お父さんは僕の憧れ

先日、捨てるつもりで整理していたカセットケース入れ（古い…）を見つけたいっくんは、物欲が少ない彼にしては珍しく「これ、ちょうだい」とそれを持っていった。
何を入れるのかと見ていたら、大好きなブロックなどを丁寧に詰め込み、時折私の目の前で組み立てて、何やらかしこまった口調で説明などをする。

またばらばらにして、ケースに戻すと、蓋をして「では」と部屋を出て行く。
なにやらサラリーマン気取りである。
なるほど…。
「いっくんはお父さんなのか」
ニヤつきたいのを堪えながら声をかけると
「ん、今からえらい人（社長さんのこと）の所に仕事しに行くねん」と、出勤途中であることを教えてくれた。

いつも伴侶が家を出るときに、帰ってきたときに、手にしている黒いカバン。
そこにいっくんは仕事人のステータスのような憧れを抱いているのかもしれない。
黒いカバンを肌身離さず持ち歩くいっくんは、このスタイルでお姉ちゃんのお迎えにも出かけた。
伴侶には反発するような態度が目立ついっくんであるが、やっぱり憧れと、ライバル心の入り混じる、複雑な気持ちを抱いていることに間違いはないようである。
よく生意気な事も言うが、嬉しそうに黒いケースを持ち歩くいっくんを見ていると、なんだかほほえましい気持ちで見つめることが出来るのであった。