■こならの森155号■2001.3発行
表紙 「 桜と菜の花」
C・o・n・t・e・n・t・s
■こならの森4月号■
■155→
ヤンバルのー子の青春レストラン……4
結婚しました。…………………………5
佐野JC・教育フォーラム……………6
特集・花*花……………………………10
関東フォーラムとちぎ………………12
風の独り言………………………………18
現代国語辞典……………………………19
やぶいしゃのひとりごと………………20
書評/絵本紹介…………………………21
インフォメーション……………………22
[映画・本・CD・ビデオ・コンサート]
各市文化会館情報………………………24
タウン情報………………………………26
安佐の人名クイズ………………………27
協賛店マップ……………………………28
こならの森から…………………………30
■■■■■■■■■■■■■■■
【本文抜粋記事】
● 三人寄ればトークショー●
『「つくる」をテーマに』
大森 彌さん
(東京大学名誉教授、千葉大学教授、自治体学会代表運営委員)
岡崎昌之さん
(福井県立大学教授、自治体学会運営委員)
高橋克法さん
(高根沢町長)
関東フォーラム栃木よりトークショーの模様をダイジェストで掲載いたします。
トークショーに先立って三つの分科会が開催されました。その模様は次回より順次掲載の予定です。
司会 今日は、栃木県高根沢町で「つくる」をテーマにフォーラムを開催します。さて、分科会壱は、「環境をつくる」をテーマに生産者と消費者、都市と農村を結ぶ視点、ゴミ問題や流通との関わり合い、そして、二十一世紀に残したいものについて考えてみたいと思います。それではコーディネイターの岡崎先生にマイクをお渡ししたいと思います。
岡崎 環境という言葉事体は、幅広い意味を表わしていると思います。今日はそれを全てカバーするようにはいかないと思います。
新潟県高柳町の春日さんは都市と農村を結ぶ農山村の環境をどうするのか。これからの農村と都市との交流でどういうふうにそれを新たに構築していくのか。そして、地元の高根沢からは、これも最近始まったばかりではありますが、周辺の市町村からもなかなか高い評価を得ている、消費者と生産者を結ぶリサイクル、廃棄物を新たなものに作り変えていく、そういったテーマです。そして、日鼻さんは日本を代表する、伝統のあるキリンビールという会社の環境部門の責任者です。生産者と消費者のあいだを環境という言葉を介してお話頂きます。
まず、春日さんからお願いします。
春日 新潟県のじょんのび高柳からきました春日です。パンフレットにある「じょんのび」というのは、地元のお国言葉なのですが、のびのび楽々、気持ちいいという言葉になろうかと思います。
「気持ちいいところだね」といわれるような、そういう土地柄に高柳をしたい。本当に縁あって生まれたこの土地で、楽々のびのび暮らしたい。そういう生き方をしたい。こう考えています。
高柳町は昭和六十年から、これからの高柳の生き方、生き残りはこういうのではないか。行き着く先はこうじゃないかということを若い人たちが議論し、行政も一緒になりながらの取り組みをしてきました。六三年にはそれを少し組織だて、協議会とした。地域で頑張っている四十人。役場の若い人十人、助言者の先生方七人に入って頂いて、二年間に延べ二百回もの検討を頂いたり、集落の人と懇談会を開いたり、先進地へ見に行ったり、ということをしました。
ここで少し、町の状況を説明します。平成六年から『じょんのび村』という、コア施設を手掛けてきました。そこを中心に、それぞれの集落で個性ある取り組みをすることによって町全体がさらに元気になる。そういう集落の取り組みをする。今年の三月二六日、これまでの取り組みの総括をしていただきました。行政が自分達の計画、議会からのビジョンに基づいた計画を作って、それを行政が総括をしたのでは、あまりにも手前味噌である。ということで全町民へのアンケートや六十人の方にヒアリングをしました。それには私ども行政は一切タッチをしません。早稲田大学の学生さんから、町民のアンケート内容、ヒアリングの内容などを発表していただいて、町民の方々のいろいろな意見を得られました。
