見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

クリチバ市役所にて(その2)

2007-12-19 09:06:13 | 南米
クリチバ市役所広報課の二人にヒアリングする中で、サンドラさんとパウロさんは何度か「この30年間に」という言い方をした。
マスタープランが策定されたのは1966年だが、その5年後、プラン作成メンバーの一人であるジャイメル・レルネル氏が市長に就任した時から、クリチバ市は大きく変化したということなのだ。
プランを実行させる強い政治的意思をもっていたと評価されるレルネル氏の影響力がいかに大きいかが、彼らの言葉から伺える。

そしてまた、クリチバ市に関する質問の答えに「クリチバは○○。そして、メトロ・エリア(大都市圏)では○○」という追加説明もたびたび出た。クリチバ市は人口180万の大都市に成長したが、近年では周辺の25都市との大都市圏を形成し、広域行政を進展させている。
「クリチバ市の人口は180万ですが、メトロエリアは310万。クリチバのインフラ整備に引き寄せられ、周辺から多くの市民が買い物や行楽にやってくるのです。周辺都市からクリチバ市内の職場に通勤する人たちも少なくありません」とサンドラさん。
公共交通政策や環境政策など、クリチバがイニシアチブを執って進めている広域行政事業も増える一方だと言う。
大都市圏が抱える課題は少なくないに違いない。が、市長と市職員の、課題解決への前向きなエネルギーを二人の話から十分感じることができる。



社会制度で医療を支えているブラジルでは、医療費は基本的に無料であるが、自治体によって医療機関の設置数に差はある。無料とは言え、医療機関が不足する地域では、医師に見てもらうまでに大変な時間を要する場合も少なくない。
クリチバ市民の健康を守るヘルスケアセンターは、市内130ヵ所に及び、内、8ヵ所は24時間の救急医療体制。
「この周辺の都市では、抜群の医療体制を誇ります」と二人は笑顔でヘルスケアセンターの写真を広げた。

今年度総予算額30億リアル。この1月から始まる2008年度予算は、32億リアル。毎年、予算額は伸びている。

2時間のインタビューに根気良くつきあってくれたパウロさんの前職は、ジャーナリスト。現市長に市役所広報課にひっぱられた。東京の区行政に研修滞在したこともあると言う。「世界に注目されているクリチバ市役所に勤務されて幸せですね」と言うと。二人は満面の笑顔で「Yes」と言った。


↑現市長のパブリックミーティング(市民集会)を報じる広報紙


↑広報課の落ち着いたスペース

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2 コメント

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素晴らしいレポート (pechka)
2007-12-27 08:29:49
 素晴らしい現地レポートで、痒いところにしっかり手が届いていました。ありがとうございます。
 ここまで読んできて思ったことは、クリチバのみがこういう計画を実行に移すことができたのはなぜか、ということでした。都市計画の優れた専門家や、強いリーダーシップを発揮できる方々がいる都市はクリチバだけではない。それなのになぜクリチバだけが実行可能だったのか。その時にどんな偶然がありどんな必然性があったのか。
 近代工業への反省が1960年代から世界的に広がりはじめ、1970年代にその解決にむけた取り組みが世界で始まったということとも関係がありそうな気もしますし、ブラジルの置かれた経済的な状況も関係あるのでしょう。
 というような新たな興味がわいてきました。それもどきどきするような優れたレポートのおかげです。
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同じことを自問しています (ワイン)
2007-12-30 01:24:53
pechkaさん、励ましの言葉をありがとうございました。半分頭が眠りながら打っていたので、誤字脱字が目立ち、読み難い部分が多々ありました。読み返して恥ずかしくなりながら、徐々に修正しています。
「偶然」と「必然」について私も同様の問いを自分に抱えています。「出会い」で片つけるにはあまりに短絡的ですが、「その街」が「その人たち」と出会ったというも一員で、理屈では解決できないものかもしれまえせん。となると、日本の各自治体が何をどうすればいいのかというヒントには何も結びつきませんが。
住居地の「価値」を何に求めるのか、人によっても異なるのだと、クリチバ市を批判するブラジル人と話をしていても感じました。故郷を離れ、新たな住居地を選んだ人たちは、「住む場所の価値」を明確に意識しているのでしょうね。
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