恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

茶倉譲二 続編第三話~その1

2015-08-30 06:58:48 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆

茶倉譲二 続編第三話~その1

〈譲二〉

下校時、兄の紅一に実家に連れて行かれた百花ちゃん。

彼女を実家で見つけ、無事だったことへの安堵を感じてから、俺の中では沸々とした怒りが湧き上がっていた。

百花ちゃんを実家から連れだして、やっとクロフネに帰り着いた。

だけど、怒りはまだ収まらない。

口を開いたら、百花ちゃんを罵ってしまいそうでなかなか言葉を発することが出来なかった。

ずっと黙ったままの俺に百花ちゃんがおずおずと話しかける。


百花「あの…譲二さん…」

譲二「どうしてついて行ったりしたんだ」

百花「え…」

譲二「ハルたちから、前に店に来てた男が百花ちゃんを連れて行ったって聞かされた俺の気持ちがわかるか?」

譲二「紅一だってわかったからいいものの…」

譲二「そうじゃなかったら、どうするつもりだったんだ!」


思わず大声を出してしまう。

百花ちゃんがぴくりと身体を震わせた。

何をしてんだ…俺。

彼女をこんなに怯えさせて…。


百花「ごめんなさい…譲二さんのお兄さんだったし…」

百花「譲二さんのことを話してくれるって言われて…」

譲二「俺のこと?」


意外な理由に、一瞬怯んだ……だけど。


譲二「なら、俺に聞けばいいじゃないか」

譲二「俺の話をするからって、よく知りもしない男についていくなんて…」


百花ちゃんが、俺のことを知りたいのに俺じゃなく兄貴に聞こうとしたというのが気に食わない。

今は俺と兄貴がうまくいってないって分かりそうなもんだろ?

そんな相手に聞かなくったっていいじゃないか。

分かってくれよ!

俺たちが不仲だって、いくら口では説明してないからと言って…。


譲二「子供じゃないんだから…」


その俺の言葉は百花ちゃんを憤慨させたようだ。


百花「子供…扱いしてるのは、譲二さんじゃないですか!」

譲二「え…」

百花「譲二さんは、私が聞いても何も話してくれないのに…! 私を頼ってくれないのに…」

百花「だから…お兄さんに聞いたら…譲二さんのことが少しでも分るんじゃないのかって思って」


いつもは優しい百花ちゃんの激しい言葉に俺の怒りは消し飛んだ。


譲二「…でも、俺は言っただろ。百花ちゃんは、ただそばにいてくれるだけで…」

百花「それじゃ、ダメなんです!」


俺はただ百花ちゃんがにっこり笑ってそばにいてくれるだけでいいんだよ。

百花「そばにいたいのに、そばにいる理由が…私を必要としてくれる理由がわからないから…」


(だから…それは…。)

(俺が安心できるから…百花ちゃんがそばにいるだけで…。)


色々と言いたいことがあるのに、言葉が出てこない。


百花「不安…なんです…っ」


百花ちゃんはそう言いながら涙ぐんだ。


譲二「百花ちゃ…」


俺の言葉を遮って、百花ちゃんは拒絶するように言った。


百花「今、日は…もう、寝ます…っ、おやすみなさい…っ!」

百花ちゃんは俺を振り切ると、顔を背けたまま階段を登った。

(百花ちゃん……)

俺は……。

俺にとっての百花ちゃんは風雨から守らなければならない大切な大切な小さな花のようなもの。

そばでそっと咲いてくれるだけで、俺は頑張れる…。

百花ちゃんがそばでにっこり微笑んでくれること…それだけを望んできた。

だけど…それじゃ、ダメなのか?


その2へつづく



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