これまでの十年は、都市と高柳町との交流をいかにして作るかという十年であった。これからの十年は、今度は、おいでになった方々と集落で暮らしている人々の暮らしを結ぶような十年にしていきたい。交流ということをテーマに掲げている。お互いに取り組めて良かった。そういう生活に結びついた交流に取り組んでいくことが大切ではないか。町民アンケートでも五割くらいの方々が、これまでの取り組みについて好意的に受け止めています。私どももホッとしているところであります。
これまでの取り組み、都市との交流の中で感じていることとして、今、私が大事にしていることを申し上げます。今までの私どもは、地域のものを売るため、地域の特産品なり交流施設に人が来て頂くための活動をしてきました。原点に返って考えると、自分達がこの村で、この町で生まれて、「ああ、これだから高柳はいいよね」「これだから、ここで暮らしていく意義があるよね」という心の拠所を見失わないようにしたい。
もちろん食べていかなければいけないわけですが、心の拠所を持たなければ当然、食べていけません。経済活動も含めた近代化の取り組みの中で、食うためのことをやっているわけです。一つには自然です。町では今ブナ林の購入をしています。町の林にすれば誰からも切られる心配はない。ブナ林の中の観察もやっていく。
それから生活文化の面では、茅葺きの集落をみんなで力をあわせ、県や町からも応援してもらって、保全しています。それは見せるためのものでも、売るためのものでもないんです。自分達は茅葺きの集落に縁あって生まれ、その中で暮らしてきた。「茅葺きの集落の中で生活してきて本当に良かった」という暮らしをこれからも創り続けていく。そのために茅葺き集落をしっかりと保全しておく。
そして「食」です。地元のものをいかに美味しく食べるかということをもう一度考えよう。美味しく食べるという努力をしないと、駄目なんです。
今、勉強会でやっていることは、春とれるものは春一生懸命食べる。夏とれるものは、夏一生懸命食べる。その季節、季節でとれるものをしっかり食べれば、一年間その土地で暮らしていける栄養はいただける。大切なのは、その中でいかに美味しく食べるかです。
平成二年からは学校給食でも地元のコシヒカリを使っています。平成三年から野菜も地元でとれるものはそれを食べてもらっています。学校給食でも生産者を招待し、ニンジンのおとうさん、ジャガイモのおとうさんと。その土地に誇りを持つには、その土地の美味しいものをちゃんと食べる。そして自分達の大事な子どもにも、それを伝える。そういう農産物がとれるような環境をみんなで作っていくということが大事だと思います。
それから集いと交流です。これはイベントなどもそうですが、人を呼ぶためのイベントではなくて、自分達が楽しむためのイベントです。そこで自分達の気が合う仲間と一緒にダンスをしたり、歌を歌ったりという考え方です。町の三大祭りの内、二つの企画運営は(お金は町の方で出すのですが)町民の方にして頂いております。一つだけは、町の行事として私どもが企画しております。
それから純産品。この季節にはこの野菜、この山菜を食べる。これが高柳の味だよね。美味しかったよね。こういったものが今だんだんとなくなっている。やはりこういったものをしっかりと作れる。そういうことが大事じゃないかと思っています。
それともう一つ。私達はポスターについても、「来てください」という言葉を使わないようにしよう。売るため、人を呼ぶための取り組みは薄っぺらで、直ぐ色褪せてしまう。都会の方は、薄情とは言いませんけれども、移り気なんですよね。
ここは飽きたから、他へ行こうかと。それに合わせていたのでは、自分達の姿を見失ってしまう。自己表明をしよう。「自分達はこういう考え方でこういうふうに生きている。高柳はこういうところです。茅葺きの集落にしても何もありませんよ。お出しできるのは、地元でとれる野菜と、米と風景だけです。それでもよろしかったらおいでください」。先に自分達の素性を明かす。そういうことをしています。
一つのステップから地域の人たちがいろいろな活動を、地域でやってそれが積層し重なりあって、深みのある魅力をつくり出している。それが、都市と農村の長い交流を可能にするのではないのかなと感じています。
