吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二ルート続編のお話を彼氏目線で眺めてみました。
ネタバレありです。
☆☆☆☆☆
茶倉譲二 続編第八話~その1
〈譲二〉
茶堂院グループの吸収合併の詳細を聞くために、実家に泊まりこんで二日目。
話し合いの合間に、時間を作ってクロフネに電話した。
♪~
コールがやたら長く感じられる。
やっと受話器が外され、百花ちゃんの明るい声がした。
俺は勢いこんで喋り出した。
譲二「百花ちゃん! 何もされてない! ?」
百花ちゃんの戸惑った声が俺の名を呼ぶ。
譲二「リっちゃんからラブラブな写真届くし」
譲二「百花ちゃん、メール返してくれないし…俺、すごい心配して…」
百花『ご、ごめんなさい! 携帯、確認し忘れてて…』
単なる確認のし忘れか…。
瞬間、脱力した。
ハハ、そうだよね。
こんな短期間に何かあるはず無いよね…。
百花ちゃんに限って。
譲二「いや…こっちこそ、ごめん…取り乱しちゃって…」
百花『あの…そちらはどうですか…?』
譲二「とりあえず大まかな事情は聞けたから、もうすぐ帰るよ」
譲二「店はどう? みんな大変じゃない?」
耳を澄ますと、携帯を通してクロフネで働くみんなの声が聞こえてくる。
昨日もそうだったけど、俺がいなくてもみんな楽しそうにやってるみたいだ。
いつもより賑やかだけど、これがクロフネの日常だ。
今までは俺もあの中にいた。
そして、ずっとあの中にいるんだと疑うことなく思っていた。
譲二「…元気みたいだね」
百花『ふふっ! なんだか大騒ぎですけど…』
百花『でもあい子さんも気にしてずっといてくれてるし、心強いです』
譲二「そっか…じゃあできるだけ急いで帰るから、よろしくね」
百花『はい』
百花ちゃんが受話器を置こうとする気配がしたので、慌てて名前を呼んだ。
百花『はい、なんでしょう?』
もう、その当たり前の日常には戻れないと思うにつけ、彼女に気持ちを伝えずにはいられなかった。
譲二「大好きだよ」
百花『えっ…』
譲二「じゃあね」
そっと電話を切った。
今までみたいに一緒にはいられないけど。
離れていても、何があっても、百花ちゃんを好きな気持ちには変わらない。
実家を手伝うことにしたと、辛い決心を伝える前に、彼女にその気持ちだけは伝えておきたかった。
その2へつづく