『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』 中村淳彦
¥1,500+税 東洋経済新報社 2019/4/18発行
ISBN978-4-492-26113-2
本書のもとになるネット連載の一部を、読んだことがある。
ぞっとする。
自分が貧困に陥らずに済んでいるのは、些細な幸運に恵まれただけなのだろう。ほんの少しの運不運で、いちど足を踏み外したら、もう戻れない。
戻れない社会になってしまったというより、故意に作り上げたとしか思えない。本気で社会を変えようと思うなら、本気であれば、できないはずがない。
格差社会を、富者が貧者を利用し踏みつけにし搾取することで都合がいい社会を求めている者たちがいる。
> 介護福祉士という国家資格を持つ専門家が、行政の監視の下で手取り14万~16万程度の低賃金で労働させられて、「ご利用者様のありがとうが報酬です。高齢者様に感謝しましょうね。みんな、本当に素晴らしい仕事に就けてよかったですね」などといった信じられないロジックが正論として定着していた。
どうして国家資格を持つ専門家が公的に定められたサービスを提供することで、相手に感謝しなければならないのか理解できなかったが、しばらくして業務を官から民に移管することで起こる格差や賃金の下落を、言葉で洗脳してごまかすためだとわかった。(9-10頁)
介護の仕事に就き、それをきっかけに貧困スパイラルに陥る事例も多い。
じっさい、どう考えてもビジネスモデルとして破綻してると思うんだけど。
> たまたま転落することなく生き残った中流以上の人々は、離婚や養育費未払い、奨学金利用などの些細なきっかけで貧困に転落した人々に自己責任の暴言を浴びせかけ、これからもっと貧富、世代、男女で苛烈な分断がはじまる。(319頁)
> 日本は安全と安心ではなく、不安と恐怖を駆り立てることを推奨する社会になってしまった。
現在は女性をターゲットに貧困化が進行しているが、彼女たちが絶望し、苦しむ姿を眺めさせて、誰かが「ああなりたくなければ、もっと生産性を高めろ」と駆りたてているのかもしれない。
現在は女性をターゲットに貧困化が進行しているが、彼女たちが絶望し、苦しむ姿を眺めさせて、誰かが「ああなりたくなければ、もっと生産性を高めろ」と駆りたてているのかもしれない。
国民の誰かを転落させなければ国がやっていけないならば、どこかのタイミングで女性から中年男性にシフトチェンジするかもしれない。私自身、取材で出会った彼女たちと遠くない未来の自分の姿がダブって怖くなった。(335頁)