人口は現在二五〇〇人。昭和三十年のピーク時は一万七千人いました。周りは、海側の柏崎市と十日町に挟まれています。雪は二メートルから三メートル、多いところでは四メートル。高齢化率は四十%を超えています。
岡崎 それでは、次に日鼻さんの方から、お願いします。
日鼻 私は今、社会環境部に属しています。立場は、環境対策の企画、立案、支援です。東京工場では醸造部長をやっていました。
皆様の健康、楽しさや快適さを保つために、おいしいビールを作ってきました。非常に良いことをやってきたと思っておりました。社会環境部に来まして、地球環境を切り口にいろいろ整理してきますと、ビール工場の醸造部長というのは非常に悪いことをやっている。法律的には違反はやっていないが、地球にとっての悪さ加減が大きい。エネルギーをたくさん使うとか、廃水をいっぱい出すとか、ビール粕などの廃棄物をいっぱい出す。これらのことについて、適切に対策をとって来たわけですが、地球を切り口にした場合には気になることが多く、今それを改善しているところです。
地球環境問題を踏まえて、国をあげて循環型社会を構築しようということで進んできています。当社もそれに向けた対策をとってきています。例えばISO14001を認証を取得していますし、それからゼロミッションですね。ビール工場は全部、いわゆるゼロミッションを達成しています。それから地球温暖化防止のための二炭化炭素の排出削減を、目標を決めて進めています。それから情報開示、教育啓発。社内だけではなくいろいろなところ、小学校、中学校という学校にたいしての支援もしています。
ご存じのように、ビールは原料が大麦とホップと水です。それから酵母。こういった原料は、まさに自然の恵みです。だからこそ地球を大切にしたい。そういう思いがあります。
ビールの製造工程というのは、自然界で行われている発酵の現象を工業化したものです。ですから使っているものは、薬品とか金属とかそういったものではないんです。比較的、環境的にはめぐまれた製造をしている。しかし、出てくるものが多量ですから、うまく対応しないと、環境の大きな負荷となってしまう。「次世代の子供達に、今の地球を残していきたい」というような思いでございます。
こうした環境対策というのは企業の活動の一つであり、こういうことをやっていかないと企業は生き残れない。企業活動を適切にやっていくために、地道に活動をし
先端的な技術分野へチャレンジもやっております。例えば燃料電池です。環境に優しいエネルギーを作る設備を導入している。
素晴らしい栃木県の環境の中で、特に高根沢のような環境を大切にする地区に私どものモデル工場がある。共に情報を共有化しながら何ができるかということを、ぜひ考えていきたいと思います。
岡崎
それでは、次に地元の鈴木さんの方からお願いいたします。
鈴木 開催地であります地元、高根沢町役場の鈴木と申します。高根沢町は過去からいろいろな事業を展開してきたわけであります。
全町圃場整備事業や構造改善事業による営農集団の育成と併せて、農村農業の再構築を目指して、お祭りの復活とか、いわゆるハードとソフトを含めてやってきたわけでありますが、やはり農村から変わっていかないといけない。そういうことで平成六年に、リフレッシュビレッジ、「元気あっぷむら」というのを造ったわけです。
これは都市と農村の交流を通じて新しい農業形態が創設できるのではないか。それにはアンテナショップとかがいろいろな形であったわけですが、例えば、高根沢町がアンテナショップを作ってそこへ年間、相当数の人が他から来て頂くとしても相当費用がかかる。そうであるならば、お客さまが町に来て頂いて、町を知って頂くのが一番良いとの考えで施設整備を進めました。農村の風景を利用した中ではじめて意義が出てくるのだろう。高根沢町へ来て、その風土の中で食べて頂く。その結果、米が美味しい、農産物が美味しい。おいで頂いて、そうした高根沢町の良さを知って頂くことが大切です。
メニューの方も変わっています。みんなが元気になって欲しい。訪れた方も元気になってほしい。また、地域の方々も元気になってほしい。という形のメニューとなっています。
いずれは、こだわりということで健康指向や自然指向に沿っていくつもりです。
