吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
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茶倉譲二 続編第五話~その4
〈譲二〉
譲二「それに、じいさんの怪我も心配だけど…」
譲二「あのプライドの高い兄貴が、わざわざ自分から会いに来たのが気になるんだ」
譲二「今まで一度だって、自分から俺のところに来たことなんてなかった」
譲二「それだけグループが、切羽詰まった状況なのかもしれない…」
黙りこんだ百花ちゃんの気持ちを引き立てるように言った。
譲二「兄貴は、道楽でやってる喫茶店なんてさっさと閉めろって言うけど、俺は、道楽でやってるつもりはないからね」
百花「あの…」
譲二「うん?」
百花「私ができることって、限られてると思うんです」
百花「経営のこととか、吸収合併のこととか、ちんぷんかんぷんです」
百花ちゃんの可愛い唇から、難しい言葉が出て来て戸惑った。
譲二「ど、どうしたの? 急に…」
百花「でも、明里さんが私には私にしかできないことがあるって言ってたんです」
譲二「百花ちゃん、一体何を…」
百花「もっと私に甘えてください!」
譲二「…」
百花「私は譲二さんが寄りかかったぐらいじゃ、潰れませんし…わりと力持ちなんです!」
百花「譲二さんかは、私よりずっと大人で男の人だし…私が頼りないのはわかってます」
百花「でも、お店のことだったらお手伝い出来ますし、ご飯だって作れます!」
譲二「…うん」
百花「もっと、譲二さんの力になりたいんです」
百花「だから…譲二さんのしたいことをしてください」
譲二「百花ちゃん…」
百花「私も、おじいさんと同じ気持ちです」
百花「譲二さんが決めたことなら、どんなことだって」
真剣な百花ちゃんの言葉とその瞳に、俺は頭を殴られたような気がした。
今まで、百花ちゃんには「私を頼ってください」「力になりたい」と何度も言われてた。
だけど、10歳という年の差と俺のほうが彼女を守りたいという強い気持ちから、百花ちゃんがどんなに真剣な思いでその言葉を言っていたのか、分かっていなかった。
俺は……俺のほうが百花ちゃんに頼ってもいいんだ。
今まで、何もかも一人で頑張らないと、と思っていたけど、この不安な気持ちを彼女に慰めてもらっていいんだ。
そう考えると、百花ちゃんのことがますます愛おしくてたまらなくなった。
ココアのカップを片づけている百花ちゃんの肩にそっと手を置いた。
譲二「ありがとう…」
愛しい百花ちゃんが振り返る。
俺は愛らしい頬に手を添えると、そっと唇を重ねた。
譲二「頼むから…これ以上、オジサンを夢中にさせないでくれるかな」
キスの合間にそっと囁く。
譲二「離せなくなるだろ」
百花「譲二さん…」
惜しむように唇を離すと彼女をぎゅっと抱きしめた。
百花ちゃんのこと…最初はかわいいとしか思ってなかった。
だけど、この頃たまにふっと大人びた顔をするときがある。
それは大抵、俺が迷ったり悩んでる時なんだ。
譲二「百花ちゃんの優しさは、いつも俺を救ってくれる…」
譲二「初めてあった時から変わらず…今でも」
百花「そんな…」
譲二「甘えてほしいなんて言われたの、初めてだよ」
譲二「ありがとう、百花ちゃん…」
そして、もう一度、俺は彼女に思う存分甘えた。
彼女が怯えたり、苦しがったりしないよう、充分気をつけながらではあったけれど…。
5話終わり