学校などさまざまなジャンルの1シリーズ二週間とかの放送だったと思います。
ほとんどはNHKの制作によるドラマだったんですが、年に何本か海外ドラマの中から少年少女向けのものを選んで放送している時がありました。その中の一本で、タイトルもストーリーもすっかりあっさり忘れてしまったんですが、舞台は確かオーストラリアだったような気がします。主人公の母親か誰か、大人の女性が赤い小さいクルマに乗ってその主人公に運転席から話しかけるシーンがあったんです。内容なんて全く記憶していませんが、その赤いクルマのことが印象に残っています。
「あ、ほんまにあるんや」
と。本当に存在するということを確認したわけです。つまり、その前にそのクルマのことを僕は知っていた。何で知っていたのかというと、ミニカーです。ダイキャストの小さなオモチャのクルマ。僕はミニカーが大好きで集めていました。
お店でもらえるカタログなども食い入るように見ていました。そのカタログの中に、ホンダのN360(1967-1972年)に似たクルマがあったんです。当時の我が家カーはそのN360でした。
ミニカーは実際に存在するクルマをミニカーにしている場合が多いのですが、そうでないものもけっこうありました。また昔ですからモデリングの質も技もそんなに良くない場合もあり、実車とはちょっと雰囲気が変わってしまっているミニカーもあったのです。それで僕はその小さなクルマを、ホンダのN360をモデルにした架空のクルマではないか?と思っていたのです。だって、外車のイメージはどうしてもアメ車のような大柄なクルマや流線型のスポーツカーを想像してしまいます。だから軽四輪みたいな小さいクルマは日本だけのものだと思っていたわけです。
それで、ドラマを見たときに「ほんまにある」と驚いたわけですね。今考えると、ホンダのN360の方がMINIのデザインを真似ていたわけで、大人たちは当時からN360のことを「プアマンズ・クーパー」とかって呼んでいたらしいですね。これは確か伊丹十三のエッセイ『女たちよ!』にも出てきます。
時代の流れでN360は姿を消しましたが、MINIはなんと2000年まで少しずつモデルチェンジをしながら、それでも外観・基本設計はほとんど変えずに製造が続けられました。子どもの頃から好きだったクルマ。程度の良い状態のものが入手できて乗れるというのは本当に幸せだなぁと思います。