じいちゃんのボケ

昨日、お店を閉めてからモスバーガーに行きました。

というのも、去年のクリスマスイヴにモスバーガーのモスチキンを予約していたんですが、
我がママが予約の時間に行ったら、人がいっぱい・・・・。

結局１時間以上待たされたそうです。（早くから来てた友達は、２時間近く待たされたみたい）

ほんで先日、そのお詫びというか、モスから５００円割引券が送ってきました。
こんな誘いに弱い我がママ。
さっそく昼間またチキンを予約してきて、夕飯に並べるから取りに行ってこい・・・だと！
まぁ僕もモスチキン大好きだから行きましたよ。


予約してあるんだしドライヴスルーから貰えばいいやって思って、ドライヴスルーのマイクに向かって
「あの～、チキンを予約してたんですけどぉ～」って言ったら、

「あっ、ハイ承っております。奥様から”熱い方がイイんで、取りに来てから揚げて下さい”と言われております。少々お待ち下さい。お車前へど～ぞ！」

あっ、そうなの？待つんかい。
でもモスも思ったろうなぁ（わがままな割引客だな）って・・・・。
なんて思いながら車を店の前に移動して、なにげなく店内を眺めました。

そしたら、



「あっ、菊池のじいちゃんがモスバーガー食いよるっ！？」　



僕は思わず叫びました。
菊池のじいちゃんとは、僕のオヤジ方のじいちゃんで、もうすでに亡くなっています。
でも店内でハンバーガーにかぶりついてるじいちゃんが、その菊池のじいちゃんにそっくりだったんです。


よく見ると、もちろん別人だったんですが、


菊池のじいちゃんで、・・・・・想い出しました・・・。　




じいちゃんは、たしか９２才で亡くなりました。
その時僕は高校生だったかなぁ・・・。

じいちゃんは、むかしはけっこう「元気もん」だったらしいですが、僕の知ってるじいちゃんはもう耳が少し遠かったこともあり、穏和で優しいじいちゃんでした。

小学校の頃、僕のコマ遊びのコマは全部じいちゃんが作ってくれてました。
コマの芯を真っ赤になるまで焼いて、コマにジューッと突き刺して、カナヅチでトントン叩く・・・。
芯がずれてると、コマがうまく回りません。

じいちゃんのコマは、（その頃”うなってる”と表現してましたけど）回すと微動だにせず回り続け、じいちゃんはまさにコマの職人でした。
コマを回す縄もじいちゃんが麻で編んでくれました。
縄の最後の部分は、止まりそうになったコマに勢いをつける為に叩く箇所なんで、馬のしっぽみたいに長～く作ってくれました。
この馬のしっぽで僕は何度となく町内のコマ回しでチャンピオンになりました。


僕を見ると、いつもニコっと笑って「男は外で元気に遊べよ～！家に閉じこもっとったら、ロクなことはなかゾ。近所から文句言われるぐらい暴れてけ～」なんて言いながら、２０円くれました。

まあ、僕はじいちゃんの期待通りに「近所から文句言われる悪ガキ」に成長しましたが・・・。

でも、そんなじいちゃんから一度だけビンタをされたことがあります。

当時、じいちゃんの跡を継いでオヤジが自動車整備工場をやってたんですが、
僕はその工場にあったお客様預かりの車を勝手に運転して（といっても２～３ｍですが）
前に止めてあったトラックにぶつけてボディーが凹んでしまいました。
ちょうど、そこに居たじいちゃんに現行犯で見つかってしまい、


「お前は、商売もんになんばすっとかぁ～、バカモンがぁ～」　

って言いながら、往復ビンタされました。
いつも優しいじいちゃんの豹変ぶりにびっくして、僕は泣くことも忘れてポカンとしてたのを覚えています。


そんなじいちゃんも、ますます耳が遠くなって人とあまり話すこともなく、
一日中工場の横のイスに座ってひなたぼっこするのが日課になっていました。

とんと寡黙になったじいちゃんですが、年に何回か親戚が集まって飲んでると、
それまで黙って座ってたじいちゃんが急に

「お前ら、オレの悪口ば言いよりゃ～せんか！」　

なんて怒り出したり、・・・・・そう”ボケ”が始まっていました。



そんなある日何だったか忘れたんですが、とにかくお客様が来てみんなかしこまった席が開かれた時のことです。

お客様とうちの親戚が対面で座り、じいちゃんは家長ですから一番の上座に座りました。
お客様とは初対面でなんとなく固い雰囲気が流れる中、親戚の子供達が騒ぎ出したんで消してあったテレビを点けたら、じいちゃんがテレビを見ながら突然大きな声で、


「あ～、こやつはうちに遊びに来たことがあるね～、誰だったかいなぁ～？」　


って言い放ちました。みんなびっくりしてテレビを振り返ったら、



・・・・・そこに写っていたのは、当時のソ連の首長「ブレジネフ書記長」だったんです。　


それを見たとたん、全員が大笑い・・・・・。
「じいちゃんはもうだいぶボケてまして・・・。」なんてばあちゃんが言ってましたが、場が和んでやっと楽しい宴会が始まりました。


でも、その時僕は見たんです。
テレビの横に座ってた僕にじいちゃんが小さくウインクしたのを・・・。


（えっ、じいちゃんはボケてないんじゃ～？）

と思ったんですが、その後じいちゃんはまた元の寡黙なじいちゃんに戻ってしまいました。　


それから数年後、大往生で天国に旅立っていったじいちゃんは、あの宴会の時ほんとにボケててあのセリフを言ったのか？
今となっては確かめようもありませんが、僕はじいちゃんは文字通りわざとボケたんじゃないかと思っています。


当時の僕がもう少しツッコミの腕が達者だったら、せっかくボケたじいちゃんに、こうツっこんだんですが・・・・。



『じいちゃんもボケてきたねぇ～。だいぶ記憶がブレジネフ・・・・。』　



せっかく場が和んだんだから、言わなかったほうが良かったという説もありますが・・・。　　







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