この「元気あっぷむら」の仕組みで一番大きいことはサテライトシステムということです。農業や農業施設の総てのものを有機的に結合しましょうということで、各集落で行っている村づくりの加工所や直売所、施設園芸農家などや商工業者などの商店と結合する。
リフレッシュビレッジ構想により総てを計画していますが、最終的には農産物にもこだわっていきたい。農産物の価格の低迷ということですが、それをどうにかできないか。新しい農業形態、そして消費者の動向を捉え、その結果、有機なりに進んで行くという見通しの中で、問題解決に取り組んでいます。一般的には、生ゴミの取り扱いは、他の市町村では環境サイドからそれぞれの消費者の方々の要求をリサーチして処理していきますが、高根沢町では農業をとおして、「地産地消」によりまちづくりにつなげようとしたわけです。
まちづくりの基本計画の中にゴミの問題がある。消費者が出しているゴミを土づくりセンターで受けて、酪農の方の糞尿を入れて有機質の堆肥を作る。それを使って有機などの美味しい農産物を農家の方に作ってもらう。今度はそれを町内の方に食べてもらう。
いわゆる、ゴミでもってまちづくりができないか。一番悩んでいるのが給食です。やはり高根沢町は農村地帯です。ほとんど米が主力の町です。ですから、まず自分達が作った米を自分達の子どもに食べさせたい。そういうことで、給食のルートを作れないか、という検討をしています。土づくりセンターができることによって、それを大きく位置づけできる。また、町の生活も変わっていくし、いろいろな試みもできるものです。
昨年の農業基本法を受けて、今各地で一斉にマスタープランを作っています。私どもも、平成二二年くらいをめどにした、生産コストの低減、有機農業、美味しい農産物の生産提供などをテーマとしたマスタープランを作ろうと一生懸命やっています。まず農民の方が元気になって、頑張ってほしい。
今までは農産物が消費者のために町を横切って入ってきた。そうではなくて、農村(ここ)から市街地を繋ぐようにする。そういう仕組みが一番大切かなと思います。
話は前後しますが、五月十五日の「食を考える協議会」でも、いろいろな意見が出ています。例えば、全国の学校給食を通じて食の安全性を学ぶことも大切とか。学校給食を充実させよう。子どもの食生活の重要性を教え、その中で地域の旬の農産物を大事にする。
NHKの方がおっしゃったのは、どこの国も自分のお国の食材、農産物を大事にしている。そしてそれを食べている。やはり輸入に頼っている日本の現状をどうにかしないといけない。
いずれにしても、この土づくりセンターができることによって安全で、安心な農産物がきちんと生産できる。それが大切なことです。
それから高根沢町の都市と農村の交流。従来の考え方、極論から申し上げますと消費者と生産者がいて、生産者の方にリスクがある、と個人的には思っています。
新聞などを見ますと、消費者が農家から前払いで直接農産物を買っている。そういう仕組みがアメリカなどで行われている。地域を支える農業を市民運動で行っている。今までと形態が違った中で、生産者と消費者が互角となった中での取り組みで地域農業を支える。そういう考え方にしていかないと、共生はできないのではないか。そのためにも、まちづくり関連に対しては、考え方も含めて早期に達成していきたいと思います。
岡崎 ありがとうございました。
地元の方も多いのですが、他から来ている方のために農業の概略、作物であれば何が中心か。それから土づくりセンターを運営していくためには酪農家、牛が必要ですが、だいたいどれくらいのボリュームか教えてください。
鈴木 高根沢町の農業でありますが、水田が四千ha。殆どが米、麦、大豆作り農家が中心です。首都圏に近い、立地条件が良い。また、どんな農産物でもできる。土づくりセンターの原材料としての家畜の糞尿は土づくりセンターが管理しているということではなくて、酪農組合の方が管理してる。全体で五十戸くらいなのですが、連携しているのは三二戸の農家です。総数にして五千頭くらいの牛で、連携しているのは約千八百頭くらいになります。
土づくりセンターでやるというよりも施設をみんなで支えていく、そういう形態にしています。ですから町の施設であるだけでなく農家の方の施設でもある。そういう位置づけをしました。
岡崎 ありがとうございました。
