これは平成15年の産業連関表等をもとにした分析ですが、
●産業部門の域外との収支は▲563 億円
域外市場産業が域外に製品を出荷すること等により獲得している域外マネーは530 億円。
また、域外から製品や材料等を購入する等域外に支払っている金額は967 億円。
域内市場産業が域外から獲得している域外マネーは327 億円。また、域外からサービス等を購入している金額は453 億円。
域外市場産業と域内市場産業を合わせた収支は▲563 億円。一方で、域外から流入しているマネーには交付税、年金等があり、この額は域外との収支の赤字額を上回っている。この上回った差額は貯蓄に回っているものと考えられる。
なお、預貸比率が56%であることから、貯蓄のうち域内での投資に回る額は半分程度に過ぎず、残りは大都市圏での投資や証券市場等へ流出していると考えられる。
●住民の所得は域内市場産業の方が大きい
住民が域外市場産業から得ている賃金は172 億円であるのに対し、域内市場産業の賃金は1,037 億円であり、住民の雇用者所得を支える上では、域内市場産業の方が大きな役割を果たしている。
●域内市場産業は公的支出に依存
域内市場産業の生産額2,691 億円に対して公的支出が996 億円であり、域内市場産業は公的支出に依存する構造になっている。
今後、財政上の制約等により公的支出が減少すると、自然体であれば域内市場産業が縮小することになり、域外市場産業が域外マネーを獲得していく必要がある。
もちろんこの分析自体は平成15年のデータですから、今は全体で経済規模自体は更に縮小していると思いますが、益田市においては、業種別には、「サービス業」(24.3%)、「不動産業」(12.6%)、「建設業」(10.4%)などの比率が高く、国及び県全体の数値と比較すると「農林水産業」、「建設業」、「サービス業」の割合が高くなっていますが、この比率の順位については、変わっていないことと思います。
今回益田市が策定した産業振興ビジョンにおいて、更にそのサービス業について以下のように分析されています。
サービス業は、平成17 年の就業者数が8,074 人で平成12 年に比べて3.6%増加
しています。平成18 年の総生産額は約416 億円で全産業の24.3%を占める産業で
平成12 年と比較すると15.6%増加しています。
地域経済構造分析によると算出額の内訳は「医療・保健・社会保障・介護」が
サービス業全体の約3 割、対事業所サービスと対個人サービスがそれぞれ約2 割
となっており、特に「医療・保健・介護」部門の域際収支の黒字が顕著でサービス業全体として域際収支を黒字としています。
益田市においても、これからさらに少子高齢化と人口減少が同時に進み続ける中で、増え続ける民生費をどう考えていくのか。
単に社会保障を「負担と給付」というとらえ方だけでなく、それが経済にどう影響を及ぼしているのか、益田市の社会経済全体の中で社会保障がどんな役割を果たしているのかを多面的に考えていく必要があると思います。
以前に読んだ本は、まさにこうした視点で分析がされており、参考になります。
社会保障と日本経済―「社会市場」の理論と実証 (総合研究現代日本経済分析 1)京極 高宣慶應義塾大学出版会このアイテムの詳細を見る |