風に吹かれてよろず屋ジョニー

猫とつくれ没とささやかな園芸etc.

かくれんぼ<みつかる>

2015-04-30 21:28:18 | ss
どういう事だろう


ドリスが乗った船が沈没したらしい。
海洋の真ん中で救助が間に合わず生存者なし…

僕が密かに嫌って呪っていたから?
でも本当にそうなるなんて思ってもいなかった。
あんなに良くしてくれもらったのに後悔と罪悪感でいっぱいだ。

僕はまた抜け殻になった。
日々を淡々と過ごしていたそんなある日、
僕に里親の話が舞い込んだ。ユピテルの人達だという。

何度か会いに来て話をした。40代ぐらいの落ち着いた夫婦だった。
「こんにちは」

「僕は大切なものをなくしました」

突然本音を言ってしまった。それは思いもしなかったことだ。

「私たちも大切なものを失ったのよ」

そう夫婦の女性は言った。場に不思議な同調と共感の雰囲気に包まれた。ただの慰めあい、傷のなめあいなのかも知れない。でも僕はそれが嫌じゃないんだ。

僕はその夫婦に引き取られることになった。こうしてサトゥルヌスで過ごした短い期間は終わりユピテルへ行くことになる。

でも僕はここで過ごした日々を一生忘れないと思う。
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晴れが続くのでお茶を作ってみた

2015-04-27 11:49:45 | 雑記
伝聞自己流だけど






結果:まったりとした味で結構いける
         ↓
   舌の付け根に苦味が走る
         ↓
   どこで間違ったのだろう?

反省:揉みすぎた
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<探求>

2015-04-21 13:13:22 | ss
自分が求めていたのはこれかもしれない。

感情をむき出しに出来るところ。


別に居場所がなかったわけじゃないけど常に違和感を感じていた。
自分の思い通りに出来ないもどかしさ、今だって何でも出来るわけじゃないけど自由だ。
でも僕は何もない人の苦しみはこれっぽっちも理解できていないのかもしれない。

でもここで相手の事を完全には理解出来ない事を知った。
相手の事を深く理解する必要はないらしい。それだけで疲れない。

相手を理解するのは体感的なしばいたりだとかつかみ合いだとかのケンカに
収拾のつかないときの箒や水の天誅とかいった具合だ。

僕はこんな事は経験したことがなかった。気分は悪い、悪いけど楽しい。
戦慄と言うような自然の中に奮い立つ狼のような気分だ。


理性は利性で教えてくれる。
家畜のようだがユピテルのような外に出られない家畜とは違う。
こんなに直感的に考えられたのはここにきてからだ。



いつも精一杯生きているからぐっすり寝られる。
安心出来る場所じゃないけど。夜中にさ迷う事はない。


トールの心の穴は日々のケンカによる傷で埋まっていく。

これ癌じゃないかって、でも僕はこれをどこかで知っていた気がするんだ。
見聞きはしていたかも知れないけどもっと前から知っていたような、、


命の進化、命の記憶。


知らないのに知っていたような懐かしい匂い。



そんな充実した日々の中ドリスはユピテルに旅立って行った。
里親の元へ行けば二度と会えない事になるが何故かそんな気がしなかった。
縁起でもないって?帰ってくるとかじゃなくて、、、。


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かくれんぼ<ここだよ>

2015-04-19 22:42:41 | ss
「石投げしないのか」
ドリスはしゃがんだトールを尻目に水切りを続けていた。



とてもそんな気分じゃないと首を振る。

僕は…

「ぼ…くは…す…てられ…た…」

唐突に涙が溢れて認めたくない事を絞り出していた。

「僕は親に奉公に出されたけど奉公先で虐待にあって孤児院に引き取られたんだよ」

僕の話しは聞いてくれないの…

「聞いてるさ、僕は出来た人間じゃないから受け止めることは出来ない。同じ様なこと言って紛らわすしかない。気持ちの問題は結局は自分でなんとかするしかないんだ。だから石を投げてるんだよ。」

