風に吹かれてよろず屋ジョニー

猫とつくれ没とささやかな園芸etc.

かくれんぼ<鬼になる>

2015-03-16 01:52:08 | ss
「ねえ君ユピテルで生まれたんだってね」

話し掛けてきたのは1才上のドリスという少年だ。亜麻色のくせ毛に澄んだ黒色の瞳をしている。






「どんな所なの」

トールは急に辛くなった。家族のことを思い出すと腹が燃えるような痛さにみまわれた。涙目になりながらも久々に子供から話し掛けられた嬉しさにしぼりだすように答えた。

「みんなが互いのことを思いやる素晴らしい国だよ」

トールは少なからずユピテル人の誇りを持っていた。それが偽善なのかも知れないことを思い知らされ感情は複雑にバラバラになっていた。

「僕さ、ユピテルに行く事になったんだ」

ドリスは自慢げに言った。



…羨ましい。



「引取人はサトゥルヌスで展開している社長なんだぜ。飯にも金にも困らないし…」

続けるドリスの言葉を背景にしてトールの感情は背が燃えるように膨れ上がった。



どうしておまえが


なんでぼくじゃないんだ


ドリスなんか不幸になればいいんだ






自分のふがいなさに気づいた後にはやるせない気持ちでいっぱいだった。これはサトゥルヌス人がユピテルに抱いている感情なのだ。幼心には難しいことは理解出来ないが感情を悟ってしまった。






帰りたい。帰りたいよ。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かくれんぼ<こたえなければ見付からない>

2015-03-14 00:22:56 | ss
トールは身の上のことは話さなかった。


そもそも子供は孤児ばかりなため無神経に聞く者は少なかった。

「トールは何才?」

「5才」

「好きな食べ物は?」
「…りんご」

「嫌いな食べ物は?」
「たまご」

「好きな色は?」

「黄色」

「嫌いな色は?」

「…緑」

「どこで生まれたの」年長の子供がしまったと言う顔をした。聞いた幼子はこれっぽっちも悪気はなかった。続けてきこうとするので年長はコラ、と幼子の頭を軽く叩いた。

「それはきいちゃだめなの」

「なんで」

「トール困ってるだろ。人を困らせるのは良くないことだ。あやまりなさい」

「ごめんねトール」

「大丈夫だよ」
トールは少し悩んでいたが言うことにした。
「ユピテルだよ」

年長者は目の色を変えた。
「お前ユピテル人かよ…ここはサトゥルヌスだ。サトゥルヌスとユピテルは仲が悪いんだぞ知らないの」

トールはぼんやりした目で「知らなかった」と言った。

「ぼくはなんにも知らないんだ」


そんな自己中心的な自暴自棄を聞いたか聞かないか彼らはトールの前から姿を消していた。

トールは頭を掻きむしり自分の部屋に帰って行った。


それからというもの、トールはひとりで過ごすことが増えた。食事の時もひそひそと「ユピテルって恵まれてるのに…」と好奇の詮索があったがみんなが別視しているのに気づいてか、何も聞こえない振りをして黙々と食べていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かくれんぼ <世界の幕開け>

2015-03-11 22:29:29 | ss
程なく彼は警察に保護された。彼は身元について何も話さなかったため、児童保護施設――とはいってもほぼ孤児院――に送られることになった。


言葉では表現出来ないほどのショックだったのだ。彼はもはやしゃべることもままならず、見ず知らずの大人達が考えた最善の案に促されるままだった。
涙は涸れ果て虚ろな瞳は心を映しはしない。辛うじて食事と多少の会話はできたので孤児院に行くことになったのだ。

孤児院は町外れの協会の修道院だった。
木々が生い茂り強い風に、ごおおお、と唸りをあげていた。次第に雨は降りだし雷が鳴りはじめた。それは彼の心情を表すかのように激しく鈍く淋しく悲しげに。

