恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

小説を検索しやすくするためインデックスを作りました

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七夕〜その3《子供時代の思い出》

2016-07-09 06:26:15 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

今年は七夕のお話書けるかな…と思い、書き始めたものの。

何しろ取り掛かりが遅かった。

思いついたのが7月入ってから。

「七夕までに書ければいいや」と暢気に構えていたら、パソコンの機嫌が悪くなるわ、雑事が入るわ。

言い訳がましいけど、なんとか七夕当日に間に合ったので、許してね。


さて、七夕のお話で以前書いたのは『七夕』in〈吉祥寺恋色デイズ〉


恋人同士の譲二さんとヒロインのお話でした。

今回は恋人になる前の二人の話。

だから、ラブラブのシーンというのは特にないのですが、子供時代も挿入して作ってみました。

その2より続き


☆☆☆☆☆

七夕〜その3《子供時代の思い出》

〈譲二〉
百花「じーじは何を書いたの? 見せて!」

譲二「俺は…まだ書いてねぇ…」


さっき黒船で『成績があがりますように』と短冊に書いたけど、それが本心からの願いかというとちょっと違う気がした。


百花「百花も書いてもいい?」


百花ちゃんは食べ終わったサンドイッチのラップをくしゃっと丸めて言った。


(黒船のマスターは短冊をたくさん吊るしたいみたいだったよな)


譲二「いいよ。その前に手を拭けよ」


百花ちゃんからラップを受け取ると紙袋に入れ、そこに入っていたナプキンを手渡した。


百花「ありがとう、じーじ」

譲二「今、書くものも出してやるから…」


筆箱からボールペンを出して百花ちゃんに渡す。

百花ちゃんは迷うことなく短冊に願いごとを書き始めた。


『じーじのおよめさんになれますように  ももか』


譲二「ちょっ! お前! 何てこと書くんだよ!」

百花「百花の一番のお願いごとなんだもん」


百花ちゃんはキラキラした瞳で俺を見つめて言った。

ひと言文句を言ってやろうと思ったのに、そんな純粋な瞳で見つめられて、何も言えなくなってしまった。


(「じーじ」って書いてあっても、マスターには誰のことかわからないからまぁいいか)


百花「ねぇ、じーじも書いてよ。お願いごと」

譲二「俺はもういいよ…」

百花「じーじは百花とずっと一緒にいたくないの?」

譲二「え?」

百花「百花はずっと一緒にいたいよ。だから、大きくなっても一緒にいられるようにじーじのお嫁さんになりたいの」

譲二「そっか…」


(こいつはまだ小さいもんな…。『お嫁さんになる』っていうのがどういうことかわかってないんだ)


百花「ねぇ、ねえ、じーじは百花と一緒にいたくないの?」

譲二「そうだな…。ちびと一緒にいるのも悪くないかもしれないな」

百花「やったー!」


百花ちゃんは短冊を持ったままぴょんぴょん飛び上がった。


譲二「ちょ、なんでそんなに喜んでるんだよ」

百花「だって、じーじも百花とずっと一緒にいたいって言ったもん」

譲二「どうしてそうなるんだよ」


俺はしかめっ面で俺の周りを飛び回る百花ちゃんを眺めていた。



今だからこそ、白状しよう。

嬉しそうな百花ちゃんをみて、俺はまんざらでもなかった。




あのあと、百花ちゃんにせがまれるまま、渋々『おひめさまとけっこんします じーじ』と短冊に書いたっけ。

あの頃の百花ちゃんは、短冊に書いて笹に吊れば願いごとは必ず叶うと信じていた。



その短冊は翌日黒船の笹飾りに吊るしに行った。

マスターには、『近所のガキが書きたいっていうから書かせてやった』と言った。

マスターは…、ただニコニコと笑っただけだったが…今考えると薄々バレていたかもしれない…。


これが小さい頃の百花ちゃんとの七夕の唯一の思い出だ。



あれからしばらくして、百花ちゃんは遠くへ引っ越してしまった。

 