(後略)
表紙 「 桜と菜の花」
C・o・n・t・e・n・t・s
■こならの森4月号■
■155→
ヤンバルのー子の青春レストラン……4
結婚しました。…………………………5
佐野JC・教育フォーラム……………6
特集・花*花……………………………10
関東フォーラムとちぎ………………12
風の独り言………………………………18
現代国語辞典……………………………19
やぶいしゃのひとりごと………………20
書評/絵本紹介…………………………21
インフォメーション……………………22
[映画・本・CD・ビデオ・コンサート]
各市文化会館情報………………………24
タウン情報………………………………26
安佐の人名クイズ………………………27
協賛店マップ……………………………28
こならの森から…………………………30
■■■■■■■■■■■■■■■
【本文抜粋記事】
● 三人寄ればトークショー●
『「つくる」をテーマに』
大森 彌さん
(東京大学名誉教授、千葉大学教授、自治体学会代表運営委員)
岡崎昌之さん
(福井県立大学教授、自治体学会運営委員)
高橋克法さん
(高根沢町長)
関東フォーラム栃木よりトークショーの模様をダイジェストで掲載いたします。
トークショーに先立って三つの分科会が開催されました。その模様は次回より順次掲載の予定です。
司会 今日は、栃木県高根沢町で「つくる」をテーマにフォーラムを開催します。さて、分科会壱は、「環境をつくる」をテーマに生産者と消費者、都市と農村を結ぶ視点、ゴミ問題や流通との関わり合い、そして、二十一世紀に残したいものについて考えてみたいと思います。それではコーディネイターの岡崎先生にマイクをお渡ししたいと思います。
岡崎 環境という言葉事体は、幅広い意味を表わしていると思います。今日はそれを全てカバーするようにはいかないと思います。
新潟県高柳町の春日さんは都市と農村を結ぶ農山村の環境をどうするのか。これからの農村と都市との交流でどういうふうにそれを新たに構築していくのか。そして、地元の高根沢からは、これも最近始まったばかりではありますが、周辺の市町村からもなかなか高い評価を得ている、消費者と生産者を結ぶリサイクル、廃棄物を新たなものに作り変えていく、そういったテーマです。そして、日鼻さんは日本を代表する、伝統のあるキリンビールという会社の環境部門の責任者です。生産者と消費者のあいだを環境という言葉を介してお話頂きます。
まず、春日さんからお願いします。
春日 新潟県のじょんのび高柳からきました春日です。パンフレットにある「じょんのび」というのは、地元のお国言葉なのですが、のびのび楽々、気持ちいいという言葉になろうかと思います。
「気持ちいいところだね」といわれるような、そういう土地柄に高柳をしたい。本当に縁あって生まれたこの土地で、楽々のびのび暮らしたい。そういう生き方をしたい。こう考えています。
高柳町は昭和六十年から、これからの高柳の生き方、生き残りはこういうのではないか。行き着く先はこうじゃないかということを若い人たちが議論し、行政も一緒になりながらの取り組みをしてきました。六三年にはそれを少し組織だて、協議会とした。地域で頑張っている四十人。役場の若い人十人、助言者の先生方七人に入って頂いて、二年間に延べ二百回もの検討を頂いたり、集落の人と懇談会を開いたり、先進地へ見に行ったり、ということをしました。
ここで少し、町の状況を説明します。平成六年から『じょんのび村』という、コア施設を手掛けてきました。そこを中心に、それぞれの集落で個性ある取り組みをすることによって町全体がさらに元気になる。そういう集落の取り組みをする。今年の三月二六日、これまでの取り組みの総括をしていただきました。行政が自分達の計画、議会からのビジョンに基づいた計画を作って、それを行政が総括をしたのでは、あまりにも手前味噌である。ということで全町民へのアンケートや六十人の方にヒアリングをしました。それには私ども行政は一切タッチをしません。早稲田大学の学生さんから、町民のアンケート内容、ヒアリングの内容などを発表していただいて、町民の方々のいろいろな意見を得られました。
