Canaletto(カナレット)の描くベニス
作者のカナレットは、18世紀イタリアを代表する稀代の景観画家(風景画家)。
再現性の高い圧倒的な写実性と輝きを帯びた繊細な色彩、絶妙に対比された明暗と光の描写、そして大気性を存分に感じさせる雄大で開放的な景観表現とそれを支える幾何学的な遠近法で当代随一(最高)の景観画家として君臨。
傑出した出来栄えを示す景観図(ヴェドゥータ)作品と画家の名声はイタリアのみならず、英国を始めとした諸外国まで轟いていた。
故郷ヴェネツィアやローマ、後年に滞在した英国の景観を描いた作品が良く知られているが、奇想画(カプリッチョ)と呼ばれる空想(想像)上で構成された都市景観図作品でも優れた作品を残している。本名はジョヴァンニ・アントニオ・カナル。1697年、劇場の舞台背景画家であった父ベルナルドの息子として生を受け、父の手伝いをおこないながら絵画を学び始める。
1715年にローマへ移住し、同地で装飾画家として働きながらパンニーニ、ウィッテルなどの影響を受ける。1720年頃から景観図を手がけ始め、当初はカルレヴァーリスやM・リッチの影響を色濃く残しながら、英国の顧客向けに明暗対比の大きな作品を制作、次第に名声を高めてゆく。
1730年代に入りカナレット独自の雄大な景観表現を確立、最高の景観画家としての地位を確固たるものとした。その後、英国有数の美術収集家ジョゼフ・スミス氏との交友を経て、1746年から約10年間ロンドンに滞在、同地の景観図を多数制作した。
1756年、故郷ヴェネツィアへ帰郷。晩年期となる1763年にはヴェネツィア美術アカデミーの会員となった。1768年、同地で死去。カナレットはジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロと共にヴェネツィア絵画の栄華と栄光を欧州中へ知らしめた同時代のイタリアで傑出した存在の画家であり、英国ロマン主義を代表する画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの様式形成にも大きな影響を与えた。なお同時代を代表する景観画家ベルナルド・ベロットは画家の甥(かつ弟子)としても知られている。