その4へつづく


七夕〜その2《子供時代の思い出》

2016-07-08 06:52:14 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

今年は七夕のお話書けるかな…と思い、書き始めたものの。

何しろ取り掛かりが遅かった。

思いついたのが7月入ってから。

「七夕までに書ければいいや」と暢気に構えていたら、パソコンの機嫌が悪くなるわ、雑事が入るわ。

言い訳がましいけど、なんとか七夕当日に間に合ったので、許してね。


さて、七夕のお話で以前書いたのは『七夕』in〈吉祥寺恋色デイズ〉


恋人同士の譲二さんとヒロインのお話でした。

今回は恋人になる前の二人の話。

だから、ラブラブのシーンというのは特にないのですが、子供時代も挿入して作ってみました。

その1より続き

☆☆☆☆☆

七夕〜その2《子供時代の思い出》

〈譲二〉
カランカラン~♪

チャイムの音をさせて黒船の店内に入ると、涼しげな笹が飾られている。


マスター「いらっしゃい、譲二くん」

譲二「こんちは…。これ、どうしたんですか?」

マスター「明日は七夕だからね。たまには季節の行事をやってみたくなってね」


色とりどりの短冊がすでに何枚か飾ってある。

その一枚を手にとって眺めた。

知らない人の名前が書いてある。


譲二「この短冊は?」

マスター「お客さんに書いてもらったんだよ。よかったら、譲二くんも書いてくれるかい?」

譲二「え? 俺が?」

マスター「このままだとちょっと寂しいからね」


マスターは眼鏡の奥の優しい瞳を瞬かせて微笑んだ。

短冊に願いごとを書くなんて何年ぶりだろう。

小学校の頃以来かな。



悩んだ挙句、『成績があがりますように』という無難な願いをひねり出して、短冊を笹に吊るした。


いつものようにコーヒーとサンドイッチでひとしきりお喋りしたあと、俺は黒船を後にした。



マスターは「七夕はまだ明日だから」と言って短冊を何枚か持たせてくれた。

他にも願いごとが書けたら、明日笹に吊りに来たらいいということらしい。




その短冊とサンドイッチのおみやげを持って、またあの児童公園に足を向けた。

あいつはいるだろうか?

足を止めて公園を見回すと後ろから軽い足音が聞こえてきた。


百花「じーじ! お腹すいたー!」


(あいかわらず、こいつは元気だな)


小さな百花ちゃんがお約束のように俺の背中をパンと叩いた。


譲二「ほら、いつものヤツ」


マスターに作ってもらったサンドイッチを百花ちゃんに渡す。


百花「ありがとう! 」

百花「わぁー。ハムとトマトが入ってる」

譲二「今日はちょっと豪華版だからな」


百花ちゃんはサンドイッチをぱくつきながら、俺の左手に目を止めた。


百花「ほれは?」

譲二「これか?」


俺は黒船のマスターにもらった短冊を百花ちゃんに見せた。


譲二「七夕の笹に飾るやつ」

百花「七夕……百花知ってる! それに書くとお願いごとが叶うんだよね!」


俺はちょっと苦笑いした。

確かに願いごとを書いて笹に吊るすわけだけど、必ず叶うとは限らない。

明里と一緒に吊るした短冊に書いたことを思い出して、少し胸が痛んだ。

 

