吉祥寺恋色デイズ、茶倉譲二の妄想小説です。
☆☆☆☆☆
茶倉譲二プロフィール 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg
血液型:O型 特技:歴史語り、特徴:歴史オタク
ヒロインの初恋の人。公園でサンドイッチをもらったり、抱っこしてもらったりしてた。
この話は3年後編でヒロインと結ばれて、数ヶ月経った頃。譲二さんは実家から帰ってきてクロフネで暮らしている。ヒロインは大学3年生。
今回の絡みはいっちゃんです。(^ε^)♪
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あ・や・ま・ち~その1
〈百花〉
実家から帰ってきた譲二さんと、クロフネで一緒に生活できるようになって数ヶ月がたった。
だけど、譲二さんは忙しくてデートもなかなか出来ない。
もちろん、夜は一緒に過ごせるのだから、不満があるわけではない。
2人だけになった時はいつも優しく抱きしめたり、キスをしてくれる。
でも、この頃、譲二さんは疲れているみたいで、ベッドに誘ってくれることはあまりなくなってしまった。
私も譲二さんの体が心配だから、自分から抱いて欲しいとは言えないでいる。
その日も私は1人で街ブラをしていた。
本屋さんでケーキ屋のレシピ本を眺める。
そういえばバレンタインのチョコを作ってあげてから、譲二さんのためにお菓子も作ってあげてない。
こんな可愛らしいケーキを作ってあげたら、疲れた譲二さんも元気を取り戻してくれるかな。
突然、後ろから声をかけられて驚いた。
一護「百花!」
百花「一護君!」
一護「こんなところで何してんだ? 1人なのか?」
百花「うん。一護君も?」
一護「ああ、ちょっと時間が出来たんでぶらぶらしてた。本屋によったら、お菓子のレシピ本のコーナーはいつもチェックすることにしてるんだ。」
百花「私も譲二さんの元気が出るようなケーキを作ってあげられたらなぁって思って…。」
一護「マスターは相変わらず忙しいのか?」
百花「うん。それにこの頃かなり疲れているように見えるんだよね。」
一護君は何か言いたそうな顔で見つめたが、ちょっと意地悪な表情になって言った。
一護「おまえのケーキを食べたら、マスターはかえって気分悪くなるんじゃね?」
百花「ひどーい。そんなこと言うなら、一護君が教えてよ。元気の出るケーキ。」
一護「教えてやりたいけど…マスターに悪いからな。」
最後につぶやいた言葉はよく聞き取れない。
百花「えっ?」
一護「いや、なんでもない。それよか、ケーキのレシピ本なら簡単な初心者向けで美味しくできるのを持っているから、俺が貸してやるよ。」
百花「えっ、本当? ぜひ貸して。」
一護「ちょうど人に貸してたのが戻ってきたところだから、今鞄に入ってるんだ。ここを出よう。」
本屋をでて、一護君はその本を渡してくれた。
(確かにこれなら私でも作れそう。)
一護君がカフェに誘ってくれたので、お茶をしにいく。
百花「こんなふうに一護君と2人だけでお茶するのは初めてだね。」
一護「ああ。なんだかんだ言って、ハルやらタケやら大勢でばかり行動してたからな。高校卒業してからは、なかなか会えなくなったし。」
私たちは子供時代や高校時代の思い出話に話が弾んだ。
話が途切れてしばらく黙った後、一護君はぽつりと言った。
一護「おまえ、もしかしてマスターとうまくいってないのか?」
百花「そんなことないよ。マスターはとても優しくしてくれるし、気を使ってくれるし…。マスターが実家に帰っていた時のことを思えば、今は一緒に暮らしているわけだし…。」
一護君はじっと私を見据えた。
一護「一緒に暮らしているけど、マスターは仕事で忙しくて、あまり相手にしてもらえてないんだな。」
百花「…」
一護「今日、本屋で見つけたとき、百花はすごく寂しそうだった…。」
