と き:平成23年6月5日(日) ところ:鳥取県東伯郡湯梨浜町中央公民館 テーマ:「暮らしと広葉樹」 講 師:広葉樹文化協会会長 岸本 潤 ● 先般、NPO法人日本野鳥の会鳥取支部(福田紀生支部長)のご依頼で講演をしました。 この講演は、テーマは自由と言うことで「暮らしと広葉樹」とし、例によって私達のもっとも身近な自然である「里山の雑木林」見直しの重要性についてお話をしました。野鳥は門外漢のこととて、話はもっぱら雑木林のことに終始しましたが、中で少しだけ俳句歳時記の中の野鳥について触れてみました。 歳時記(日本大歳時記・講談社)には、日本の春夏秋冬に亙り時候、天文、地理、生活、行事、動物、植物に関する俳句の季題が掲載され、日本の四季の中の暮らしの豊かさが網羅されています。その中で俳句の重要なよりどころとして季題は約5000あるとされ、そのうち基本季題とされるもの約500ほど挙げられています。 野鳥に関する基本季題は 春 9 鶯・雉・雲雀・燕(百千鳥・引鴨・帰雁・鳥雲に入る・さえずり) 夏 4 水鶏・翡翠・時鳥 (老鶯) 秋 7 雁.鴨.鶺鴒.鵙.鶉(稲雀.渡り鳥) 冬 8 千鳥.鴨.鴛鴦.鷹.鳰(寒雀.寒鴉.水鳥) 新年3 初雀.初鴉.初鶏 の合計31とされています。これらが農耕生活の明るい森と共生してきた野鳥たちの代表ということです。 現代の工業化社会ではほとんど無用視され放置されている雑木林はだんだんと明るい森から暗い森へと先祖返りしつつあります。目に見えぬようでもこの森の生態変化は野鳥たちの生態変化に波及しているものと思われます。明るい森の野鳥たちの動向は自然生態の指標として注目すべきです。 日本人の暮らしのために、はかり知れぬ恩恵をもたらしてきた「里山の雑木林」、現代社会と共生できる形を見出して回生をはかり、止めどない先祖返りの流れを喰い止めたいものです。