その3へつづく


七夕〜その1

2016-07-07 14:33:23 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

今年は七夕のお話書けるかな…と思い、書き始めたものの。

何しろ取り掛かりが遅かった。

思いついたのが7月入ってから。

「七夕までに書ければいいや」と暢気に構えていたら、パソコンの機嫌が悪くなるわ、雑事が入るわ。

言い訳がましいけど、なんとか七夕当日に間に合ったので、許してね。


さて、七夕のお話で以前書いたのは『七夕』in〈吉祥寺恋色デイズ〉


恋人同士の譲二さんとヒロインのお話でした。

今回は恋人になる前の二人の話。

だから、ラブラブのシーンというのは特にないのですが、子供時代も挿入して作ってみました。


☆☆☆☆☆

七夕〜その1


〈百花〉

♪~カラカラ~ン

春樹「ジョージさん! ご注文の笹を持ってきましたよ。どこに置いたらいいですか?」


ハルくんの元気な声が響いた。

私が近づくとハルくんは大きな笹を持ち替えて、ニッコリ微笑んだ。


春樹「やぁ、佐々木!」

百花「わぁ、すごい笹だね!」

春樹「うちに入った中でも一番立派なのを持ってきたからね」


厨房からマスターも出てきた。


譲二「ありがとう、ハル。ここに飾ろうと思うから持ってきてくれる」


柱の下に置いたバケツに笹をさし、ハルくんと二人で柱に笹を括りつけていく。

笹が倒れないように私も手伝った。


譲二「これでよし」

百花「七夕には、いつもクロフネに笹飾りをするんですか?」

春樹「今年初めてだよね? 笹の注文貰ったのは」

譲二「ああ、ちょっと思いついてね。お客さんに短冊を書いてもらってお店に飾ろうと思って」

百花「それで昨日から短冊が置いてあるんですね」


カウンターに置いた箱に真新しい短冊とマジックが置いてある。


譲二「まだ書いてもらえたのは数人なんだけどね」


マスターは首をすくめて笑った。

お母さんたちと暮らしていた頃は小さな七夕飾りに願いごとの短冊を吊り下げていたものだけど、クロフネで暮らすようになって、七夕ができるとは思っていなかった。


譲二「ハルもよかったら、短冊に願いごとを書いてくれるかな?」

春樹「願いごとかぁ、何にしようかな。そういえば佐々木は何書いたの?」

百花「え? 私? まだ書いてないよ。考え中」

譲二「いくつ書いてくれてもいいからね。でないとこの大きな笹が埋まらないから」

春樹「そういうジョージさんは書いてあるんですか?」

譲二「いやぁ、実を言うと俺もまだ書いてないんだけどね」


くしゃっと顔を崩してマスターが笑う。

その優しい…少年のような笑顔は、なぜかいつも私の心を乱してしまう。

いつか…どこかで、その笑顔を見たことがあるような気がして。

 

その2へつづく


茶倉譲二 続編ハピエン~その9

2016-03-25 07:44:21 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。 

☆☆☆☆☆

以前予告した譲二続編のハピエンです。

譲二続編のスパエンは京都に、ハピエンは兵庫県の姫路城に行きます。

スパエンのヒロイン好みの内容に対して、ハピエンは譲二さんがとっても楽しんでる。

姫路城エピは譲二さんらしさが出ていて、私的には好きな話です。

☆☆☆☆☆
茶倉譲二 続編ハピエン~その9
〈譲二〉

本音を言えば、せっかく2人で過ごすんだから、百花ちゃんとの仲はもう少し進展させたいなって思う。

もしも彼女が受け入れてくれるなら……。

無言で彼女をじっと見つめる。

しかし、戸惑ったように見開かれた瞳が、俺を受け入れる余裕などないことを教えてくれた。


(ふぅ…。焦りすぎだな、俺は…)


譲二「百花ちゃんって、ほんとかわいいよね」


百花ちゃんがおずおずと聞き返す。


譲二「考えてること、全部バレちゃってるよ」


そう言って彼女の隣に座ると、また百花ちゃんは腰をずらして離れてすわる。


(だけど、もう逃がさないよ)


それ以上離れて欲しくなくて、彼女の腕を静かにつかんだ。


百花「じょ、譲二さん…!?」


百花ちゃんが一段と高い声をだした。


(怖がらせるのはこれくらいにしとかないとね…)


譲二「男は、みんなオオカミだってこと」

百花「…え?」

譲二「忘れないようにね」


何か言いたそうな百花ちゃんを遮って言う。


譲二「今日はたくさん歩いて疲れたでしょ。そろそろ寝ようか」

百花「えっ、あ…」


ワザとなんでもないように明るく「電気消すよー」と声をかけた。

そのままベッドに横たわる。


譲二「大丈夫? 暗い?」

百花「いえ…」


なかなか寝つけないのか、百花ちゃんが寝返りをうつ気配がした。


(やれやれ……このままでは俺も眠れそうにないな…)


俺は起き上がって声をかけると百花ちゃんを優しく抱きしめた。


譲二「いい夢が見れるように」


そして、緊張で身体を硬くしている百花ちゃんのおでこに軽くキスをした。


百花「え?」


薄闇の中で百花ちゃんが驚いた声を出した。


譲二「ごめんね、緊張させて」


(安心して…。これ以上は何もしないから)


譲二「百花ちゃんが大人になったら、また2人で来よう」

百花「譲二さん…」

譲二「その時はもちろん…キスだけじゃないからね」

百花「!?」

譲二「それまではお預けかな」


(焦るな!がんばれ、俺…)


