職場の食堂で麻衣が昼食をとっていると、良江が隣の席にやってきて言った。
「修司さんお見合いするそうよ。貴女のことずっと諦められなかったようだけど、やっと決心がついたみたいだわ。」
麻衣の胸が騒ぎだした。
「それで修司結婚するの?」
「さあ。」
その日は仕事を早めに片付けて、定時きっかりに銀行を出た。
行った先は修司の勤める役所前の道路であった。
官庁通りのケヤキ並木はすでに裸木になっていて、散り残った黄色い葉が北風にヒラヒラ揺れていた。
歩道は勤め帰りの人達が足早に家路についていて混雑していた。
役所の玄関はもう扉が閉まっているようだ。
麻衣は裏に回り、駐車場に続く狭い道路を行きつ戻りつしながら、庁舎の出入口を見ていた。
退庁する人達が数人ずつ塊って出てくるのが見える。だんだんと出てくる人もまばらになってきたが、修司の姿を見つけることはできなかった。
ふと我にかえった麻衣は、
<私は一体ここで何をしているのだろう。今さら修司に会ってどうしようとしているのだろう。>
彼が結婚するかもしれないと知って動揺し、無意識にこんな行動を取っている自分が恥ずかしく惨めだった。
和也にとって自分は特別な女だと思い込んでいたにも拘わらず、その関係はあまりにも軽い関係でしかなかったと気付いて以来、修司を想う気持ちが日に日に増していた。
しかしこの切ない想いを誰にも打ち明けることが出来なくて、心の中にしまい込んでいた。
あんな別れ方をした故に、修司を紹介してくれた良江達にはどうしても言い出せなく、また修司に直接電話を掛けることさえ躊躇われた。
次の日出勤すると預金課の課長が麻衣を呼んだ。
課長は40歳を少し過ぎていて、脂ぎった顔で眼鏡越しに麻衣の顔を見た。
「今日、帰りにちょっと紹介したい人がいるので付き合ってくれないかな。」
と笑みを浮かべながら言った。
「でも、わたし・・」とまでは言ったが、はっきりと断る理由が見つからず、付いて行くことになった。
「修司さんお見合いするそうよ。貴女のことずっと諦められなかったようだけど、やっと決心がついたみたいだわ。」
麻衣の胸が騒ぎだした。
「それで修司結婚するの?」
「さあ。」
その日は仕事を早めに片付けて、定時きっかりに銀行を出た。
行った先は修司の勤める役所前の道路であった。
官庁通りのケヤキ並木はすでに裸木になっていて、散り残った黄色い葉が北風にヒラヒラ揺れていた。
歩道は勤め帰りの人達が足早に家路についていて混雑していた。
役所の玄関はもう扉が閉まっているようだ。
麻衣は裏に回り、駐車場に続く狭い道路を行きつ戻りつしながら、庁舎の出入口を見ていた。
退庁する人達が数人ずつ塊って出てくるのが見える。だんだんと出てくる人もまばらになってきたが、修司の姿を見つけることはできなかった。
ふと我にかえった麻衣は、
<私は一体ここで何をしているのだろう。今さら修司に会ってどうしようとしているのだろう。>
彼が結婚するかもしれないと知って動揺し、無意識にこんな行動を取っている自分が恥ずかしく惨めだった。
和也にとって自分は特別な女だと思い込んでいたにも拘わらず、その関係はあまりにも軽い関係でしかなかったと気付いて以来、修司を想う気持ちが日に日に増していた。
しかしこの切ない想いを誰にも打ち明けることが出来なくて、心の中にしまい込んでいた。
あんな別れ方をした故に、修司を紹介してくれた良江達にはどうしても言い出せなく、また修司に直接電話を掛けることさえ躊躇われた。
次の日出勤すると預金課の課長が麻衣を呼んだ。
課長は40歳を少し過ぎていて、脂ぎった顔で眼鏡越しに麻衣の顔を見た。
「今日、帰りにちょっと紹介したい人がいるので付き合ってくれないかな。」
と笑みを浮かべながら言った。
「でも、わたし・・」とまでは言ったが、はっきりと断る理由が見つからず、付いて行くことになった。