石は激しく跳ね軌跡を描きいずれは水中に埋もれてしまう。

「傷はなかったことにはならないけどいずれ痛みは鈍る。時々疼くけどね」

優しい言葉をかけて欲しいだろうけど君は一人だ。だから自分でどうするか決めなきゃならないんだよ。

「とは言ってもまだ僕たちは子供だからほとんどの事は大人が決めるけどね。肝心な事はやっぱ自分で決めなきゃダメなんだよ。」

これはマグノリアの役目なんだけどお前ユピテル人だって言ったろ。
実はユピテルから子供を捨てに来る親は少なくないんだ。何故かは知らないけど。
だから自分だけ不幸だなんて思っちゃダメだよ。

「御託は聞き飽きたよ!」

トールは突然立ち上がり石を投げた。物凄い勢いで近くの川辺に波紋を広げた。

「はは、その意気だよ」

トールとドリスは日暮まで石投げした。
トールはふて腐れた顔でドリスの袖をつかんでドリスに連れられて帰った。


それからと言うものトールは食事は万生で軽蔑の言葉には口は悪く言い返す様になり、時にはつかみ合い取っ組み合いのケンカになり、年長子供に並んで箒でしばかれた。周りの子供からは恐れられるようになった。

それを修道士達は暖かく見守った。



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色男ショタ

2015-04-18 02:25:39 | rkgk




ユピテルさん
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<出口のないトンネル星の赤子>

2015-04-15 01:33:37 | ss
細い細い糸を手繰り寄せていた。
いつしかその糸は自分の方へ留まらなくなっていつしか辿りはじめた。

その先へ行きたかった。光に包まれた温かい場所から離れて、とても空しくて切なくとも。






いや僕は疲れていた?理想だった、完璧な自分は疲れたのか?

僕は光を辿っていたつもりだった。周りは光に溢れていた。安心安全な世界。その幻想的な霧の中に鋭く透明で冷たい筋があった。

その先に明けない夜と出口のない洞窟はあった。明けない夜は無い、とは言うけれど、それは今の僕にはなしのつぶてだ。

本当に求めていたのは出口のないトンネルだったかもしれない。泣いたり喚いたり汚い言葉を吐けるところ。出口のあるトンネルでも自分で進まなければ光は見えない。暗い道を行く。嫌いだ嫌だ屑だああなんて美しいいんだろう。土花<ごみ>から全て生まれる。透明な道は土の固まりでとても汚い。それを自分の手で掘り進む。爪にたまる黒い濁り。お母さんに怒られるなあ。でも今はそんな心配はないから。爪と指の間に痛みが走る。小さな小さな煙色の透明の石。他人にとってどんなにつまらなくとも大切な石。
透明の石は煌めく雲母の反射を集め集光し紡いでいく。放射線を浴び色とりどりに輝くという。これはやっと始まりの石なんだ。

大切な石はみんなに知られちゃいけない。僕は爪の間の小石をほじり捨てもと来た道を戻った。大きく育て僕が死んでなお。生まれ変わって逢うなら君は他人の手に輝き僕は圧した雲母でほくそ笑みたいな。



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かくれんぼ<気持ちの行方>

2015-04-14 15:15:16 | ss
それからトールの側にはドリスがいることが増えた。


ドリスは快活だった。他の孤児とも仲が良かったし、リーダー的存在ではないものの一目を置かれていた。
そんな彼を通して全くというわけではないけれどトールへの差別は減った。

だか彼らは多少孤立していた。
それは自由を意味していた。

朝の集会の後、ドリスが話し掛けてきた。

「なあ、森を抜けた向こうに川があるんだけど石投げしに行こうよ」

トールは独りでは暇だし、いいよ、とついていった。薄らぐ雲は凍てつく太陽から彼らを守るように優しかった。
そんな雲が大好きなはずだった。

森は木漏れ日を地面にばらまき、照り返す葉の光は蛍石の様だった。
脆い硝子の破片のようにザリザリと

トールの心臓にズキズキと暗雲は立ち込める。
嫌いだ、ドリスも森も雲も! 大嫌いだ!!


トールの心は土砂降りで歩く足は鈍り始めた。

「僕は森が嫌いなんだ」

「僕も森は嫌いだよ、生まれだ時から山林にいてさ、鬱陶しいし息は詰まるし。でもお陰で森は庭みたいなものだけど。」

「僕にはそんな風には思えないよ」
トールの足は止まった。
ドリスは足音がしないのに気付いて振り向くと困ったように笑うトールがいた。

ああ…これが…
ドリスは悟ったように遠い所を見た。これが僕の往くところなんだと。

ドリスはトールの手を取ると駆け出した。




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