一護君はクロフネの近くまで送ってくれた。
別れ際、
一護「本は急がないからいつ返してくれてもいいからな。それと、なんかあったらメールしろよな。」
百花「今日はありがとう。楽しかった。」
突然一護君は私を引き寄せると抱きしめた。
百花「…一護君?」
一護「…百花、俺は…」
一護君は唇に軽くキスをすると私の顔をみつめた。とても真剣な表情。
百花「…一護君、…だめ…よ。」
一護「…」
一護君はもう一度私を抱きしめて、ため息をつくと、「じゃあな」と言って振り返ることもなく帰っていった。
私は呆然としばらく一護君の後ろ姿を見送った。
頬がほてっていたので、しばらく冷ましてからクロフネの扉をあけて入った。
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あ・や・ま・ち~その2
〈百花〉
2週間後の夕方、借りていた本を返すため一護君と待ち合わせた。
一護君は働いている店の近くに部屋を借りている。
「ちょっと来るか」と言って自分の部屋に連れて行ってくれた。
初めて訪ねる一護君の部屋。男の人の部屋らしくシンプルなファブリックでまとめてある。
一護くんはテーブルにお茶の用意をしてくれた。一緒にイチゴのフレジエもお皿に載っている。
一護「試作品だ…。余ったから食べて行けよ。」
そんな言い方をしているけど、今日私が訪ねてくるからわざわざ作ってくれたんだよね。
百花「これカスタードクリームなんだね。イチゴの甘酸っぱさと混ざって美味しい…。」
一護くんの机の上にはアルバムが置いてあった。
百花「あ、このアルバム見せてもらってもいい?」
一護「ああ、目新しいものなんかねぇぞ。」
アルバムには高校時代のみんなが写っている。
ベッドの上に並んで座って懐かしくページをめくっていた。
百花「あっ、これ。大雪が降った時にみんなで雪だるまを作ったり雪合戦をしたよね。懐かしい…。ねぇ、一護君」
一護「…」
百花「一護君どうしたの?」
急に黙った一護君の顔を覗く。
一護君は何か思い詰めたような顔で私を見つめた。
一護「俺は…お前のことが好きだ。」
一護君の突然の告白に戸惑った。
百花「そんな、私は譲二さんと…」
一護君は私を思いっきり抱きしめると耳元で囁く。
一護「百花が、マスターのことが好きだって知っていたから、ずっと我慢してきた。
だけどもう限界だ。俺は子供の頃からずっと百花のことが好きだった。
マスターが百花のことを好きになるよりずっと前から…。」
そして、私の唇に軽くキスをした。
百花「だめ…。一護く…」
その言葉を黙らせるかのように、熱いキスをする。
譲二さんとは違うキス。もっとストレートな感じ。
私は一護君の胸をおして逃れようとするが、一護君は腕に力を込めて放してくれない。
強い腕の中で、頭の芯がだんだんしびれてくる。一護君から逃れようとする腕の力が抜けてくる。譲二さんとは違う男性の匂い。
一護「マスターのことは俺が忘れさせてみせる。」
何度も熱いキスをされて、体がとろけそうになる。男を知っているだけに次に何をされるかが分かっていて、それでいて抵抗できない。
(ごめんなさい。譲二さん)
一護君は私の体をまさぐった。譲二さんの優しい愛撫の仕方とは違う、ちょっとゴツゴツした感じ。
百花「…いや…やめて…。」
でも、その言葉には力が入らない。
一護君は私の下着の中に手を入れてきた。私はその手を掴んで退けようとするけど、手を振り払われてしまった。
キスの合間に一護君は私の耳元で囁く。
一護「…百花、大好きだ。…子供の頃から…ずっとずっと。」
百花「…一護…くん」
一護「百花、俺のことだけ考えろ…。マスターのことなんか忘れちまえ。」
百花「…あ、ああ…だめ…」
でも、言葉とは裏腹に体は一護君を受け入れて、悦んでいる。
(譲二さん、ごめんなさい。でも、とっても感じてしまう。)
