思わず心の中で呟く。
ダイニングからPCのキーボードを叩く音が聞こえてくる。
キーを叩く音って、結構その人を表すよなぁ。
ほとんど音を出さない人。
誰かさんのようにEnter Keyにアクセントをつけて強いビートを刻む人。
俺みたいにブツブツと途切れがちな人。
持ち帰り仕事はやめろって言ってんのに、明日行けば休みだから木曜日のうちにやっておきたいって……。
仕事、好きなんだな。
ま、俺も自分の仕事好きだけど。
リビングのソファーに寝っ転がって、俺は薄目でその光景を見ている。
少し前のめり。
長い指は忙しく。
まつ毛。
鼻筋。
ふわっとした前髪。
いつかの祭りで、その存在を丸い菓子に例えたことを思い出す。
「終わった」
嬉しそうに言ってPCを閉じ、こちらにやって来る気配がする。
俺は慌てて目を閉じる。
逆光の中で、その大きな瞳が笑いながら俺を捉えているのを見届けて。