
この古い旅館は、父がまだ若かった頃からお世話になったという、思い出がたくさん詰まった場所なのだ。

窓辺からは海が見渡せる。
窓の外がいきなり海、という光景もちょっと贅沢。
事業をしていた父は、ここで一番高い料理を持ってきてほしいとお願いし、食べきれないほどの料理を目の前に、旅館長の挨拶などを受けたという。
仕事の発展を願う、父なりの願掛けだったのだろう。
その後も付き合いがあったらしいが、その館長も今はもう亡くなったのだとか…。

満潮。
窓の外はすぐ波が迫っている。
釣り糸を垂らせば何か釣れそうだ、と伴侶と父、いっくんが盛り上がる。

料理が運ばれてきた。
食べ切れるのかしら!?
不安になるほど。

皆で写真を撮ると、背格好が皆同じくらいで驚く。
こいちゃんが生まれて16年。
いつまでも元気なような父と母も、そして勿論私も、確実に歳をとっている。

このノンアルコールビールは美味しい!
自宅に車で帰らなければならない私達に母が頼んでくれたノンアルコールがやたら美味しく感じる。

魚卵も、こんなスケールで出てくるのは港町だから?
タイの刺し身も、サワラも新鮮でたまらない。
これは都会ではなかなか食べられないなぁ…。

鯛のしゃぶしゃぶがまた絶品。
半生で軽く浸して食べると最高である。

紅葉おろしを入れたポン酢がよく合う。
量がたくさんで食べきれなかった刺し身も便乗してしゃぶしゃぶ…。
固形燃料よ、もう少し頑張れ。

甘辛いすき焼きも何だか懐かしい味。
これが田舎の味かもしれない。
実家を離れて26年も経つと、何だか忘れてしまうことが多数。

天ぷらには魚はもちろん松茸まで入っていて、とっても美味しい。

まつたけご飯もいい香り!
けれどちょっと食べ切れないので持ち帰り用の容器をもらうことに。
これを残したらバチが当たる。

デザートのメロン。
こいちゃんが小さかった頃、船の上で振る舞われた料理の最後にメロンが出てきたことがある。
目を丸くして美味しいと食べたことから、周りにいた親切なおじさんたちがこぞってこいちゃんにメロンを回してくれたことがあったのを皆で昨日のことのように話した。
懐かしい、ついこの間のことだったような、遠い遠い昔のことのような…。
私の中ではまだ子供のようなこいちゃんも、数カ月を海外で過ごすような実はすっかり大人…。
何だか、嬉しく寂しいのはわがままなんだろうか。

食後の運動?
男たちはのほほんだ。
これでもかと豪華な料理を頂いて、皆でごちそうさまをした。

満腹で旅館を後にし、散歩に出かけることに。
こうして実家に度々帰れたら、と思う。
時間の許す限り、父と母が元気な様子を見ることができたら、そして、こいちゃんといっくんの元気な様子を報告できたら、これ以上幸せな事はないと思うのだ。