思わず、一護君の体を抱きしめてしまう。
私の両の指先が一護君の背中でふれあった。
譲二さんなら抱きしめてもとても届かないのに…。一護君は譲二さんよりも細身なんだ。
荒い息を吐きながら、一護君が言う。
一護「百花、百花はもう俺のものだ。マスターには渡さない。」
一護君は脱力して横たわっている私の服を脱がしてしまうと、私の体を愛おしむようにキスを降らせていく。
一護「百花は…俺のものだ。…マスターには…渡さない。」
譲二さんへの罪悪感を感じながらも、一護君と愛し合っているのを悦んでいる私がいた。
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あ・や・ま・ち~その3
〈百花〉
しばらく、二人とも動くことができない。
私は火照った体を横たえたまま、譲二さんを裏切ってしまったことを悔やんだ。涙が静かに頬を伝う。
一護君は驚いて、私の涙をぬぐってくれた。
優しくキスして、
一護「百花、ごめん。でも、俺の気持ちは本当だ。今日はもうクロフネに帰るな。」
と言う。
私は激しく首を横に振った。
百花「そんなことはできない。」
一護「もう、俺たちは他人じゃない。」
百花「一護君、今日のことは忘れて。」
私は服の乱れをなおすと、押しとどめようとする一護君の手を振り切って、クロフネに帰った。
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譲二さんはいつものようにカウンターの向こうから声をかけてくれる。
譲二「おかえり、百花ちゃん。遅かったね。」
いつもの優しい譲二さんの声。
百花「…ただいま…。」
でも、私は申し訳なくて、譲二さんの顔をまともに見ることが出来なかった。
直ぐに2階にあがる。
譲二「百花。どうしたの?」
心配そうな譲二さんの声が追いかけてくる。
それを振り切るように階段を駆け上がり、部屋の扉を閉めた。
すぐに、ドアの外から譲二さんが声をかけてきた。
譲二「百花。何かあったのか? 気分でも悪いの?」
百花「ごめんなさい。ちょっと気分が悪いの。もう休むから、夕飯は無くていいよ。」
譲二さんは「ごめんね」と言ってドアを開けて、入ってきた。
ベッドに座り込んだ私の額に自分の額をくっつける。
譲二「熱はないみたいだね。」
そして私の顔を心配そうに覗き込んだ。私は譲二さんから視線をそらせた。
譲二「顔色が悪いな。ゆっくり休んだほうがいい。おかゆでも作ろうか?」
百花「ありがとう。でも、今は何も欲しくないから。」
譲二「そう。…じゃあ、ゆっくりおやすみ。」
譲二さんは私の額にキスをして、部屋を出て行った。
譲二さんの立ち去る気配がする。
私は鏡の中の自分の顔を見つめた。
ひどい顔。でも、体はまだ火照っていて、一護君から受けた愛撫の余韻がのこっている。
私は…一護君を受け入れてしまった。
そして、それがちっとも嫌じゃなかった…。
涙が静かに頬を伝った。
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あ・や・ま・ち~その4
〈譲二〉
もう夕方だというのに百花がなかなか帰ってこなかった。
心配してメールを出したが返事はない。
7時過ぎてやっと帰ってきた。
「おかえり」と声をかけたが、「ただいま」という声が暗い。心配になって、部屋まで追いかけたが、気分が悪いという。
額に触れてみたが、熱はなかった。しかし、顔色が悪くて食欲もないという。
気になりながらも、ゆっくり休むように言って、店にもどった。
出かけた先で何かあったのだろうか? なんだか胸騒ぎがする。
店を閉めようと準備をしていたら、タケとハルがやってきた。
譲二「ちょっといいか? 百花ちゃんがひどく落ち込んで帰ってきたんだけど心当たりはない?」
