今日、チャイムがなり、当人のママが「中見る?」と誘ってくれたので、大喜びで初の見学会となった。
明日は引越しの日となる為、荷物を運び込む前の今日が一番綺麗な状態だから、と謙遜するが、綺麗好きの彼女のことだ、きっとすばらしい部屋になるのであろう。
どきどきしながらドアを開けると白が基調の広々とした玄関には、たっぷりのシューズBOX。
さらに扉を開けるとそこにはさらにシューズをストックできるスペースがずらり。
我が家など、小さな靴棚が玄関にあるも、入らなくなった靴は、その靴棚の下に押し込むか、捨ててしまうのだ。
さらにロビー…ではなく居間に進むとドでかいテレビに吹き抜けのすばらしいスペースが広がる。
窓がふんだんに組み込まれ、一般家庭ではほとんど目にしない帯状のカーテンが吹き抜けの高い天井はるか上から長く延びている。
一般市民の私は思わず「ど…どーやって掃除すんの?」と余計な心配をぶつけてしまっていた。
床は実に柔らかなイメージの幅広のフローリング。
陽が差し込むその居間は温かみ抜群のスペースである。
奥には鮮麗されたキッチンが広がり、ここもこげ茶と白でコーディネートされており美しい。
キッチンのデザインに合わせてパソコンを購入したと言い、料理をしながらでもパソコンが出来るほど便利な場所に位置され、動線もばっちり。
ビルトインの食器洗浄機、大きめオーブン、スマートな収納スペース…そこには憧れが凝縮されており、ひたすらため息ばかりである。
そんな素敵なキッチンも、私のコーディネートにかかれば、恐ろしくちぐはぐなデザインに成り下がっていくことは判っているのだが、憧れるくらいは自由だろう。
以前、どこかの展示会場か何かで「便利な道具があるもんだ~」と眺めていたその設備が、こんな身近にあるなんて、という感じである。
すでに一般化しているのかもしれないが、完全室内干しは予算がかかりそうで、実際に設置されたものを見たのも始めてである。
ここで気づいた、各部屋のドア。
各部屋を仕切るドアはスライドドアだが、ドア全体がすっぽり壁の内部に隠れてしまう構造で、見た目もすっきり。
「ドアを開けておくことが多いから、このタイプにした」と彼女は言う。
ここにもこだわりが見え隠れ、である。
私などは我が家のドアの角と言う角で足指を強打した。
そんな不恰好なシチュエーションはこの家には存在しないわけである。
2階に上がると、子供部屋や寝室。
各部屋とも広々としており、1階からの吹き抜けデザインのおかげで、2階特有の部屋と部屋との隔離感が全くない。
部屋と部屋をつなぐ廊下も広々と感じ、吹き抜けのメリット全開である。
まだ何も荷物が置かれていないから、の言葉に甘え、ドアを開けて回っていた私は空調のドアを何かの部屋と思って開けてびっくりしてしまった。
そうなのだ。
暖房器具は置かれていないのに、何故かほのぬくいこの家に、ガスファンヒータは置かれていないし、灯油ストーブも使っていない!
コタツなんて、絶対似合わないこの家は、集中空調管理システム!
私はどうやらホテルに迷い込んだようである…。
あまりの現状にくらくらする頭を抱えつつ、この家を後にした。
「ええもん見せてもろた…」思わず何度も口にしてしまう。
我が家までの帰り道、不思議に思っていたことをもう一度尋ねてみた。
あの広い広い家に…
「もう一度聞くけど、4人で暮らすんだよね…???」
「そうだよ~、けど広すぎて寂しいから1階の和室(他室に比べるとちょっと狭い間取り)に4人で寝るんだ~。」
と、彼女が朗らかに笑ったのでズッコケた。
どんなに富豪でも、美人でもみんなから決して妬まれたり嫌味を言われたりしない彼女のよさはきっとこんなところにも現れているのだろう。
いよいよ明日に引越しを控え、多忙であっただろうに、野次馬を招き入れてくれた彼女には本当に感謝感激なのであった。