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冬のソナタに恋をして

再会




ユジンは外島の地を踏みしめていた。ソウルから外島に車で半日以上かかっていたため、日は高々と上って海がキラキラと輝いていた。ユジンはバッグから不可能な家の雑誌の切り抜き写真を取り出すと、住所を確認して歩き始めた。


今日のユジンは水色のコートを着ており、コートが春の風を受けてふんわりと揺れていた。お目当ての場所までは高台を登らなければならず、鳥がさえずる森の中をゆっくりと歩き始めた。木立の間からは木漏れ日がキラキラと落ちてくる。ユジンは久しぶりに外に出て心が癒されるのを感じた。不可能な家をこの目で見れると思うと嬉しくてたまらなかったし、心の故郷に帰ってきたような安らぎも感じていた。



一方でチュンサンはそろそろ迎えが来るだろうと外にでて花壇の花に触れていた。するとどこからか

「好き花は?」

「白いバラよ」

と聞く自分とユジンの声が聞こえてきた。チュンサンはだれもいない方向に顔を向けて、ユジンの声まで感じるなんてどうしたんだろう、と考えていた。そのあと家の前に座り込んで、見えない目で家を見ながらユジンに語り掛けた。

「ねぇ、気に入った?」


まだチュンサンがミニョンの記憶しかなかったころ、初めてドラゴンバレーにユジンと視察に出かけた。そのとき、ユジンは降りしきる雪の中でこう言った。

「愛する人の心が一番いい家ですから」

あのときのユジンの言葉通り心の家を建てられたのだ。チュンサンは満足げに微笑むのだった。




ユジンが高台まで登ると、不可能な家が瞳に飛び込んできた。いつかチュンサンと行った東海を思い出す。あの時はとても悲しい思いをしたけれど、今は心安らかに家と海を眺めることができる。ユジンはにっこりと微笑むと、うっそうとした木におおわれた道を歩き始めた。新緑が目にまぶしくて幸せな気分になった。柔らかな春の風を頬に受けて歩き続けた。

その時、チュンサンは管理人に手を取られ、カートに乗って港に向かおうとしていた。入れ違いに、ユジンが不可能な家の前に立ち、半開きの門から中に入った。そしてそっと土間に上がると内部の一つ一つを感慨深げに見つめて歩き始めた。




『やっぱりこの家は不可能の家だわ』ユジンは確信していた。そして南向きのテラスに来ると、壁に駆けられた古城のジグソーパズルに目を止めた。1ピースだけ床に落ちてしまっている。それはミニョンという名のチュンサンに再会したときと同じ状況だった。やはり、チュンサンがパズルの一欠片を落としてしまい、それを偶然拾ったのだった。ユジンはあの時のようにそっと最後のピースをはめながら、感慨深げに思い出した。彼女が最後のピースをはめた瞬間にミニョンが部屋に入ってきて、ユジンに微笑んだ。チュンサンにそっくりな彼を見て雷に打たれたようにショックを受けたあの時を。

それから波の音に誘われて、テラスに立ってしばらく東海を眺めるのだった。

その時、チュンサンが忘れものに気が付いて室内に戻ってきた。管理人は自分が取りに行くと言ったが、チュンサンはそれを制して、とても静かにテラスに入ってきたのだった。いつものように歩数を数えながらテラスを歩いていると、不意に前方のテーブルがガタンと音を立てた。誰かがいるのだ。チュンサンは驚いて言った。


「どなたですか?」

ユジンはその声に驚きふり向いた。そしてそこにいるのはチュンサンだと気が付いた。チュンサンの目はユジンを見ていたが、同時に何も見ていないのだった。ユジンは一瞬で彼の目が見えなくなったのだと気が付いた。そして、激しいショックを受けて凍りついた。『神様はなぜ彼にこんな試練ばかりあたえるのか』と恨みたくなった。しかしすぐにただただチュンサンが生きていてくれたこと、生きて再び会えたことに神様に感謝するのだった。うれしくてうれしくて、感慨深すぎて言葉にできなくて、彼を黙って見つめていた。


するとチュンサンはおずおずともう一度

「どなたですか?」

と問いかけた。しかし、ユジンはこみ上げてくる感情を抑えきれず何も言えなくなり、目に涙を浮かべて立ち尽くしていた。

チュンサンは何も言わない誰かに少し不安を感じていた。その時だった。さわやかに吹く春の海風が、待ち焦がれていた懐かしい香りを運んできた。夢にまで見たユジンの髪の香りだった。甘くて優しいあの香り、、、。チュンサンはまさかと思いながら恐る恐る口を開いた。

「ユジンなの?」

すると、ユジンも静かに返した。


「チュンサンなの?」

ユジンの目からも涙があふれ始め、言葉にならずにただ立ち尽くしていた。

「ユジナ?」


チュンサンはもう一度その愛しい名をつぶやくと両目からほろほろと涙を流した。二人は抱き合うこともせず、手を取り合うこともせず、ただ見つめあって涙を流し合い続けるのだった。そんな2人を祝福するように、麗らかな日差しと柔らかな春風が吹き抜けていった。
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