これまでの十年は、都市と高柳町との交流をいかにして作るかという十年であった。これからの十年は、今度は、おいでになった方々と集落で暮らしている人々の暮らしを結ぶような十年にしていきたい。交流ということをテーマに掲げている。お互いに取り組めて良かった。そういう生活に結びついた交流に取り組んでいくことが大切ではないか。町民アンケートでも五割くらいの方々が、これまでの取り組みについて好意的に受け止めています。私どももホッとしているところであります。
これまでの取り組み、都市との交流の中で感じていることとして、今、私が大事にしていることを申し上げます。今までの私どもは、地域のものを売るため、地域の特産品なり交流施設に人が来て頂くための活動をしてきました。原点に返って考えると、自分達がこの村で、この町で生まれて、「ああ、これだから高柳はいいよね」「これだから、ここで暮らしていく意義があるよね」という心の拠所を見失わないようにしたい。
もちろん食べていかなければいけないわけですが、心の拠所を持たなければ当然、食べていけません。経済活動も含めた近代化の取り組みの中で、食うためのことをやっているわけです。一つには自然です。町では今ブナ林の購入をしています。町の林にすれば誰からも切られる心配はない。ブナ林の中の観察もやっていく。
それから生活文化の面では、茅葺きの集落をみんなで力をあわせ、県や町からも応援してもらって、保全しています。それは見せるためのものでも、売るためのものでもないんです。自分達は茅葺きの集落に縁あって生まれ、その中で暮らしてきた。「茅葺きの集落の中で生活してきて本当に良かった」という暮らしをこれからも創り続けていく。そのために茅葺き集落をしっかりと保全しておく。
そして「食」です。地元のものをいかに美味しく食べるかということをもう一度考えよう。美味しく食べるという努力をしないと、駄目なんです。
今、勉強会でやっていることは、春とれるものは春一生懸命食べる。夏とれるものは、夏一生懸命食べる。その季節、季節でとれるものをしっかり食べれば、一年間その土地で暮らしていける栄養はいただける。大切なのは、その中でいかに美味しく食べるかです。
平成二年からは学校給食でも地元のコシヒカリを使っています。平成三年から野菜も地元でとれるものはそれを食べてもらっています。学校給食でも生産者を招待し、ニンジンのおとうさん、ジャガイモのおとうさんと。その土地に誇りを持つには、その土地の美味しいものをちゃんと食べる。そして自分達の大事な子どもにも、それを伝える。そういう農産物がとれるような環境をみんなで作っていくということが大事だと思います。
それから集いと交流です。これはイベントなどもそうですが、人を呼ぶためのイベントではなくて、自分達が楽しむためのイベントです。そこで自分達の気が合う仲間と一緒にダンスをしたり、歌を歌ったりという考え方です。町の三大祭りの内、二つの企画運営は(お金は町の方で出すのですが)町民の方にして頂いております。一つだけは、町の行事として私どもが企画しております。
それから純産品。この季節にはこの野菜、この山菜を食べる。これが高柳の味だよね。美味しかったよね。こういったものが今だんだんとなくなっている。やはりこういったものをしっかりと作れる。そういうことが大事じゃないかと思っています。
それともう一つ。私達はポスターについても、「来てください」という言葉を使わないようにしよう。売るため、人を呼ぶための取り組みは薄っぺらで、直ぐ色褪せてしまう。都会の方は、薄情とは言いませんけれども、移り気なんですよね。
ここは飽きたから、他へ行こうかと。それに合わせていたのでは、自分達の姿を見失ってしまう。自己表明をしよう。「自分達はこういう考え方でこういうふうに生きている。高柳はこういうところです。茅葺きの集落にしても何もありませんよ。お出しできるのは、地元でとれる野菜と、米と風景だけです。それでもよろしかったらおいでください」。先に自分達の素性を明かす。そういうことをしています。
一つのステップから地域の人たちがいろいろな活動を、地域でやってそれが積層し重なりあって、深みのある魅力をつくり出している。それが、都市と農村の長い交流を可能にするのではないのかなと感じています。