小さく呟いた言葉を聞き返されて、「なんでもないよ」と答える。

百花ちゃんから離れて自分のベッドに横たわった。

すると、百花ちゃんが「ふふ…」って笑った。


譲二「え?」

百花「なんでもないです」


さっきまでは俺に襲われるんじゃないかって怯えていたくせに…。

今は何が面白いのかあんな風に笑ってる…。

なんだか…こういうところが女の子は謎めいていて、小さな百花ちゃんも大人びたなって思ってしまう。


譲二「おやすみ、百花ちゃん」

百花「はい…おやすみなさい」


茶堂院グループを必ず立て直して、必ず百花ちゃんの元に帰ってくる。

そしていつか…。

百花ちゃんがもっと大人の女性になったら…その時は。


しばらくして、隣からスヤスヤと安らかな寝息が聞こえてきた。


譲二「おやすみ。俺の…百花」


小さく呟いてみる。

いつか、彼女が目を覚ましている時にそう言える勇気が出るだろうか?

 

『茶倉譲二 続編ハピエン』おわり


茶倉譲二 続編ハピエン~その8

2016-03-24 07:50:39 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。 

☆☆☆☆☆

以前予告した譲二続編のハピエンです。

譲二続編のスパエンは京都に、ハピエンは兵庫県の姫路城に行きます。

スパエンのヒロイン好みの内容に対して、ハピエンは譲二さんがとっても楽しんでる。

姫路城エピは譲二さんらしさが出ていて、私的には好きな話です。

☆☆☆☆☆
茶倉譲二 続編ハピエン~その8
〈譲二〉

ホテルの部屋はツインを取ってあった。

本当は別々の部屋を取るべきだったかもしれない。

だけど、しばらく会えなくなる百花ちゃんとこの旅行の間だけは片時も離れたくない、という思いがあってツインにしたのだった。

もっと深い仲になれたらいいな~という微かな願望も少しはあったしね。


ホテルの部屋で2人だけになると、ちょっと気詰まりな気がして部屋に備え付けのパンフレットを開いてみた。


譲二「見て、百花ちゃん。このホテル、朝食が豪華なんだって」

百花「は、はい…」

譲二「楽しみだね。明日早起きしないと」


何気なく百花ちゃんをみるといつもと様子が違う。

どことなくおどおどしてるし、何か気がかりでもあるみたいだ。


譲二「…百花ちゃん?」

百花「…はい」

譲二「なんでそんなに遠くにいるの?」


ベッドに腰かける俺とは少し離れたイスに座ってしまっている。


百花「こ、こっちから夜景が見えるなーと思って」

譲二「あ、ほんとだ。夜景も売りだって書いてある」

譲二「って、もうこんな時間だね…」

譲二「百花ちゃん、シャワーお先にどうぞ」

百花「え!?」

譲二「え?」

百花「い、いえ…」


百花ちゃんは相変わらず無口なまま着替えを持ってシャワーを浴びに行った。


いっぱい歩かせたから、疲れてるんだよね?


☆☆☆☆☆


百花ちゃんと交代してシャワーを浴びたあと、部屋にもどった。

ぼーっとしてる百花ちゃんに声をかけると「わっ」と驚いて飛び上がった。


どうかしたのか聞いてみたけど…。


百花「な、なんでもないです」


百花ちゃんは壁を背に張りつくようにしている。


その上、俺が少し近づくと同じだけ距離をとって後ずさってる。


(わぁ…完璧に意識されてる…)

(まぁ、逆に今までの百花ちゃんが無防備過ぎたんだけどね。俺、男として見られて無いんじゃないかと不安になるくらいだったから…)



少し怯えた瞳で俺を見つめる百花ちゃんが可愛いくて、ついからかいたくなってしまった。


譲二「そんなふうに逃げられると逆につかまえたくなっちゃうよ」


ポソリと呟くと百花ちゃんはますます焦った顔になった。


百花「え!?」


安心させるように、にっこり微笑んで誘う。


譲二「だから、こっちにおいで」

百花「は、はい…」


百花ちゃんはどもりながら返事すると、少しだけ近寄って自分のベッドにちんまりと座った。


(俺のそばに座って欲しかったんだけどなぁ)


やっぱり、いつもの俺と雰囲気が違ってて怖いんだろうな。

 

その9へつづく