吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
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茶倉譲二 続編第六話~その1
〈譲二〉
百花ちゃんに昔のことを話して、『私に甘えてください』と言ってもらって、なんだか吹っ切れた気がする。
こんなオジサンが高校生の女の子に甘えるなんて、って思っていたけど、百花ちゃんは俺が考えていたよりずっと大人で、頼りがいがある。
もう隠す必要も無いし、不安に駆られた時には彼女に話してみよう。
誰かに聞いてもらうということがこんなに心強いとは思わなかった。
きっと、もう大丈夫だ。
今朝は、いつもより百花ちゃんが降りてくるのが遅いので、二階に声をかけた。
譲二「百花ちゃーん、遅刻するよー」
百花「はーい!」
向かい合わせの食事中、なんだかいつもより口数が少ない。
あれ? 何か考え事?
譲二「…百花ちゃん?」
百花「あ…はい」
譲二「どうしたの? 何かあった?」
百花「進路調査票を出してなくて…期限が今日なので、出さないといけないんですけど」
譲二「そっか、もうそんな時期か」
百花ちゃんは進路に悩んでたみたいだ。
『自分には何が出来るんだろう?』って考えて考えて、袋小路に入っちゃったみたいだ。
みんなに相談してみたのか聞いてみたら、『焦らなくてもいい。将来のことなんだから、悩んで当然だ』とハルたちには言われたらしい。
譲二「うん、俺もそう思う」
百花「…」
譲二「それに『できること』じゃなくて、『やってみたいこと』にしてみればいいんじゃない?」
百花「やりたいこと、ですか?」
百花ちゃんは考えこんだ。
譲二「そう。何でもいいんだよ」
譲二「大学は興味があることを追求する場所なんだから」
俺は百花ちゃんの優しさにいつも救われてるよ、っていう話をした。
俺が何か悩んでたり辛い時には、いつも百花ちゃんが、笑顔で支えてくれる。
そして、百花ちゃんの笑顔とか優しさに救われているのは、俺だけじゃないと思う。
俺のじいさんだって、あの時は見ず知らずの人だったのに、百花ちゃんは助けてくれた。
百花ちゃんはいつも、他の人のことを考えて、しっかり周りを観察して、その人が必要な時に手を差し伸べてあげられる、そんな優しさを持ってる子だと俺は思ってる。
譲二「これが百花ちゃんの『やってみたいこと』に直結するかはわからないけど…」
譲二「ひとつのヒントだと思って、考えてみて」
百花「はい。ありがとうございます」
俺のヒントが役に立ったかどうかは分からないけど、百花ちゃんはいつものように元気に出かけて行った。
食器を片付けようとテーブルの上を見ると…あれ? なにかプリントが置いたままになってる。
覗いてみると三者面談のお知らせと書いてある。
しかも、その日付は今日だ。
そっか…。
もしかして、百花ちゃんが相談したかったのは、『進路について』もあるけど、『今日の三者面談に来てほしい』ってことだったのかもしれない。
これは…一肌脱がないとね。
恋人としてじゃなく、保護者としてだけど…。
その2へつづく