人口は現在二五〇〇人。昭和三十年のピーク時は一万七千人いました。周りは、海側の柏崎市と十日町に挟まれています。雪は二メートルから三メートル、多いところでは四メートル。高齢化率は四十%を超えています。
岡崎 それでは、次に日鼻さんの方から、お願いします。
日鼻 私は今、社会環境部に属しています。立場は、環境対策の企画、立案、支援です。東京工場では醸造部長をやっていました。
皆様の健康、楽しさや快適さを保つために、おいしいビールを作ってきました。非常に良いことをやってきたと思っておりました。社会環境部に来まして、地球環境を切り口にいろいろ整理してきますと、ビール工場の醸造部長というのは非常に悪いことをやっている。法律的には違反はやっていないが、地球にとっての悪さ加減が大きい。エネルギーをたくさん使うとか、廃水をいっぱい出すとか、ビール粕などの廃棄物をいっぱい出す。これらのことについて、適切に対策をとって来たわけですが、地球を切り口にした場合には気になることが多く、今それを改善しているところです。
地球環境問題を踏まえて、国をあげて循環型社会を構築しようということで進んできています。当社もそれに向けた対策をとってきています。例えばISO14001を認証を取得していますし、それからゼロミッションですね。ビール工場は全部、いわゆるゼロミッションを達成しています。それから地球温暖化防止のための二炭化炭素の排出削減を、目標を決めて進めています。それから情報開示、教育啓発。社内だけではなくいろいろなところ、小学校、中学校という学校にたいしての支援もしています。
ご存じのように、ビールは原料が大麦とホップと水です。それから酵母。こういった原料は、まさに自然の恵みです。だからこそ地球を大切にしたい。そういう思いがあります。
ビールの製造工程というのは、自然界で行われている発酵の現象を工業化したものです。ですから使っているものは、薬品とか金属とかそういったものではないんです。比較的、環境的にはめぐまれた製造をしている。しかし、出てくるものが多量ですから、うまく対応しないと、環境の大きな負荷となってしまう。「次世代の子供達に、今の地球を残していきたい」というような思いでございます。
こうした環境対策というのは企業の活動の一つであり、こういうことをやっていかないと企業は生き残れない。企業活動を適切にやっていくために、地道に活動をし
先端的な技術分野へチャレンジもやっております。例えば燃料電池です。環境に優しいエネルギーを作る設備を導入している。
素晴らしい栃木県の環境の中で、特に高根沢のような環境を大切にする地区に私どものモデル工場がある。共に情報を共有化しながら何ができるかということを、ぜひ考えていきたいと思います。
岡崎
それでは、次に地元の鈴木さんの方からお願いいたします。
鈴木 開催地であります地元、高根沢町役場の鈴木と申します。高根沢町は過去からいろいろな事業を展開してきたわけであります。
全町圃場整備事業や構造改善事業による営農集団の育成と併せて、農村農業の再構築を目指して、お祭りの復活とか、いわゆるハードとソフトを含めてやってきたわけでありますが、やはり農村から変わっていかないといけない。そういうことで平成六年に、リフレッシュビレッジ、「元気あっぷむら」というのを造ったわけです。
これは都市と農村の交流を通じて新しい農業形態が創設できるのではないか。それにはアンテナショップとかがいろいろな形であったわけですが、例えば、高根沢町がアンテナショップを作ってそこへ年間、相当数の人が他から来て頂くとしても相当費用がかかる。そうであるならば、お客さまが町に来て頂いて、町を知って頂くのが一番良いとの考えで施設整備を進めました。農村の風景を利用した中ではじめて意義が出てくるのだろう。高根沢町へ来て、その風土の中で食べて頂く。その結果、米が美味しい、農産物が美味しい。おいで頂いて、そうした高根沢町の良さを知って頂くことが大切です。
メニューの方も変わっています。みんなが元気になって欲しい。訪れた方も元気になってほしい。また、地域の方々も元気になってほしい。という形のメニューとなっています。
いずれは、こだわりということで健康指向や自然指向に沿っていくつもりです。