大好きな森、大嫌いな森。

彼は考えることをやめていた。

人が行き交うことで草の生えない道を連れ添い人と歩く。細長いその道は分かれ道を迎えた。ここを右に曲がると教会のようだ。

彼は身柄を受け渡され修道院の僧侶と数人の孤児達に紹介された。

しかし彼は名前が言えなかった。
困った修道士は、彼をトールと呼ぶことにした。

急に冷え込んせいか一人の子供がくしゃみをした。


雷雨はいっそう激しさを増していった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★怪盗J

2015-03-11 02:56:11 | rkgk

だだのトレス。最後まで作れるきがしない。鈴木絵のアニメ塗り難し
ただ、最近はセピア調から少し抜けてくれたので色がわかりやすくなったのはうれしい。
絵は昔の方が好きですが↑▽↑ゴメンナサイ、アレイ怖い。
コマ割りが分かりやすくなったような気がする。

一応作れたけど
もし消されたら本望というか名誉です。
イメージダウンになってたらショック…普通ですね。
イメージ越えになるわけありません!!
20150426

反省会
今見るといろいろ雑だな、今の絵の方がもっと雑なんだが。
もともと縮小するつもりだったから塗りつぶし多用した。
線を二重にしたためぶっとくなった。
中の大きい絵見ながら描けばよかった。
女性陣の乳揺れ動画作る野望もあったが半年以上かかって12秒なのでww
私には無理なようじゃ。

新刊のブラ様は穿いてないよね。アンナさんで隠してるんだよね、

20150812

20160703

なにかの関係でエンコ落ちになった画質悪いのgifアルね
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かくれんぼ<永遠のさよなら>

2015-03-11 02:17:00 | ss
隣国は裕福で幸せな国だった。
まるでユートピアとも思える、どの国も羨む恵まれた社会が成り立っていた。

しかし残念ながらも光は影を落とす。人々の心の闇は渦をまき誰も巻き込もうとさせない。
人の幸せを心から願い、自分の渦には触れさせようとしない美しい精神を持つ人々だった。
だが、その渦は心から流れでてしまうと手に負えなくなってしまう。
渦は光さえ飲み込む。
ここにもひとつの家族がちょっとしたきっかけで偽善の違和感を漂わせていた。
不穏な雰囲気を引きつれてタイヤは音を緩め静かに車は止まった。
山の上の人気のない公園。家族は回りを気にせず遊べる所を探していたのだろう。
仲の悪い空気など感じさせない程の仲むつまじい親子だった。

子供の兄弟はかくれんぼをはじめた。夫婦は山の上からの景色を眺めていた。
兄は隠れる側で木陰に隠れていたが、不思議な風が吹き思わず山林へ入って行った。
鬱蒼と茂る木の葉をかわしていた。
気付くとそこ一面に水面花の咲き誇る水溜まりに出くわした。
彼は見たこともない世界を体感し、声もでずただただ魅入るばかりだった。
水は緩やかに流れ水中花は揺れそよ風に水面がさざ波たつ。
兄はこの先に行きたい衝動に駆られていた。
「もういいかい」
兄はこの世界に夢中になっていてまさか妖精に話し掛けられたのかとビックリした。

ふと我に帰りかくれんぼをしていた事を思い出す。
「もういいかい!」
弟の声はききせまるものがあった。
兄が隠れここにくる間ずっと探していたのだろう。
「もういい…」
言いかけたところで弟が心配になった。
弟の足ではここまで来るのは難しい。兄はもときた道を戻ろうとした。
「ゆっくりしてきなよ」そんな声がきこえた気がしたが急いで引き換えした。



「もういいよ」
そうつぶやいたのは母だった。

「お兄ちゃんどこにもいないよわああん」

「お兄ちゃんどこにもいないね、いないね」
「もういいんだよ」

「ママ?」

母は兄に絶望していた。夢物語を語る兄にうんざりしていたのだ。
何をやらせても物覚えがよく、手伝いもよくする素晴らしい兄。
自分が産んだ子なのに父にも似ておらず。ずっと胸につかえたままここまできたのだ。



「いいのか」
父が言った。

「もう決めてたことよ捜索願いは出すわ。でもあの子はきっと帰って来ないわ!」

「わかった」

「にーちゃんは?」
弟は青ざめた顔をして涙と鼻水で顔を濡らしていた。
母は弟に抱き着くと、抱え込み何も言えわずに車に駆け込んだ。


遠くからなので何となくしか聞き取れなかったが
兄は何が起こったのか呆然と立ち尽くした。
とっさに足が車の後を追っていた。涙と鼻水で呼吸困難になりながら。
とうとうおいつけないまま兄は転んだまま動けなくなった。









捨てられたんだ。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする