と言いつつ、私は小澤氏について特別詳しいわけではなく……。すみません。
その代わりといっては何ですが、WOWOWで録画しておいてずっと見ていなかった映画『TAR/ター』を見ました。
以下、ネタバレを含みます。
ほとんど前情報なしに見始めて、普通の音楽映画だと思ってたら、途中からサイコ・スリラーだということに気づき、おやおや？…となりつつも最後まで興味深く見ました。
でも、この映画、色んな要素が入っていて、ちょっと見方に迷う映画でした。💦
まず、主人公のケイト・ブランシェット演じる指揮者は、女性ながらベルリン・フィルの常任指揮者という設定。
なので、クラシックの世界でのガラスの天井問題はあるのかないのか？成功したらどんな事が待っているのか？など、女性芸術家の成功とその後の物語として見ることが出来ます。
次に彼女はレズビアン。なので、LGBTQ、セクシャルマイノリティの映画という見方も出来ます。ただし、ラブストーリーというわけでもなく、セクマイならでは生き方とか差別、葛藤なども特に描かれてはいません。（多分）
レズビアンという設定に必然性はなくて、たまたまそうだった…という感じかもしれませんね。ただ、現代の物語として【捻り】は効いています。
もうひとつ、純粋に音楽（芸術）映画として見る見方。前半の講義場面の長回しは圧巻だし、TARの語る芸術論は真っ当な事を言っていて、見ていて惹き込まれました。ケイト・ブランシェットの指揮者っぷりやオケやチェリストの演奏も良くて聴き応えがあります。そして、ラスト近く、彼女が生家に戻り自分の音楽の原点と向き合う場面なども、定石ながら重みがありました。
そして、最後はサイコ・スリラーとしての見方。でも、これはちょっと薄めかな……。彼女のほんの少しのエゴや悪意から、ある悲劇が生まれ、それが自身に跳ね返ってくるわけですが、そんなにドキドキもしないし怖くはなかったです。私はね。😅
ほんの少し、と書いてしまったけれど、された当事者にとっては人生を左右するもの。それだけの権力を彼女は持ってしまっていたから。
残念ながら、芸術家＝聖人君子ではなく、彼ら彼女らだってプライベートは色々あるものです。それは凡人と同様に……。現代はそのあたりが容赦なく暴かれてしまうので、細心の注意を払わなければなりません。
でも、どうでしょう？著名人のプライベートな情報って要りますかね？そんなに何もかも知る必要はあるでしょうか？
TARがしてしまったことは確かに彼女に非があるので、訴訟になっても仕方がないでしょう。でも、それは彼女とその相手方との問題。もし有罪になったなら償うまで。職を辞するなど社会的な制裁を受けることもあるかもしれない。でも、それで終わりで良いのでは？
その他の関係ない事柄まで何でもかんでもネット上に晒して叩く必要はないし、見せられる方も大概嫌な気分になりますよね。（そういうのが好きな人もいるでしょうけど）まあ、この映画の場合、彼女が隠蔽しようとしたことが事態の悪化を招いてしまったのだけれど……。
発信することが手軽になった分、情報が多過ぎるようにも感じる今日この頃です。
素晴らしい作品に触れた時、どんな人がこれを生み出したのだろう？と、その人となりを知りたくなるのも人情です。国籍とか年齢、どこで学んだかなど……。私もつい調べてしまいます。😅で、急にセクシャリティーの事なんかが出てきて「え、別に聞いてない」とかってなったりね。
どこで線を引くか。
人それぞれだと思うけど、知らなくて良いことだって結構あると思うのよ。
さてさて、映画のラスト。
これちょっと頭にクエスチョンが浮かんだけど、解説を聞いてなるほどね……となりました。ゲーム音楽のコンサートなんですね。なので聴衆がコスプレしてるのね。😅
彼女が【堕ちた】と見るか【降りてきた】と見るか。私は後者ですが、ひょっとしたら、ただ【来た】と見るべきなのかも……。だってそこにも芸術はあるからね。
皆さまはどう見ましたか？
※追記
個人的にちょっと字幕に違和感がありました。TARの話し方が不自然な男言葉だったり、ドイツ語が一部、訳されていなかったり……。吹替え版はあるのだろうか？あるとしたらその辺りどうなっているのかな？？
