今回は「印象派の長老」であり、芸術家たちの良き指導者でもあったカミーユ・ピサロをご紹介します。印象派の画家として知られるピサロは、その長い画歴の中で初期はコローやミレーたちの影響から始まり、印象派を経て点描を使った新印象派へと変化を遂げていきました。ピサロ芸術の大きな特徴は誇張や美化をせずに、ありのままを素直に表現した点にあると言えます。
「ポントワーズの花咲く菜園、春」1877年 オルセー美術館蔵
口語短歌
「儚げな 菜園の木々 白い花 構図の調和 優れて綺麗」

本作は、菜園の木々を描いた作品である。儚げな白い花が中央に向かって山のように連なる構図は、画面に安定と力強さを感じさせる。丘の上の民家の風景が自然と融合して美しい。
この作品が制作された1870~80年代当時、ピサロはセザンヌと一緒にこのポントワーズに滞在し、二人イーゼルを並べて制作していました。二人はパリの画塾アカデミー・シュイスで出会いました。セザンヌはピサロを通じて印象派の画家たちと知り合い印象派の手法を伝授されたのです。人付き合いが苦手なセザンヌにとってピサロは良き師であり友人でした。
「赤い屋根、村のはずれ、冬」1877年 オルセー美術館蔵
口語短歌
「白い壁 印象的な 赤い屋根 光の移ろい 鮮やかな色彩」

冬枯れした果樹園の木々の間から一群の家屋が見えます。
白い壁に赤い屋根瓦が印象的な作品です。屋根と土の赤と地面や遠景の丘陵の緑が補色となってよりこの絵を印象付けています。光の移ろいと鮮やかな色彩を重視した印象派ですが、この頃の作品はピサロ自身セザンヌと互いに影響し合っていた時期でもあることから複雑な画面構成や空間構成に関心が向いていたらしく、印象派とセザンヌ芸術の良いとこ取りをした魅力的な作品です。
「帽子を被った農家の若い娘」1881年 ワシントン ナショナル・ギャラリー蔵
口語短歌
「こぼれ日と 草の緑が 調和して 差込む光 優しいタッチ」

1880年代、ピサロは風景画よりも多くの人物画を残しています。
この作品も理想化することなく自然主義的な表現でピサロ特有の優しい色使いで描かれ、少女の顔に差し込む光や優しい表情、背景の木漏れ日が差す草の緑が調和した穏やかな作品です。
「モンマルトル大通り 冬の朝」1897年 ニューヨーク メトロポリタン美術館蔵
口語短歌
「パリの街 大改造で 近代化 光あふれる 近代都市へ」

ピサロはこのモンマルトル大通りを見下ろすホテルの一室から様々な季節や時間で14枚も描いています。秋の夕暮れ前でしょうか。行きかう馬車や人々の雑踏や会話が聞こえて来そうな感じがします。パリは当時いわゆるナポレオン三世の第2帝政期、セーヌ県知事だったジョルジュ・オスマンによるパリ改造計画(1853~70年)によって大変貌を遂げました。パリと言えば花の都、世界屈指の美しい街として知られていて今では想像もつきませんが、それまでは細い道ばかりで風通しが悪く、不衛生で病気が蔓延する劣悪な街でした。19世紀のこの大改造によってパリの街は道路が拡張され、光あふれる近代都市へと生まれ変わったのです。こうした街の近代化をピサロは大いに称賛し、その象徴である大通りとそこに行きかう人々や馬車などの喧騒を好んで描きました。
参照
https://art-whitecanvas.com/pissarro-works/
「2021年軽井沢レイクガーデンに咲いた薔薇たち」
「アライブ」2021年8月7日撮影