春樹「ここんとこ、佐々木とは会っていないから。ジョージさん、何かあったんですか?」
剛史「俺もしばらく会ってないな。」
譲二「どこへ言っていたか話してくれてないんだ…。」
春樹「俺たちよりりっちゃんの方が同じ大学だから何か知っているかも…。」
譲二「そうだな…りっちゃんにメールでもしてみようか?」
気もそぞろな俺を気にして、2人はコーヒーを飲むと帰っていった。
りっちゃんからは『大学ではいつもと変わりなかったよ』という返信が来た。
俺は店の照明を落とすと2階へ上がり百花の部屋をノックした。
譲二「百花ちゃん起きてる?」
返事はない。
ドアをあけてそっと覗くと、部屋は暗くベッドの上に寝ている人影が見えた。
俺はそっとドアを閉めると、片付けに降りていった。
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翌朝も百花は元気も食欲もなく、トーストを半分以上も残してしまった。
それに俺とは目を合わそうとしない。
俺が何か気に障ることでもしてしまったのだろうか。
☆☆☆☆☆
その日大学から帰ってきた百花は、相変わらずあまり元気がない。
食事も半分くらいしか食べずにすぐ自分の部屋にこもってしまった。
夜、店を閉めてから、百花の部屋に入った。
譲二「百花、いったいどうしたの? 昨日でかけてから、何かあったの?」
百花「…」
視線を合わそうとしない百花の両頬を手で挟んで顔を覗き込む。
☆☆☆☆☆
あ・や・ま・ち~その5
〈百花〉
譲二さんは私の顔を覗き込んだ。
とても優しい目。大好きな譲二さんの瞳に私が写っている。
それを見つめていると、私の目からは涙が溢れてきた。
譲二「いったいどうしたの? 何があったのか話してごらん。」
百花「…」
私が裏切ってしまった譲二さんの優しい言葉に、私は何も言えず、泣きじゃくって譲二さんに抱きついた。
譲二「ほらほら、泣いているだけじゃわからないよ。」
譲二さんは頭をポンポンと優しく叩いてくれる。
譲二「それとも…俺には話せないようなことなの?」
〈譲二〉
俺の腕の中で、ただただ泣きじゃくる百花。
一体何があったんだろう。
また、胸騒ぎがする。
俺には話せないようなことなのだろうか?
2人が結ばれてからは、百花は何でも俺に話してくれたし、俺も百花の様子を見れば、何を考えているか大体分かると自負していた。
しかし、今回は本当に訳が分からない。
涙を流す百花を慰めるために抱きしめ、キスをする。
いつものような反応はなく、涙を流しているだけだ。
そんな百花が愛おしくて、キスと愛撫を重ねて行った。
〈百花〉
ただ泣き続ける私を譲二さんは抱きしめ、キスをしてくれる。
私にはもうその資格はないのに。
一護君に体を許しただけでなく、あんなに感じてしまった。そして、一護君に抱かれて一瞬でも嬉しいと思ってしまった。
譲二さんの優しいキスと愛撫を受けていると、一護君のそれを思い出してどうしても比べてしまう。
譲二さんのはとても甘くて優しくて、私が感じるように常に考えてリードしてくれてる。
一護君のはストレートで自分の欲望のまま…でも、それは私を好きで好きでたまらないからというのが分かる。
どちらの方がいいとか、どちらの方が好きとか決められない自分に愕然とする。
不意に譲二さんの愛撫の手が止まった。
驚いて目を開けると、私を抱いたまま、じっと見つめている。
その譲二さんの表情からは何も読み取れなかった。
譲二さんは私から視線を外すと、起き上がり、優しい声で言った。
譲二「…百花…ちゃん、今日は疲れているみたいだからもう休んだ方がいいよ。…俺はまだ片付けがあるから、下にいくね。」
譲二さんは優しく額にキスをするとドアを閉めて出て行った。
その6へつづく
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