吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
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茶倉譲二 続編第七話~その5
〈譲二〉
兄貴が用意した資料を見ながら説明を聞いた。
武藤グループとの交渉に当たっている社員も一人も同席し、俺の質問に丁寧に答えてくれる。
(これは……。思っていた以上に酷い状況になってるじゃないか…)
紅一「そういう訳で、重役会議でも武藤グループの傘下に入った方がいいという意見の方が大勢を占めていてね」
譲二「そうか…」
紅一「今までなら会長がそういう意見は押さえつけていたんだが…、入院してからは気弱になって、重役会議の採決に任せると言っている」
譲二「何とかならないのか? 」
紅一「合併派の重役を納得させるには、有力な経営立て直しの案が必要になってくる」
譲二「有力な立て直し案?」
紅一「ああ、今のままではジリ貧にしかならないからな。皆んなを納得させるような経営手腕を持った人間を他所から呼んでくるか…もしくは…」
社員「例えば、譲二さんに重役に入ってもらうという方法もあります」
譲二「俺に?」
社員「はい。譲二さんは会長からの信頼も厚いですし、創業者一族の一人であれば、うるさい重役陣も表立って文句は言えません」
紅一「俺が合併派に根回しが出来ればいいんだが…、そういうのはどちらかと言えば苦手だしな…」
兄貴がそんな弱気な言葉を発するのは珍しいことだった。
だが、確かに人を口説き落としたり、皆んなの意見をまとめたりすることは、真面目一方の兄貴には苦手なことだというのはよく分かる。
(やっぱり…俺が戻るしか無いのか…)
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どうすればいいのだろう?
全ては俺の決断にかかっている…。
百花ちゃんの声が無性に聞きたくなって、クロフネに電話した。
♪~
百花『はい、喫茶クロフネです』
懐かしい彼女の声だ。
まだ半日しかたって無いのに…なんでこんなに懐かしいんだろう…。
譲二「百花ちゃん? お店の様子、どう?」
百花『譲二さん! いつもみたいに、お客さんたくさん入ってますよ』
なんだか、いつもよりもテンションが高い。
譲二「いつも、そんなに入ってたイメージはないけどね」
百花ちゃんの言葉に苦笑した。
その6につづく