この「元気あっぷむら」の仕組みで一番大きいことはサテライトシステムということです。農業や農業施設の総てのものを有機的に結合しましょうということで、各集落で行っている村づくりの加工所や直売所、施設園芸農家などや商工業者などの商店と結合する。
リフレッシュビレッジ構想により総てを計画していますが、最終的には農産物にもこだわっていきたい。農産物の価格の低迷ということですが、それをどうにかできないか。新しい農業形態、そして消費者の動向を捉え、その結果、有機なりに進んで行くという見通しの中で、問題解決に取り組んでいます。一般的には、生ゴミの取り扱いは、他の市町村では環境サイドからそれぞれの消費者の方々の要求をリサーチして処理していきますが、高根沢町では農業をとおして、「地産地消」によりまちづくりにつなげようとしたわけです。
まちづくりの基本計画の中にゴミの問題がある。消費者が出しているゴミを土づくりセンターで受けて、酪農の方の糞尿を入れて有機質の堆肥を作る。それを使って有機などの美味しい農産物を農家の方に作ってもらう。今度はそれを町内の方に食べてもらう。
いわゆる、ゴミでもってまちづくりができないか。一番悩んでいるのが給食です。やはり高根沢町は農村地帯です。ほとんど米が主力の町です。ですから、まず自分達が作った米を自分達の子どもに食べさせたい。そういうことで、給食のルートを作れないか、という検討をしています。土づくりセンターができることによって、それを大きく位置づけできる。また、町の生活も変わっていくし、いろいろな試みもできるものです。
昨年の農業基本法を受けて、今各地で一斉にマスタープランを作っています。私どもも、平成二二年くらいをめどにした、生産コストの低減、有機農業、美味しい農産物の生産提供などをテーマとしたマスタープランを作ろうと一生懸命やっています。まず農民の方が元気になって、頑張ってほしい。
今までは農産物が消費者のために町を横切って入ってきた。そうではなくて、農村(ここ)から市街地を繋ぐようにする。そういう仕組みが一番大切かなと思います。
話は前後しますが、五月十五日の「食を考える協議会」でも、いろいろな意見が出ています。例えば、全国の学校給食を通じて食の安全性を学ぶことも大切とか。学校給食を充実させよう。子どもの食生活の重要性を教え、その中で地域の旬の農産物を大事にする。
NHKの方がおっしゃったのは、どこの国も自分のお国の食材、農産物を大事にしている。そしてそれを食べている。やはり輸入に頼っている日本の現状をどうにかしないといけない。
いずれにしても、この土づくりセンターができることによって安全で、安心な農産物がきちんと生産できる。それが大切なことです。
それから高根沢町の都市と農村の交流。従来の考え方、極論から申し上げますと消費者と生産者がいて、生産者の方にリスクがある、と個人的には思っています。
新聞などを見ますと、消費者が農家から前払いで直接農産物を買っている。そういう仕組みがアメリカなどで行われている。地域を支える農業を市民運動で行っている。今までと形態が違った中で、生産者と消費者が互角となった中での取り組みで地域農業を支える。そういう考え方にしていかないと、共生はできないのではないか。そのためにも、まちづくり関連に対しては、考え方も含めて早期に達成していきたいと思います。
岡崎 ありがとうございました。
地元の方も多いのですが、他から来ている方のために農業の概略、作物であれば何が中心か。それから土づくりセンターを運営していくためには酪農家、牛が必要ですが、だいたいどれくらいのボリュームか教えてください。
鈴木 高根沢町の農業でありますが、水田が四千ha。殆どが米、麦、大豆作り農家が中心です。首都圏に近い、立地条件が良い。また、どんな農産物でもできる。土づくりセンターの原材料としての家畜の糞尿は土づくりセンターが管理しているということではなくて、酪農組合の方が管理してる。全体で五十戸くらいなのですが、連携しているのは三二戸の農家です。総数にして五千頭くらいの牛で、連携しているのは約千八百頭くらいになります。
土づくりセンターでやるというよりも施設をみんなで支えていく、そういう形態にしています。ですから町の施設であるだけでなく農家の方の施設でもある。そういう位置づけをしました。
岡崎 ありがとうございました。
(後略)