「白い朝」は譲二さん目線の話なんだけど、読み返していたらヒロイン目線でも書きたくなったので書いてみました。
譲二さんとヒロインは一緒に暮らしているけど、部屋は別です。
そこが他の幼馴染みとの同棲と違うところだよね。
だから譲二さんはどんなふうに誘うのかな?と考えるとドキドキします\(//∇//)\
☆☆☆☆☆
(寒い…)
真っ暗な中で寝返りを打つ。
とても温かい方へ。
温かくて大きな腕がすぐに抱き寄せてくれた。
そして、頭をよしよしと撫でてくれる。
外の寒さで目覚めかけた頭も、その安心感と心地よさからまた夢へと引きずり込まれる。
☆☆☆☆☆
譲二さんが実家から帰ってきて数ヶ月。
時々夜に譲二さんのベッドに誘われるようになった。
夕食後やお風呂あがりにすれ違った時など、何気なく譲二さんが言うのだ。
譲二「百花ちゃん…もし良かったら……今夜は俺の部屋に来てくれる?」
その言葉を聞くと私は全身真っ赤に成ってしまう。
そして、小さく「はい…」と言って頷くのだ。
☆☆☆☆☆
温かいまどろみの中で私は夢を見ている。
なぜだか私は小さな女の子に戻っていて、お外で遊んでいる。
空からは白い綿雪がふわふわと舞っていて、手のひらでそれを受けようと空に向かって手を広げている。
雪はちっとも冷たくなくてとても温かだった。
???「お前…、そんなことしてると風邪引くぞ!」
懐かしい声が叱ってくれる。
振り向くと、ちょっと困ったような顔をした少年が私を見ている。
じーじだ!
百花「じーじ!」
私はじーじに駆け寄って飛びついた。
譲二「こら! 飛びついたりしたらあぶねーだろ!」
キツい口調ながらその声は優しく、じーじは大きなマフラーで私をぐるぐる巻きにしてくれる。
百花「こんなにぐるぐる巻きにしたら動けないよ~」
私の抗議にもかかわらず、じーじはどんどんマフラーを私に巻きつける。
(ああ、温かくて…くすぐったい)
譲二「そんな格好じゃ、風邪を引いちゃうよ」
いつの間にかじーじは大人の譲二さんになっていた。
そして、耳元で囁く。
譲二「そんな悪い子にはお仕置きするよ…」
そう言うと私に優しくキスしてくれる。
何度も…何度も…。
百花「譲二さん…それじゃあお仕置きにはなりません…」
譲二「ん? …だって…俺がしたいからさ…」
そう言って譲二さんは私の頬にまたキスを落とした…。
その瞬間、私はハッとして目を開いた。
譲二「ごめん。起こしちゃったね」
百花「今、譲二さんにキスされた夢を見てた…」
思わずそう言ってしまい、私は頬を赤らめた。
ドギマギしている私とは違って、譲二さんはこんなことを言う。
譲二「夢じゃないよ…。 今、こんな風にしたんだ」
そして鼻先から唇に続けて軽いキスを落としていく。
百花「‼︎」
夢の中でのキスを思い出して恥ずかしくなった私は譲二さんの胸に顔を埋めた。
(あ、譲二さん……裸だった…)
ちょっと慌てていると譲二さんが言う。
譲二「なんだか顔が冷たいね?」
(譲二さんの素肌に冷たい頬を当ててしまった…。びっくりしたよね?)
百花「あ、ごめんなさい、譲二さん。冷たかった?」
譲二さんはちょっと微笑んだ。
譲二「いや、俺はいいんだけど、百花ちゃん身体が冷えて寒いんじゃない?」
百花「そういえば…」
私は身震いした。
確かに布団の外はかなり冷え込んでいる。
譲二「もっとこっちへ来てごらん」
譲二さんは私を抱き寄せて、しっかりと掛け布団でくるんだ。
素肌と素肌がふれあう。
(温かいけど…。こんなに譲二さんにくっついているなんて…)
百花「あったかい…。でも、ドキドキします」
譲二「俺も…」
ふれあう胸の鼓動は譲二さんのもドキドキしている。
(私だけじゃないんだ…)
(ずっとこうしていたい…)
だけど、ハッと我に返った。
外はもうかなり明るくなってきている。
百花「何時でしょう?」
譲二「ん?まだ早いんじゃないかな…」
百花「でも…、もう外はかなり明るいみたいですよね?」
私の言葉に、譲二さんは半身を起こしてカーテン越しに窓の外を見た。
譲二「百花ちゃんはそのままでいて…」
譲二さんはベッドから抜け出ると、フリースの上着を羽織って窓の側に寄った。
白く曇った窓を掌で拭いている。
譲二さんが振り向いて、弾んだ声で私を呼んだ。
譲二「百花ちゃん、ちょっとこっちへ来てごらん」
私が譲二さんの側に駆け寄ると、譲二さんは私を毛布でしっかりくるんでくれた。
肩を抱き寄せながら、2人で窓の外を見る。
外は一面の銀世界だ!!
譲二「空も街も真っ白だね」
百花「きれい…。雪明かりでこんなに明るかったんですね」
譲二「ああ。しかもまだ降り続くみたいだ」
鼠色の空からは白い粉雪が後から後から舞い落ちてくる。
百花「静かですね」
譲二「ああ」
その譲二さんの声も雪に吸い込まれてしまいそうだ。
何の音もしない。
百花「まるで、この世界に私達しかいないみたい…」
譲二「そうだね…」
そう言うと譲二さんは私を抱きしめる手に力を込めた。
このまま…ずっとずっと雪が降り続いたらいいのに…。
譲二さんと2人だけでずっとこうしていたい。
このまま、2人だけの白い世界で…。
いつまでも。
いくら毛布に包まれているといってもやはり寒さには勝てない。
私は思わず身震いした。
譲二「寒い?…よね」
譲二さんが暖房のスイッチを入れた。
譲二「部屋が暖まるまで、布団に入ろう」
百花「でも…そろそろ起きないと…」
譲二「今日は大学は休みだし、店もこんな日は急いで開けなくてもいいし、まだ大丈夫だよ」
そう譲二さんに言われて、私はその言葉に素直に従った。
譲二「やっぱり…。身体が冷たくなってる」
私の身体を包み込むように譲二さんは抱きしめてくれる。
百花「あったかい…」
さっきの心地よさをまた思い出す。
譲二「そう?…良かった…」
あまりの気持ちよさに、小さなあくびをした。
百花「…ごめんなさい…」
譲二「うん?…しばらくこうしてあげるから、もう少し眠るといいよ」
百花「…でも…」
そう言ってみたけど、この心地よさには勝てそうもない。
もう一度小さなあくびをすると私は目をつぶった。
いつまでも…この白い朝が続きますように……。
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